第207話 クロウとウィルヴァの戦い《真実》
「ウィルヴァ、行くぞぉぉぉ!!!」
俺の雄叫びを皮切りに戦いが始まった。
ウィルヴァの背後にいた隠密部隊達は一斉に散らばり、俺を無視してアリシア達に向かって襲い掛かって行く。
俺は反射的に振り向いてしまったが、アリシア達から「クロウ様、我らのことは気にせず戦いに集中を!」と忠言された。
『――アリシアさんの言う通りだ。キミにその余裕はない』
気づけばすぐ間近まで、ウィルヴァが迫っていた。
既に
「野郎ッ!」
ガキィィィン
俺は二剣の
細身の癖にとんでもなくエグイパワーだ。
そう思いつつ、なんとか地面に片足の踵を蹴ってブレーキを掛けながら体勢を立て直した。
案の上、ウィルヴァは追撃して来る。
俺はすかさず地面に落ちている石を拾い上げ、奴に向けて投げつけた。
やはりウィルヴァに難なく躱されてしまう。
『なんの真似だい、クロウ君?』
ウィルヴァは穏やかな口調で言いながら、俺の首元に向けて躊躇せず刃を振るう。
今度はしっかりと重心を落とし、奴の剣撃を防ぎ切った。
ガキィンという金属音が鼓膜に突き刺さる。
「ぐっ! テメェ、容赦ねーな!」
『なんだい? 手加減するとでも思ったのかい? 僕はもう覚悟している……クロウ君、キミも威勢ばかりじゃなく、戦う覚悟しないとキルしちゃうよ』
「うっせぇ! とっくの前にしているっつーの!」
俺は重ねた
そうすることでウィルヴァは体制を崩し、俺に背中を晒す体勢となった。
「オラァ!」
『――《
俺が剣を振るった瞬間、ウィルヴァの姿が消えた。
気が付くと真後ろに立ってやがる。
しかも既に攻撃してくる構えだ。
「ナメんな――
俺は自分の体に《
特殊スキル効果により回避行動を
剣撃を空振りしたウィルヴァは、じっと俺の方を見据えている。
素顔を隠したフルフェイスの鉄仮面から何を考えているか読めない。
『……そんな真似もできるとは。まるでハンデを感じさせないね、クロウ君』
「その鎧を纏っている限り、効果系のスキルは通じないんだろ? けど俺自身には能力が使える。ただ、それだけのことだぜ……へへへ」
『何を笑っているんだい? キミが不利な状況には変わりないんだよ? 今のやり方だと、いずれキミの魂力が尽きてしまう……この鎧、《
おまけに奴の鎧は、《
唯一の欠点は物理的攻撃と放射系スキルは無効化されないんだっけ?
まさに相性最悪ってやつだ。
「それでもよぉ……なんか楽しくて嬉しいんだよぉ! どんな形にしろ、ウィルヴァ! お前とこうして一対一で真剣勝負できるんだからよぉ!」
『……キミって男は。僕は見ての通り、インチキしているんだ。決してフェアな戦いじゃない』
「それでもだ! 俺にとっては、お前はウィルヴァ・ウエスト! 超えなきゃいけない男に変わりないんだぁぁぁ!!!」
俺は果敢に突撃し、ウィルヴァに斬りつけ刃を交える。
今度は奴の方が防御する形となった。
『……越えなければならない男か。もう知っているだろ? 僕は神の子、つまり天使の位にある……それが「銀の鍵」の正体だ』
「それがどうした!? んなの勝負に関係ねぇだろうが! こうして剣を交えている以上はなぁ!」
『そう割り切ってくれて嬉しいよ、クロウ君。キミと僕とはこうした形でしか交わることができない……最初からそういう運命だ。だから戦う道を選んだんだ」
「悪りぃが、言っている意味がわからねぇな! お前が神の子だろうが、んなの俺とお前の間には関係ない――どちらが勝つかだ! 俺達にはそれしかないんだよ! そのために俺はこの時代で死に物狂いに戦ってきたんだ!」
『すっかり変わってくれたね。未来のキミじゃ、そういう思考にはならなかっただろう……僕も全てを投げ出した甲斐がある」
「その口振り……やっぱりな! お前も俺と同じ五年後の未来から遡及してきたのか!?」
俺の問いに、ウィルヴァは防御姿勢のまま首肯して見せる。
『ああそうだ! 僕は「銀の鍵」として単身で時空を超えることができる――けどクロウ君は、ゾディガー王の特殊スキル《
なんだと!?
ってことは、あの懐中時計のような巨大扉は、ゾディガー王によるものだったのか!?」
俺は動揺しつつも、剣の力を緩めない。
ここで引いたら、ウィルヴァに反撃される可能性が高いからだ。
「何故、そんな真似を……いや、わかっているぞ! 《
『その通りだ! 未来では失敗してしまったが、今のキミは自分の特殊スキルを実感し極限まで高めつつある! もう一段階だ! もう一段階、進化すればクロウ君、キミは僕と同様に『神格』となり、《
――
そんなレアリティまであるってのか!
ウィルヴァと同じ「神格になる」ってどういう意味だ?
まさか俺が神様的な何かに進化するってのか?
どちらにせよだ!
つーことは、この野郎ッ!
「知るか、んなもん! てか糞未来からお前が関与しているんならよぉ! あの時代のアリシア達が俺を冷遇していた件――全部、ウィルヴァ! お前の仕業なのか!?」
『ああ、そうだよ、クロウ君! 正しくはキミらには見えない存在、妹レイルの特殊スキル《
「……《
「そう――能力は対象者と、その取り巻く周囲の『因果関係(原因と結果)』の中間である『縁起』を変換させるスキル! あの時代、アリシアさん達の仕打ちはキミへの愛憎の裏返しだったんだ!」
やはりそうだったのか……。
つまり俺への「好意」が「憎しみ」や「蔑み」など、真逆な方向に無理矢理変換されてしまうスキルのようだ。
だから糞未来と今の時代とのギャップが半端なかったのかよぉ!
トラウマの元凶は全て、こいつら『銀の鍵』のせいかよ、ちくしょう!
「そういやテメェ! ちょくちょく彼女達を連れて姿を消していたな!? あれはスキル効果を維持させるためだったのか!?」
あの頃、絶倫勇者だとやっかんでいたけど的外れだったようだ。
けど超ホッとする俺もいる。
『そうさ! 《
「ふざけるな! けどユエルは……彼女はなんともなかったぞ!」
『ユエルは僕達の身内だからね。スキル効果の影響を受けない……けど僕の方からクロウ君にあまり近づかないよう、あの子には注意を呼び掛けていたよ。レイルがアリシアさん達を調整している間にね」
それでもユエルは優しさのあまり、影で俺に優しくしてくれていたのか。
彼女らしい……やっぱり聖女だ。益々好きになっちまう。
「どうしてそんな真似を!? おかげで俺はトラウマを抱えちまったじゃねーか!」
『今のキミなら察しがつくだろ? 全ては《
それで勇者のウィルヴァは、よく俺を庇っていたってわけか。
「そして隠れ信者であるゾディガー王に頼んで俺がみんなに会う直前の時代に遡及するよう手引きしたと? 全て俺の特殊スキルを導き自覚させるため……そのきっかけを作った『占い師の女』を装ったのは、お前達の仲間か!?」
「あの占い師は僕だよ、クロウ君」
「はぁ!?」
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