第154話 黒竜への尋問と真実
カーラからウィルヴァとシェイルの姿が見当たらないと証言されてしまう。
あの時、確かに
しかし、ウィルヴァの特殊スキル《
だが、シェイルの手を握りしめていたという点が引っかかる。
ウィルヴァの性格から仲間だと思っている、あの女を見捨てるとは思えない。
一体、何がどうなっているんだ!?
俺は待機しているセイラを呼んだ。
セイラはユエルを抱きかかえたまま、こっちへと向かって来る。
まだ目を覚ましていないのか……ユエルは。
「クロウ、やったねぇ! 流石だよ! んで、どうしたのさ? ウィルは?」
「それがな……」
俺はセイラに事情を説明する。
「――
「そうだ。だから一緒に探して欲しい。セイラの探索能力が必要なんだ」
セイラの《
「アタイはいいけど、ユエルはどうするの?」
「そうだな……ディネとメルフィに頼もう」
俺はディネとメルフィに、この場で待機してユエルを護るよう指示する。
二人は素直に快諾した。
「クロウ様、いっそのこと、リーゼ先生殿にお願いしてみては如何でしょう? 彼女の特殊スキルなら容易いのではないでしようか?」
「そうだな。緊急事態なのは確かだし同時進行でやろう。どの道、俺達もウィルヴァを探さなければならない」
「そうですね。リーゼ先生殿には、私からお願いしましょう。父上にも捜索の協力を依頼してみます」
「……いや、騎士団は駄目だ、アリシア」
「何故です?」
「連中を見ろよ」
俺は遠く離れている護衛役の騎士団達に視線を向ける。
あれだけの激戦の中、連中は戦いに加わることなく沈黙したまま傍観していた。
いくら俺達が呼びかけなかったとはいえ、この状況で何一つアクションを起こさないのは不自然すぎる。
てか、あいつら護衛役の役割を果たしてねぇじゃん。
騎士団長のカストロフ伯爵がチョイスした騎士達なら、それはそれで問題だと思う。
もし、そうじゃないとすれば、今はああして沈黙させたままの方が都合もいい。
下手に刺激して、ウィルヴァの捜索が難航しても困るからな。
ああ、シェイルもいたっけな。あの女は胡散臭いからどうでもいい。
「……確かに騎士というよりも
「案外、カストロフ伯爵は関与してないかもしれない。それに、ウィルヴァ達について行った筈の10名の騎士達が行方不明ってのも引っかかる」
「確かに……」
「どちらにせよ、ウィルヴァとシェイルの捜索を行うぞ! 余計な時間を掛けるわけにはいかない!」
俺が強く言うと、アリシアとセイラは頷いた。
それから二人はカーラ達と共に、ウィルヴァとシェイルの捜索を行う。
俺は単独で、ある場所へと向かう。
――
俺は、まだ辛うじて温かい『竜』の頭部に触れた。
「――《
前回の
最も首だけの状態で生きているだけでも、大した生命力だけどな。
巨大な頭部が、びくんと脈打ち動き出した。
〔――おっ、おお、オレっち生きているのか? なんでぇ?〕
ん? こいつ、威厳と風格があった
(俺が少しだけ復活させたんだよ。テメェを尋問するためにな。答えてもらうぜ、
〔あんた誰よ~、オレっちにこんな真似したの、あんたなのか?〕
(そうだ。俺はクロック・ロウ、冒険者だ)
〔クロック・ロウ……あれ? 聞いたことあんぞ。なんかイラっとしてきたわ~〕
こいつ『竜』の癖に俺のことを知っているだと?
前回の
一応は同じエルダードラゴン同士だからな……。
(俺の名を聞いて、何故イラっとする? 斃した張本人だからか?)
〔……いや、少し違げーよ。多分、オレっちが生まれる前だと思う〕
(生まれる前だと? んなわけねーだろ。俺はまだ16歳だぞ? 何百年も生きている、エルダードラゴンのお前が知るわけないだろ? それに生まれる前ってどういう意味だよ?)
まさか、こいつ……俺の両親を食い殺した
だとしても、俺の名を聞いてイラっとする意味がわからん。
〔16? ならオレっちよりも年上のパイセンじゃん! オレっち、まだ生後一ヵ月っすよ~〕
(はぁ!? 生後一ヵ月だと!? まだ
〔ああ~、オレっち、そのパイセン達とは違うっすから~、別モンってやつぅ?〕
(別物の竜……おい、お前は何者なんだ? それのその喋り方……聞き覚えがあるぞ)
〔……知らねぇっす。人族だった頃の記憶は消したって言われたっす〕
(人族だった記憶を消した? 誰にだ?)
〔
ダガンの時といい、またそいつの仕業か。
それに回収した『魂』を『竜』に移植しただと?
(なら、この
〔この身体は、長年ミルロード王国の領土付近で捕獲した
ミルロード王国付近で捕獲された
つまり、本来存在するエルダードラゴンの身体に別の『魂』を強引に移植させたってのか?
だとしたら、縄張り意識の高いエルダードラゴンの生態から、俺の両親を食い殺した
それに『
チャラげの
〔んでぇ、
(――教皇様? 何かの宗教か?)
〔ちょっとわかんないっす……そうそう確か竜人さんは、いつも二頭の『竜』が絡み合っている
俺には、すぐピーンと来るものがあった。
(ウロボロス――『
〔ドレイク……そうそう思い出したわ! その名前っす、その
(何を命令された?)
〔あるヒト族の男女を襲ったフリして、他の連中を襲えってっすよ……んで、オレッちは命令に従ったっす。創生主のドレイクさんには逆らえなくて……すんませーん〕
あるヒト族の男女を襲ったふりだと?
まさか……。
「そいつの名は、ウィルヴァ・ウエストって男か?」
思念でなく、言語で問い質してみた。
〔……そうっす〕
「もう一人の女はシェイル……いや竜聖女シェイマだな?」
〔……そうっす。オレっちが得意の幻影魔法で襲うフリして逃がしたんっす。見事だったっしょ?〕
死ぬ間際だというのに、まるで緊張感なく自慢げに話してくる
だがツッコむ気分になれなかった。
こいつは、生前の何らかの知能と感性は保持しているものの、生後一ヵ月程度しか生きていない。
つまり知能はそれなりにでも、善悪の区別もわからない無邪気な赤子と同じだ。
それに……クソォッ、ガチかよ!
なんてこった。
ウィルヴァはランバーグに利用されていたどころか……。
実は『
俺にとって、その事実の方が遥かにショックだった。
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