第225話 ギルドマスターとの戦い
ギルドマスターのマッコイに魔竜ジュンターが現れた痕跡と、実際に斃した当時に映像を証拠として見せてみる。
しばらくして隆起した両腕を組みながら「う~ん」と項垂れた。
「……うむ。王城に問い合わせたところ、確かに魔竜ジュンターというエンシェントドラゴンが王国の近辺に現れ突如消えたのは確かのようだ……だが信じられん。勇者ウィルヴァ様ならまだしも、レアリティEスキルであるクロック、お前が……」
「この水晶玉の映像を見てわかる通り、今のクロック兄さんの特殊スキルはSRを超えているのは明白です!」
「しかし魔道師メフィ殿……貴女はクロックの妹、あっ失礼。確かそう仰ってはいけないのでしたな……」
以前のメルフィは義理とはいえ、俺の妹であることを伏せたがっていた。
周囲にそう言われる度に「あんな男の妹だと言わないでください!」と豪語していたものだ。
けど今の妹というと。
「そんなことありません! クロック兄さんは私の大切な兄です! もう愛しているんですからね!」
堂々とぶっちゃけ、メルフィは俺の腕にしがみつく。
ずっと施されていた《
改善された過去の彼女よりも、包み隠さず胸を張って堂々としていた。
その光景を見せられたマッコイは呆然と見入っている。
「え? え? そ、そうなの? だったら尚更、信憑性に欠けるんですけど……」
「ムカァ! ギルドマスター、私が偽造したと仰りたいんですか!?」
「わたしも女神フレイアに仕える
メルフィだけじゃなく聖女ユエルにも訴えられ、マッコイは「はぁ、まぁ」と曖昧な返事をする。
「最年少の司祭ユエル様がそう仰るのであれば……しかしなんなのだ、この特殊スキルは? レジーナ、わかるか?」
「いえ、まるで見当もつきません……まるで神様みたい」
うん俺、神様らしいからな。
「ちなみに、この力を使わずともクロウ様は十分にお強いぞ。何せ相手の時間を奪い自在に操作できる能力だからな」
アリシアの自慢げな言葉に、マッコイは「はぁ?」と顔を顰める。
「いや、そんな強力スキル、
「説明するのも面倒だ……なら証明するからギルドマスター、俺と模擬戦でもしてみませんか?」
「冗談はやめろ、クロック。ワシは現役を退いたとはえ、今も鍛錬を続けている。勇者パーティとはいえ、所詮は非戦闘員の
「だったら尚更だ。元SSS級の戦士に勝てば、少なくても俺の強さが証明されるってことじゃないっすか?」
「ほう、面白い。怪我しても知らないからな……裏庭に出な」
不敵に笑うギルドマスターのマッコイに案内され、俺は裏庭の広場へと案内された。
皆に見守られる中、俺とマッコイは対峙する。
彼はスーツ姿を脱ぎ、鎧を着こんだ現役を彷彿させる装備に変わっていた。
その手には巨大な戦斧が握られており、ヴォンっと思い切りフルスイングして見せている。
おい、ギルドマスター!
これ模擬戦って言ったよな?
なんか俺をキルする勢いなんですけど……。
「よし、クロック! いつでもかかって来い! 格の違いってやつを見せてやんよぉ!」
「あっ、そう――《
俺は一瞬でマッコイの懐に入る。
「は、速ぇ!?」
「んで、《
俺は片手で体に触れ、10秒間動きを奪い制止させた。
これまで両手で触れなければ発動できなかった停止効果だが、神格を得たことでそういった制約もなくなったようだ。
さらにもう一つ。
「以前は一人に対し一つの項目しか時間を操作できなかったが、今の俺は幾つも時間を奪い自在に操作することができる――《
そして10秒が経過し、停止した時が動き出した。
俺はマッコイに背を向ける。
「はっ!? なんだ……どうなった?」
「勝負はついた。俺の勝ちだぜ、ギルドマスター」
「なんだと、クロック! いやワシはノーダメージだぞ!?」
「ノーダメージじゃねーよ。レジーナ姉さん、何があったのか教えてやってくれ」
俺は、わなわなと身震いしているレジーナに話を振る。
「……は、はい。ギルドマスター……つるつるのスキンヘッドだった頭が、か、髪が……髪の毛がフサフサですぅ!」
そう、今のマッコイはスキンヘッドではない。
綺麗な黒髪のロン毛であった。
「はぁあ!? って、あれ!? は、生えてるぅ!? ワシに髪の毛が生えてるぞぉ! 懐かしい、あの頃のようにぃぃぃ!!!」
「ああ、何せ生えていた頃まで時間を戻したからな。あと眼帯していた片目も見えるようにしてやったぜ」
俺に言われるがまま、マッコイは左眼の眼帯を外した。
「え!? うおっ、ガチだ! ガチで見えているぞぉぉぉ! どうしてぇぇぇぇ!!!?」
「それが俺の特殊スキル《
こうして怪我を元の状態に戻す要領で、既に失った部分も以前に戻すことも可能だ。
本当なら相手を若返らせることや老いらせ固定することもできるようになったのだが……まぁチートすぎるから見せない方がいいだろう。
「す、凄い……クロウくん、本当に神様みたいよ」
「いやぁ、レジーナ! もう神レベルじゃね!? クロック
サラサラの髪が戻って以前より若く見えるようになったからか、どこか言動がチャラくなったギルドマスターのマッコイ。
「んじゃ、ギルドマスター。俺に『
「勿論です! この髪と左目を戻してくれたお礼も兼ねて、今すぐ申請を受理して推薦状を送りますよぉぉぉ! クロックさん、万歳ッ!」
マッコイは両腕を上げ歓喜する。
なんかギルドマスターに崇拝されてしまった。
まぁいいや。予定通り俺の力を認めさせたことに変わりない。
とにかく、これで目標を一つ果たしたぞ。
俺は歩き出し、パーティの女子達と合流する。
みんな申請が無事に受理されたことに心から喜んでくれた。
「クロウ様がついに『
「ああ、アリシア。これもみんなが俺を支えてくれたおかげだ。ありがとう」
「はい、そしてくれで……ようやくクロウ様と」
アリシアは頬を染め、上目遣いで俺をチラ見する。
それは彼女だけに限らず、他の女子達も同じだ。
みんな可愛い……つい、このままこの時代に留まりたくなる。
俺は迷わず、うんと頷いてみせた。
「そうだな。特に俺とアリシアは相当な遠回りをしちまった……それに、セイラ、ディネ、メルフィ、ユエル、みんな俺にとってかけがえのない大切な女性達だ」
「クロウ様、私もです」
「アタイもさ、クロウ!」
「クロウ、大好きだよ」
「ずっと一緒です、クロック兄さん」
「はい、クロウさん。ずっとお慕いしています」
「……ありがとう。だが俺には、まだ幾つか決着をつけるべき課題がある。それをクリアしてから、みんなにそのぅ……プ、プロポーズぅ? みたいなこと言うよ……うん」
「「「「「はい!」」」」」
「あのぅ、クロウくん。お姉さんは?」
何故かレジーナ姉さんがいきなり挙手し始めた。
今まで俺とそんなロマンスなかった癖に、『
姉さん、意外とあざといところあったんだな……。
けど、レジーナ姉さんにも散々世話になってきた。
それこそ冷遇を受けていた時に、荒んだ俺の心を支えてくれたのも彼女だ。
たとえあざとくても邪険にできない。
「ごめん、レジーナ姉さん。俺、姉さんのこと好きだけど、あと一人……どうしても放っておけない女性がいる。姉さんとのこと考えるのは、その人とどうこうなってからでいい?」
「う、うん……半分は冗談で言ってみたけど、クロウくんが真剣に受け止めてくれるなら嬉しいなぁ。うん、お姉さん待ってるよ」
レジーナ姉さんは「えへへへ」と恥ずかしそうに笑って見せる。
なんだか俺まで恥ずかしくなってきた。
思わぬ形で嫁候補を増やしてしまったけど、これ以上は本来のクロック・ロウの身が持たないかもしれない。
ほどほどにしとこっと。
あとは――。
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