第190話 二軍女子と教団の関係
エドアール教頭との話が終わって昼休み。
俺達は昼食を食べながら円卓テーブル席で座っていた。
いつも通りパーティメンバーに加えて、向かい側にはカーラ達四人がいる。
彼女達は元々スキル・カレッジの学生なので制服姿で周囲に溶け込んでいた。
けど、これだけの錚々たる美少女達の中で、男子生徒は俺だけなのでどう見ても浮きまくっている。
当然、周りの生徒達も近づけないでいた。
どうせみんな、俺がハーレム満喫だとか思っているんだろうなぁ……。
否定はしないんだけどね。
「――クロウ様に話しかけることは許そう。触れることも貴様らの任務上やむを得ないと割り切ろう。だが異性アピールだけは絶対にするな。我らとて繊細かつ未だ踏み込み切れない聖域なのだ。したがってユエルが戻り次第、我らの聖戦が始まるだろう……よって貴様らなど踏み込む余地などないと知れ!」
「……アリシア、あんたってしつこい女だねぇ。授業中もずっと同じこと言っているじゃん」
「カーラの言う通り、何か誤解されているようですぅ」
「オレ達はただクロックに恩を返したいと言っているだけだ」
「……唯我独尊。わたし達がいつ異性アピールした?」
アリシアの一方的な要求に、カーラ、ロータ、フリスト、スヴァーヴの四人が呆れている。
しかし暴走しているのはアリシアだけに限らない。
「そんなのわかったもんじゃないさねぇ。おたくら、さもウィルからクロウに乗り換えたって感じが見え見えなんだよ」
「あれだけクロウと比較してディスっていた癖にぃ今更感満載~ッ!」
「ディネさんの言う通りです! 本来なら、そんな方達に兄さんの傍にいてほしくないんですからね!」
セイラ、ディネ、メルフィも酷い言いようだ。
ストッパー役のユエルが不在だからか余計暴走の歯止めが効かない。
「おい、もうその話はいいだろ? カーラ達はあくまで支援役として、俺達と共に行動するんだ。それに俺だってみんなが傍にいてくれれば……そのぅ、十分なんだからさぁ」
もう自分で言っていて恥ずかしい……。
てか糞未来じゃ、今すぐにでも逃げ出したくなる女子達を相手に……今更ながら自分でも気持ちの変化に驚きまくっている。
遡及前の俺だったら戦慄と驚愕のあまり髪の毛が全部抜け落ちる心境だろうぜ。
「ク、クロウ様がそう仰るのであれば……はい、嬉しいです」
「クロウに免じてアタイは何も言わないよ、うん」
「ボクもクロウの気持ち聞けたからね……えへへへ」
「兄さんのこと信じています……ずっと」
みんな頬を染めて畏まっている。
これはこれで余計に恥ずかしい反応だ。
俺が正式に
想像するだけでドキドキしてしまう。
今から色々と栄養つけて鍛えた方がいいのだろうか?
「少し前まで、アタシらもこうだったと思うと反面教師だねぇ……ったく」
カーラは呆れた口調と眼差しで、萌え状態のアリシア達を見据えている。
そういやこの子達も、よくウィルヴァを立てていたよな?
奴が闇堕ちしてどう思っているんだろう?
よくよく考えれば、お互いが
「なぁ、カーラ達はウィルヴァのことについてどう考えている?」
「え? まぁ、そりゃ今でも慕っているさ……あんたらにとっては裏切り者でも、アタシらには親身になってくれて優しかったからね」
「そんな心構えではクロウ様をお守りできぬではないか?」
アリシアは毅然とした態度で言い切っている。
冷たく聞こえるが、俺も実際に知りたい内容だ。
疑いたくないが、曖昧な態度は「まだ
しかしカーラ達は首を横に振るって見せた。
「それとこれとは別だよ。アタシらだって信念はあるつもりさ……それに前々から組織のやり方に反発していたしね。ウィルヴァ様とは戦えなくても、クロックの盾くらいにはなれるつもりだよ」
「今思えばウィルヴァ様もそれを見越して、私達四人をパーティに加入させたのかもしれません」
ロータが奇妙なことを言ってくる。
「ん? ウィルヴァが、お前達を
「かもしれんな。実際オレ達に声を掛けてきたのはランバーグだったが、主犯がウィルヴァ様であればあり得ることだ」
「……元々、私達は組織の厄介者。捨て駒扱いだと思っていた」
「フリストとスヴァーヴの言う通りだよ。アタシらは戦闘力こそ認められていたけど、いちいち組織のやり方に反発するもんだから、幹部達の間じゃ粛正対象にも挙げられていたくらいさ。ランバーグに声を掛けられなかったら今頃は組織の誰かに始末されていたか、あるいは亡命していたかもしれないねぇ」
カーラが捕捉の説明をしてくる。
つまり四人は『
「……なぁ、前にも聞いたけど、どうして四人は
「そうだね、クロックなら話してもいいかな」
俺の問いにカーラ達は各々の身の上を話してくれた。
なんでも四人ともほぼ同じ境遇であり、それ故に気が合い一緒にいるようになったのだとか。
彼女達は知的種族同士の争いで生き残った戦災孤児であり、教団の教皇に拾われ戦士として教育を受けてきた。
その中で知的種族達が争わないためにも竜による支配を望んでいたようだ。
現に竜が知的種族達を襲うことで、大抵の国々は争わず寧ろ手を取り合っている。
少なくても共通の敵がいることで戦争は起きないのも事実であった。
「お前達の言いたい気持ちもわかる。いや、きっとそれが現実なんだろうなぁ……しかし『竜』は俺達の宿敵であることに変りない。今も共存できないと思っている。けど実際、魔竜ジュンターは竜族最高位のエンシェントドラゴンにもかかわらず教団と手を組んでいるようだが、きっと何か裏があってのことだと思う……その中心に、ウィルヴァ・ウエストがいるの確かだ」
「……アタシは今でも信じられないけどね。あの方にそんな素振りなんて一ミリもなかった」
「はい。当初は義理父ランバーグに利用されている哀れな王子様と思い、私達でお守りしようと心に決めていたくらいですぅ」
「けど実際は違っていたんだよな……オレ達はまんまと、あの人に騙されていた。でも不思議と頭に来ないんだよね」
「……寧ろ組織から抜けられて感謝」
誰一人として、ウィルヴァを悪くいう者はいない。
気持ちは変わらずってことか……。
しかし
「四人とも教皇に拾われたって言ったな? そいつってドレイクという『竜人』なんだろ?」
「そうさ、竜と人族を足したような容姿だよ。見た目はちょっと引くけど、中身は穏やかで聡明かつ聖人君主だね……けど半分竜だけに残忍でもある」
「特に知的種族に関してはですね。拾って頂き感謝こそしていますが、その苛烈な戦闘訓練のあまり何人も命を失った同胞を目の当たりにしておりますぅ」
同胞って四人と同じ境遇の戦災孤児だろ?
そりゃ酷ぇな……。
言われてみれば、ソーマ・プロキシィなんてもろ
「だから愛情なんて感じたことはない。いつ爆死されるか恐怖していたくらいだ」
「……実際、信用するに値しない信者には、《
「ディエス・イレ?」
何やら聞き覚えのある言葉だぞ。
そうだ、それこそソーマやイエロードラゴンが始末された時、頭の中で響いてきた思念だ。
頭上から時計盤が出現し、12時を指すと爆死させられる能力。
遠隔型の呪殺系スキルだと思っている。
「今思い出したぞ。あれはドレイクという教皇の仕業だったのか……けど、みんなは大丈夫なのか? その竜人に何かされてないのか?」
「それはないかな。《
「……なるほど、よくわかったよ。ウィルヴァといい、そのドレイクといい、奴らの背後に『竜神様』がいて、そいつが全ての元凶のような気がする……」
「――竜神様?
ドクン
カーラの発した単語に、俺は以前に感じた何かの駆り立てられる衝動が蘇った。
そう、『
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