第206話 魔竜との再戦
クロウとウィルヴァが戦わんとする中。
別行動を取っている
「あたしが魔竜ジュンターをキルするから、嫁達はざーこお願いね~ん!」
「サリィさん。ざーこって、護衛役のエルダードラゴン達のこと言ってますぅ? エンシェントドラゴンの次に値する最強格なのに……しかも10頭はいますよぉ」
「流石にタイマンは危険よ。もう魔竜ジュンターには、サリィの特殊スキルがバレているんだし、近づけさせてはくれないわ。誰かフォローつけなきゃ危険よ」
「えーっ、カネリア姉さん……それだと、あたし一人で斃したって感じにならなくて、『
「リーダーの悪評は冒険者ギルドのギルドマスターまで行き届いてますからね。不正を疑われても仕方ないでしょう」
ちなみに『
勇者とはいえ事あるごとに窃盗を働き牢獄に入れられ、サリィはギルドでもブラック・リストに入っており、ギルドマスターからの心象も最悪だった。
「だからこそ確たる実績が必要なのよん! 特にあたしのような一匹狼はねぇ!」
「ただ協調性がないだけじゃないのぅ? エルフ族より気まぐれだし……ねぇ、ミギア」
「トーコの言う通りだな。確かな実績は勿論だが人格と人望を兼ね備えてこその英雄ですぞ、我が主よ」
「あたしは基本、嫁達に嫌われなきゃいいのよん。んじゃ、そうだな……カナリア姉さん、あたしと一緒に来て~ん。いざって時は、姉さんの《
「わかったわ。他のメンバーは?」
「モエラは《
「「わかりました(バババーンって何)?」」
「地上にいる
「「了解(ズドドーンって何?)」」
時折、勇者から妙な擬音を交えてくる謎の指示に、各パーティ女子達は首を傾げている。
それでもサリィは「よぉし!」と自ら鼓舞した。
「ほんじゃ行動開始よーっ! こんどこそ魔竜ジュンターを討ち取って『
かくして勇者パーティ達は作戦行動に移った。
「行きます――《
まずモエラが背負う大きな鞄から、複数のクマのぬいぐるみが夜空に放たれ風船の如く浮遊する。
これらは特殊スキル《
対象者を強制的に誘導させる能力を持つ。
それはエルダードラゴンとて有効なのは前回の戦いで実証済みだ。
「今です――《
マナルーザは魔杖を掲げる。
間もなくして、ヒュウゥゥゥッと遥か上空から何かが飛来してきた。
それは炎を纏った隕石だ。
誘導されたエルダードラゴン達の背部と翼に衝突し大ダメージを与えた。
中には飛行機能を失い、隕石ごと地上に落とされる竜が続出する。
「――地上ではオレの独壇場だ! 《
すると前方の一帯が激しく揺れ、大地が裂け砕かれ、エルダードラゴン達の動きを封じる。
その狂気的な揺れはモンスターの肉体を内部から破壊するほどの振動だ。
「ほんじゃ、アタシもやっちゃうかな――《
エルフ族の
その全身は疾風に覆われ、エネルギー状の巨大な
さらに加速され、猛スピードでエルダードラゴン達の強固な鱗に突貫し、いとも容易く穿ち破壊していく。
そうして、仲間達が護衛役のエルダードラゴンを引きつけ戦っている中、勇者サリィと
ロータの特殊スキル《
『テ、テメェは、あの時の勇者か!? また来やがったのか、クソがぁぁぁ!』
魔竜ジュンターは唸り声を発している。
自分より豆粒程度の人族に向けて戦慄している様子だ。
一方の勇者サリィは前回追い込んだこともあり、その圧倒する存在の最強竜を前にしても一切動じる様子はない。
何故なら彼女の頭の中では常に、気に入った美少女達との楽園ハーレムを夢描いていたからである。
しかし、魔竜の姿を見るやサリィは顔を顰め始めた。
「……アンタ、本当に魔竜ジュンター? この前会った時と随分身形が変わったように見えるわ」
そう、魔竜ジュンターの姿はすっかり変貌している。
両翼と片手片足が巨大な金属板で構成されており、左眼は宝玉のような眼球が埋め込まれて煌々と紅く点滅していた。
「あの体、サリィに奪われた部位を補う錬金術の類かしら? にしては大掛かりね……まるでフレッシュゴーレムみたい」
カネリアは禍々しいエンシェントドラゴンの姿を見て感想を漏らしている。
フレッシュゴーレムとは別の生き物同士の死肉を繋ぎ合わせて作られたゴーレムの一種だ。
ただし魔竜ジュンターの場合、繋ぎ合わせた部分が金属で補われている。
『機工魔法の蘇生術だァ、小娘共がぁぁぁ! ドレイク様に魔改造してもらい、大復活だぜぇぇぇ、ヒャッハー!』
妙なテンションで叫ぶエンシェントドラゴンを前に、サリィは両手を組み「フン!」と強気に鼻を鳴らした。
「ドレイク様ぁ? ああ
『ダッサとはなんだ!? 俺には選択しがねーんだよ! 『銀の鍵』様に忠誠を誓い、我らが君主ヴォイド=モナーク様の悲願を叶える! そうすりゃ俺は元の世界で人間だった「桜部 淳太として、もう一度リア充として生きれるんだぁぁぁ!!!』
「……どうでもいいわ。アンタがエンシェントドラゴンなら狩ってやるまでよん。これから心臓奪ってやるからよろ~!」
『うるせぇ、友達か!? クソ勇者が! もうテメェに何一つ奪わせねぇからな! 言っておくが、俺の心臓には《
魔竜ジュンターはサリィ達に向けて再び咆哮を放つ。
それは《
しかも機工魔法でさらに強化されていると言う。
だがしかし、サリィとカネリアは動じていない。
現役の
「機工魔法? 初めて聞く魔法だわ……
「カネリア姉さんも心臓の血管が図太いねぇ。常人ならエンシェントドラゴンの咆哮を浴びただけで発狂死しかねないってのに、流石パーティの大黒柱ぁ! よっ、愛しているよん!」
「ふざけている場合じゃないわ、サリィ。あいつに貴女のスキルは通じないって言われているのよ」
「そのために姉さんがいるんしょ? 《
サリィに問われ、カネリアは「う~ん」と考え見定める。
「余裕よ」
迷わず言い切った。
「……うん、やっぱ愛しているわん(試しに言ってみたけど、やっぱ凄ぇ。てか怖ぇ……だから一番怒らせちゃいけない姉さんなのよん)」
勇者サリィはニッと笑いつつ、心の奥底はドン引いている。
『豆粒共の癖にごちゃごちゃうぜぇ! 今度こそ殺す! 食い殺す! 魔竜ジュンター様をナメんじゃねぇぇぇぞぉぉぉ!!!』
魔竜ジュンターは大口を開け、勇者サリィとカネリアに向けて襲撃してきた。
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