第124話 情報収集とリーゼ先生の正体
ソフィレナ王女より、
それを聞いた瞬間、殺気に満ちていた女子達の反応が変わってしまった。
もうみんなして、俺が『
何やら『初婚』や『正妻』の順番がどうとか言い出していた。
あくまで例え話だろうけどシャレになってない。
その一方で――。
「あ~ら、貴方様がソフィレナ王女様なの~? どうりで高貴な淑女だと思いましたわ~! ごめんなさい~、こんな格好で……うふふ」
「いえ、お忍びなので構いませんわ。わたくしのことは外部には内緒で……」
「はぁい! このおばちゃん、口にチャックがついているから大丈夫で~す♪」
リーゼ先生の母親こと、ダーナ村長とソフィレナ王女が世間話的な、しょーもないやり取りをしている。
ところで、ダーナ村長はいつまで両手に買い物袋を持ったままなんだろう……。
さっきから延々と、
この家に入ってから、ちっとも話しが進まねーし。
「――おい! みんな、俺達は調査に来ているんだ! ここで気を抜くと、あっという間にウィルヴァに抜かれるんだからな! そこ忘れるなよ!」
俺はパーティ全員に向けて叱咤する。
「クロウ様の仰る通りです! 我らは絶対に勝たねばなりません!」
「そうですよ、アリシアさん! みんなの幸せのために頑張りましょう!」
「メルフィの言う通りだね~! ボクも気合い入れるよ~! でもクロウ、もう増員なしだからね~!」
「ディネ、アンタ良いこと言うねぇ! ウィルには悪いけど……アタイもいっちょ、本気でやってやるよぉ!」
「……セイラ、そうね。ここでお兄様を超えないと……一生、このままです。わたしも皆さんと、ずっと一緒にいたい。頑張りましょう!」
……うん。
みんな、ようやくやる気スィッチが入ってくれたようだ。
でもなんか動機が不純っぽくて、なんも言えねーっ。
いや気持ちは嬉しいよ、いやガチで。
リーゼ先生も含め、みんな女子として凄く魅力的だからな。
けど、今の心境じゃ誰とどうこうとは思えない。
油断すると、すぐ糞未来での忌まわしいトラウマが蘇ってしまうんだ。
この時代の彼女達は一切悪くないと、頭ではわかっている筈なのに――。
きっと、俺自身がまだ『男』として自信が持てないからだと思うわけで……。
だからこそ――俺はウィルヴァに勝ちたい!
あいつに勝つことで、このトラウマが払拭できると思うんだ。
それから彼女達との関係を見つめ直して、より深めていきたい……。
これが今、俺が唯一言えることだ――。
つーか、みんな気が早えーよ。
それから、ダーナ村長が買い物袋を置きに戻ってくる。
ようやく聞き取り調査を開始することができるようだ。
ちなみにリーゼ先生はアリシア達と一緒に退出してもらった。
また余計なこと言って話が反れちゃうからだ。
客間には、俺とダーナ村長とソフィレナ王女の三人だけである。
「――既にリチャードさんから聞いていると思いますが、昨年まで貴族様御用達の
「誰かが海岸に足を踏み入れと高波や暴風豪雨などが起こるんですよね? 立ち去るとピタっと治まるっていう……そもそも貴族達はどうしてターミアを離れて移転したのですか?」
俺が聞くと、ダーナ村長は言いづらそうにソフィレナ王女の方チラ見する。
「お父様の指示だと聞いてますわ。現
なるほど……一般開放する前に、貴族達に遊ばせて様子見ようって判断か。
貴族達も護衛の騎士団を配置させるだろうし、快適に過ごすために気合も入れるだろう。
要は連中に遊ばせながらも仕事をさせようという腹積もりのようだ。
流石、ゾディガー王は合理的主義だと思う。
「……それにありますが、前の領主であった『男爵』様が爵位を剥奪されまして……丁度、ゾディガー国王様が病気を患われた辺りだと記憶しています」
「爵位剥奪って? どうして?」
「理由はよくわかりませんが……民の税金を横領した容疑のようです。男爵様は最後まで否定されていましたが、リチャード様もそんな事をするような方ではないと話されていました」
昨日の夕食時にはそんな話はなかったけどな。
きっと、ソフィレナ王女の前で遠慮したのだろう。
ソフィレナ王女も「初耳ですわ……」と呟いている。
まあ、王女様が知る範疇ではない話だ。
「それで、ダーナさん。地元で直接な被害はないんっすか?」
「村民から被害が出たという話は聞いていません……元々、貴族様が使用していた場所なので、地元漁師も仕事に影響はないようです」
「まぁ、その一帯だけなら大した影響にならないか……誰か海岸や村で不審者を見たって噂などは?」
「ないですね~。何かあれば、国も動いてくれるのでしょうけど……住んでいる者達は不気味がってはいますけど」
そりゃそうだ。
けど実害がない以上は国も大々的な調査はしにくいか……。
まだ今年の話だし、冒険者ギルドに依頼するべきか感じもあるようだ。
「やっぱり、海は解放できた方がいいですよね? 特に一般開放されれば村の収益にもなるでしょうし」
「勿論です。昨年まで貴族様達からも資金援助して頂き管理していた部分もありますからね……みんなに利用していただればサーミガ村だけんじゃなく、ターミア領土全体の利益にもなりますからね」
ダーナ村長の言う通りだ。
俺も領主として領土運営のため、その『異常気象』は見過ごせない。
どの道、直接行ってみて調べる必要があるだろう。
俺は「わかりました。お話、ありがとうございます」と、ダーナ村長に頭を下げて立ち上がる。
「……クロック男爵、最後にお話いいですか?」
「普通にクロックと呼んでください……爵位で呼ばれると違和感しかないので」
「じゃあ、クロックくん。どうか娘のこと、よろしくお願いしますね」
「娘? ああ、リーゼ先生のことっすね? 俺の方こそ生徒として、いつも先生にお世話になっているくらいっすよ」
劣等生と蔑まれた、Eクラスをあそこまで盛り上げているのは他でもない、リーゼ先生のキャラだからな。
客観的に見られるようになっているこの時代じゃ、特に彼女の優秀さというか人柄がよくわかる。
「いえ、生徒としてではなく……男性としての意味ですぅ。あの子が幼い頃、父親が『竜』に襲われて以来、女手一つで育てた大切な娘でありますので……どうか幸せにしてあげてください」
え? ダーナ村長、何言ってんの?
急に母親に戻らないでくれる?
つーか、16歳の男子に頼む内容じゃないよね?
思いっきり重くて深刻な話なんですけど……。
けど、まぁいいか。
リーゼ先生のこと嫌いじゃないしトラウマもないし……。
「わ、わかりました……善処します」
結婚するかは別として、未来での『娼婦館ルート』は責任を持って回避してあげよう。
俺の言葉に、ダーナ村長は瞳を潤ませ感謝してくれる。
もう俺の意志を飛び越えて母親公認になってしまったようだ。
「……クロウ、
ソフィレナ王女が俺の耳元でこっそり囁いてきた。
枠ってなんだ?
姫さんまで意味深なことを言う……。
客間から出た俺は、パーティ達と合流し村長宅を出た。
馬車に乗り、海岸沿いへ向かう。
までは良かったが……。
「どうしてリーゼ先生も一緒なんです?」
しれっと向かい側に座る、リーゼ先生に問い質した。
「先生ねぇ、クロックくんの仕事ぶり見たくなっちゃったの~、駄目ぇ?」
甘え声でねだってくる。
年上なのに可愛い……いや、そーじゃない。
「俺達は遊びに行くわけじゃないんっすよ? わかってます?」
「わかってますぅ~! 先生、こう見ても元冒険者ですぅ……
元冒険者だと? 初耳だ。
てか、Eクラスの担任なんだから
何恥ずかしそうに言ってんだ?
どうせ冒険者ランクが低いのだろう。
リーゼ先生は黙って豊かな胸元から冒険者カードを見せてくる。
ほう、ランクSSSね……へ~え、凄げぇじゃん。
ん? 待てよ……。
「――ランクSSSだと!?」
カンストしてんじゃねーか!?
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