第110話 疑われてしまう冒険者達
あまりにも唐突の知らせに、俺達全員が目を見開き驚愕する。
「お、王太子殿下が暗殺……? 本当なのですか!?」
ソファーでくつろいでいた、ソフィレナ王女は立ち上がり、報告してきた若い
いつまでも客間で待たされていたので、王女を含む俺達はどうしたら良いのか問い合わせるため向かわせていたのだ。
「は、はい……間違いありません。それで城内は酷くパニックになっており、我々の待遇どころではないようなのです」
そりゃ、この国の王太子が暗殺されたとなりゃ一大事だからな。
婚約者をもてなす余裕なんてないか。
「この国の王太子殿下って、名前なんて言いましたっけ?」
「……イサルコ様と聞いております。イサルコ・ナダス・ネイミアですわ」
俺の問いに、ソフィレナ王女が答えてくれる。
「そのイサルコ殿下は、いつ頃亡くなられたんです? 死因は?」
「――其方達が入城する少し前だ。発見したのは、つい今し方だがな」
突然ノックもせず、鎧をまとい口髭を蓄えた年配の騎士が入ってくる。
その後ろには、同じ姿をした数人の女性騎士達が並んでいた。
「貴方達は?」
ソフィレナ王女が尋ねると、騎士達は丁寧に頭を下げて見せる。
「突然の来訪、失礼いたします。わたくしはスペンサーと申します。背後の者達を含み、ハーラルト国王陛下に仕える親衛隊の者です。大変、恐縮ですが、これより皆様の身体検査を行わせて頂きます」
スペンサーと名乗った年配の男騎士が言ってきた。
「身体検査? まさか、わたくし達をお疑いになられているのですか!?」
「今の段階では『念のため』としか申し上げられません。少しでも、その可能性があれば……その段階でございます」
「ってとこは、犯人が見つからないどころか目星すらついてないってことっすね?」
俺が聞くと、スペンサーは眉をぴくりと痙攣させた。
「この者は?」
「彼は、クロック・ロウ。わたくしの専属護衛ですわ。ミルロード王国では次期
ソフィレナ王女は自分のことのように自慢げに紹介してくる。
王女直々に言われると凄く恥ずかしい……。
「ほう……この者が、もう一人の
もう一人だと?
「どういう意味っすか?」
「別に……とにかく、一人ずつ身体検査に協力してほしい。そちらは女性が多いと聞いたので、こちらもわざわざ女性の騎士達と鑑定用の
鑑定用の
あっ、よく見ると女騎士達の中に魔道服をまとった女性がいる。
彼女のことか?
「緊急時とはいえ無礼ですわね」
「承知の上でのお願いでございます」
ソフィレナ王女は顔を顰めて非難するも、スペンサーは淡々とした態度で頭を下げて譲らない様子である。
まぁ、この人達の考えもわからなくもないし、ここでゴネてもいたずらに俺達が疑われるだけだな。
「俺達は構いませんよ。それで疑いが晴れるなら……ただ、ソフィレナ王女だけには配慮して頂きたい。そのお方は、我がミルロード王国の象徴たる姫君……いくら緊急時とはいえ、王族への無礼は俺達も黙っちゃいない」
俺はソファーから立ち上がり騎士達を一瞥する。
アリシア達も立ち上がり、同じく無言の圧力をかけた。
「クロウ、皆さん……」
ソフィレナ王女は瞳を潤ませる。
今回の旅で、互いに打ち解け合い信頼関係が深まった間柄だ。
そんな俺達が示した態度に、スペンサーは双眸を閉じて頷いた。
「……わかった。ソフィレナ王女様は除外しよう。後の者達は全員、協力を頼む」
こうして俺達の身体検査が行われる。
男の俺はスペンサーが直接対応し、女子達は女性騎士が担当する。
当然、何も不審な物がある筈はない。
そう思っても調べられると、何故かドキドキしてしまうけどね。
問題はその後だった。
女
「パ、パーティの女子達は全員レアリティSR級!? だけど貴方はレアリティ
なんか、いちゃもんつけてきた。
いい加減、俺もイラっとする。
「何が?」
「だって貴方、
「俺の特殊スキルは
俺の主張に、女
自分の未熟を棚に上げて逆ギレかよ……。
「もういい……メルフィ、お前の《
「わかりました、クロック兄さん」
メルフィは指示通りに、《
スペンサー達のすぐ目の前で半透明な掲示板が浮かび、俺の特殊スキル能力が一覧表示された。
みんな瞬きを忘れるほど内容を凝視して見入っている。
「……本当に
「私が記憶している古文書で、『古代の神が持つ支配する力』という文献を目にしたことがあります。クロック殿の特殊スキルは個人のみを対象にしているにせよ、『時間』を支配する能力だから該当するのかもしれません……」
女
古代の神ってのは、ちっともピンと来ない。
だが「支配する」って言葉はどこか当てはまると思った。
何せ、自分を含む対象者や者の『時間』を奪い自在に操作できるからな。
「しかしだ。こうして全員の特殊スキルを拝見するとレアリティが高すぎて、その気になれば誰もが……っと、いう判断もできるじゃないのか?」
スペンサーは俺達パーティをチラ見してくる。
よりによって疑いの眼差しをこちらに向けてきやがった。
おいおい、勘弁してくれよ……。
どうして顔も見たことのない、しかも他国であるイサルコ王太子を暗殺しなきゃならねぇんだ?
俺達がキルする動機だってねーし、普通に考えたらわかるじゃないか?
「いい加減にしなさい! 祖国の
ついに、ソフィレナ王女が激昂する。
その迫力に、スペンサー達は何も言えないでいる。
候補とはいえ、
「これは大変失礼いたしました……どうかお許しください。何せ、イサルコ王太子殿下の死因が死因なだけに、些細なことでも疑わしき者は探らなければならなかったので……」
「イサルコ殿下の死因? 確か俺達が入城する前に亡くなっているんっすよね?」
俺が聞いてみる。
スペンサーは頷いた。
「そうだ。死因は『突然死』だが不審な点が多いのだ」
「不審な点だって?」
「発見時、イサルコ王太子殿下はご自分のお部屋で床に倒れられていた。扉の前で見張っていた兵士達が物音に気づき発見に至っている。ご遺体に目立った外傷はなく、謎の心肺停止だというところまではわかっている。したがって、自殺でもない他殺でもない……お若いだけあり、病気もなく健康状態とて至って良好だったにもかかわらずにだ」
「それで、あんた達は特殊スキル能力者の仕業だと踏んでいるわけっすか?」
「ああ、そうだ。部屋には対魔法用の結界も施されているから、呪術もあり得ない。考えられるとしたら、特殊スキルしかあり得ないと思っている」
「だとしたら、俺達も疑われても仕方ない……だけど、俺達にはイサルコ殿下を殺める動機がない。まず、その辺から疑うべきじゃないっすか?」
「同時進行で動いている……諸君らは、あくまで念のためだ。本当に失礼した、どうか許してほしい」
スペンサーと女騎士達は深々と頭を下げて謝罪する。
ソフィレナ王女は「わかって頂けたのなら結構です」と許した。
そして、数分後――。
俺達はネイミア王国の国王である、ハーラルト王から『謁見の間』に呼ばれた。
──────────────────
お読み頂きありがとうございます!
もし「面白い」「続きが気になる」と思ってもらえましたら、
どうか『★★★』と『フォロー』のご評価をお願いいたします。
【お知らせ】
こちらも更新中です! どうかよろしくお願いします!
『今から俺が魔王なのです~クズ勇者に追放され命を奪われるも無敵の死霊王に転生したので、美少女魔族を従え復讐と世界征服を目指します~けど本心では引き裂かれた幼馴染達の聖女とよりを戻したいんです!』
↓
https://kakuyomu.jp/works/16816452218452605311
【☆こちらも更新中です!】
『陰キャぼっち、終末世界で救世主となる』
↓
https://kakuyomu.jp/works/16816452220201065984
陰キャぼっちが突然バイオハザードとなった世界で目覚め、救世主として美少女達と共に人生逆転するお話です(#^^#)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます