第125話 雑用係のトラウマと怪奇現象
ポイントマン……いや正確にはウーマンか?
もう、そんなのどうでもいいわ!
ランクSSSの
いや……ある。
――糞未来の俺がそうだった。
けど、俺は勇者パーティの
技能スキルこそカンストしていたけど、国を代表する冒険者という枠組みでのSSSだった。
純粋な冒険者としての実績じゃない。
そもそも冒険者ギルドでSSSランクの
戦闘に参加しない(俺は強制的に参加させられていたけどね)
五年後の記憶を辿ってもだ。
ってことは――。
「……リーゼ先生って、元勇者パーティですか?」
「え? どうしてわかるの、クロックくん……そっだよ~、現勇者パーティのね。先生はスキル・カレッジの教員になるために、20歳の時にパーティを脱退したんだぁ」
もろ先輩だったーっ!
そりゃ、スキル・カレッジの教師になれるわ!
ごめん!! 俺、思いっきりリーゼ先生のこと「天然、巨乳萌え教師」だって見くびっていたわ!!!
「……ははは、なるほどね。どうりで他の教師と肩を並べられる筈だ」
Eクラスの担任なのに、彼女は他の先生に見くびられたことはない。
『対竜撃科』の教師達や学年主任のスコット先生に至るまで、リーゼ先生を立てた言動が時折聞かれていたんだ。
そりゃ、一国を代表する勇者パーティの一員なら、他所から一目置かれて当然だろう。
糞未来の俺だって本来はそういう立場だったんだ。
「そんなこと……実際に活動したの、二年くらいだしね~」
「よくパーティ抜けられましたね? 学費の借金とかどうしたんです? まさか全部ダーナ村長が立て替えてくれたんですか?」
「まさか……スキル・カレッジの教師になれたから免除だよ~。それに、現勇者パーティのみんな温かく送り出してくれたからね~。次の
なるほど……円満脱退ってわけか。
そう、これだよ!
俺が勇者パーティの
イジメと一緒でよぉ! あの糞パーティでのぞんざいぶりが冒険者ギルド内でも伝染してたんだよぉ!
あの頃の女子共なんぞ、俺を見くびり粗末にする癖に束縛心だけはやたら強かった。
パシリとか奴隷みたいなポジでよぉ……
束縛といえば、特にアリシアが最悪だったわ。
んな連中が、俺を素直に脱退させてくれるわけがねーよ!
もう自分から逃げ出すしかなかったんだからね!
「クロウ様! どうか深呼吸を!」
アリシアが俺の身体を揺さぶって現実から引き戻してくる。
また勝手にトラウマスイッチが入ったのか?
「あ、ああ……すまない。またやってしまったようだ」
「大丈夫だよ、クロウ! アタイ達が守ってやっからね!」
「セイラさんの言う通りです、兄さん! 何人たりとも手を出させません!」
「ボク達がついているからね~!」
「女神フレイアよ。この者の心に刻まれた傷を癒したまえ――」
既にトラウマがバレてしまった、パーティ達が全員心配してくれている。
特にユエルが信仰する女神フレイア様には大変なご迷惑をおかけしたと思う。
「みんなありがとう。俺はもう大丈夫だから……」
申し訳なさすぎて頭を下げてみた。
にしても、普通なら気味悪がるのに、みんな俺と真正面から向き合ってくれるよな……。
あの糞未来でトラウマの元凶であり同一人物とは思えないほどいい子達じゃないか。
今思えば、あの頃の女子達は本当になんだったんだろう……。
「クロックくん……今のなぁ~に?」
リーゼ先生が空気を読まずに聞いてくる。
「いえ、俺にも色々ありまして……こうして、みんなに支えられて成り立っています」
「そぉ……でもいいね、そういうの。それがパーティだもんね」
「ええ、まぁ……話変わりますけど、リーゼ先生がそれだけの
「うん、勿論。先生、斥候もできるよ~」
「それは俺の役目だから……遠くで見ていてください」
そうこうしている内に、目的地の海岸が見えてきたぞ。
天候は依然として晴々としている。
まさに海水浴日和って感じだ。
一見して異常はないようだが……。
「もう少し進んだら、馬車から降りて徒歩で進んでみよう。些細な変化に気づけるよう、各自用心してくれよ」
俺の指示でパーティ女子達は素直に頷いて見せる。
馬車から降りた俺達は、徒歩で海岸に向けて足を運ばせた。
ソフィレナ王女はリーゼ先生と一緒に馬車で待機している。
まだ天候は問題ない。
「けど、どうして異常気象は海だけなのかなぁ?」
移動しながら、ディネが聞いてくる。
「都合よく天候が切り替わるところを考察すると、人為的な可能性が高い。侵入者を追い払いたいと思っているのか?」
「ではクロウ様、海岸のどこかに何者かが潜んでいると?」
「ああ、アリシア多分な。悪天候にも海辺一帯に限定された『効果範囲』があるようだから……特殊スキルか? だとしたら『竜』とか『
「まさか、また
「かもな、メルフィ。その場合、問題は目的だな」
「目的って何さ?」
「セイラ、以前の古代遺跡調査と同じ理由かもしれない……ミルロード王国に対してのテロ行為。特に最近は『反国王派』と手を取り合って、エドアール教頭やソフィレナ王女の命を直接狙う行動にまで及んでいる」
「では、クロウさん……ソフィレナ王女を馬車に置き去りにしたのは不味くないですか?」
「その為にリーゼ先生にお願いしたんだよ、ユエル。仮にもスキル・カレッジの教師、しかも勇者パーティの
「クロウ様、お言葉ですが、リーゼ先生殿とはまだ半年も教えを受けておられないではありませんか? クロウ様の技能スキルの修得は全て貴方の努力の賜物では?」
アリシアにツッコまれてしまう。
つい、五年後の未来の記憶のままで話していたぜ。
「それだけ教師として優秀な人だって意味だよ……」
言いながら先頭を歩く俺は一歩、砂浜に足を踏み入れた。
刹那。
ゴオォォォォオォォォォォッ――!
突然、スィッチが入ったかのように豪雨となり暴風に見舞われる。
「――ぐっ、これは!?」
「クロウ様ッ!」
アリシアが手を伸ばし、すぐ俺をひき戻してくれた。
一歩離れると、何事もない元の晴天に戻る。
だが奇妙なことに、目の前は依然として豪雨と暴風が発生しており、厚い雲に覆われた
瞬間にも関わらず、俺の髪の毛から黒革防具のコートがびしょびしょに濡れている。
「本物の雨だ……しかも海辺を中心に綺麗な円を描いた箇所だけが悪天候だ。約数百メートルの範囲か? 明らかに不自然……意図的に仕組まれた現象だ」
間違いなく、特殊スキル能力による効果だと思われた。
「止む気配はないね……アタイ達が立ち去るまで、ずっとこのままなのかい?」
セイラが瞳を細めて聞いてくる。
俺は技能スキルである『索敵スキル』を発動した。
周囲に俺達以外の知的種族はいないようだ。
ん? 海の方に何か潜んでいる……とても大きい何か?
「まさか『竜』? てことは『海竜』の類か……シーサーペントか?」
いや違うな……この現象が特殊スキル能力ならばそれはない。
シーサーペントは、アースドラゴンと同じ下級竜だからな。
魔法すら使えない筈だ。
どの道、このまま見物していても仕方ない。
定番となった『あの手』でいこう。
「ディネ! 矢で海面の方を射ってくれ!」
「わかったよ、クロウ! 《
ディネは指示通り、弓を海側に向けて『スキルの矢』を放つ。
ヒュン、ドドドドドドォォォ――……!!!
1本の矢は100本に増殖し海面へ突き刺さる。
ちなみに『矢』はスキルで構成されているので、表面張力や粘性抵抗で威力が減少されることはない。
直後――。
高波と共に海面から勢いよく巨大な何か浮上してきた。
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