第104話 岩竜討伐作戦
上空のスカイドラゴン達を一掃した俺達。
残るはイエロードラゴンと、地上から挟撃を仕掛けようと迫って来る『岩竜』ことロックドラゴン達だ。
「あれだけ離れた上空だと、イエロードラゴンに俺の《
みんなに指揮を委ねられた俺は即興で作戦を立て直す。
レアリティ『
それに、みんなの士気力も高い今が反撃のチャンスだろう。
「ここで幻獣車を止めて、『竜』を迎え撃つ! ディネとアリシアは予定通りやってくれ! 地上の『竜』は俺達が斃す! 騎兵隊は溢れた雑魚を一掃してくれ!」
俺の指示でみんなが声を上げ配置に着いた。
幻獣車は停止し、俺とセイラとメルフィとユエルが地上へと降りる。
ディネは屋上から《
付与されたアリシアの《
ギュュュン!
イエロードラゴンは巨大な翼を羽ばたかせるも、磁力に引っ張られ落ちていく。
しかし何か様子が変だ。
「――いつの間にか『竜の翼』が閉じられている? 野郎、自分から地上に落ちるつもりだ! このままだと幻獣車の真上に激突するぞ! アリシア!」
俺が叫んだ瞬間、『矢』が一本飛ぶ。
ずっと遠くの地表へと落ちて行く。
その『矢』が飛んだ方向に、イエロードラゴンの巨体が引き寄せられ流された。
今、放った『矢』に磁力を宿らせ、引き寄せたのか……。
流石、アリシアだ。
彼女の特殊スキルは汎用性が抜群だな。
だが、感心している場合じゃない。
俺は『遠見スキル』で、遠くに落ちたイエロードラゴンを確認した。
イエロードラゴンは『陸戦用』に形態を変え、単独でこちらへと向かっている。
左右側に2頭のロックドラゴンと
「アリシアとディネのおかげで、まだイエロードラゴンとの距離に十分余裕がある。合流する前にロックドラゴンを仕留めれば……」
俺は幻獣車の前方に立ち、見晴らしの良い位置から迫り来る『竜』達の距離を把握する。
その後ろには、セイラが背中を守る形で待機してくれ、メルフィとユエルが左右の後方に立っていた。
300人の騎兵隊は、停止した幻獣車を囲む形で守っている。
俺は二刀の
「――《
剣先から光り輝く二枚の『時計盤』を出現させ、先程と同様に巨大化させる。
そのまま、左右両側に向けて同時に発射させた。
丁度、2頭のロックドラゴンが向かってくる位置へと――。
巨大な半透明の眩い『時計盤』は、ロックドラゴン達に接触して通過する。
『時計盤』は泡のように弾けて消滅した。
瞬間、ピタリと2頭のロックドラゴンは動きを止める。
奴らの時間を奪い停止させたのだ。
ついでに『岩竜』の背に乗っていた、コボルトやオークやトロール達も微動だにしない。
「よし! メルフィとユエル、後は頼む! 騎兵隊は彼女達に続き、雑魚の始末を頼む!」
俺の指示で彼女達と騎兵隊が動いた。
「――わかりました、兄さん!
メルフィの号令と共に、彼女が所有する肩下げ鞄から、赤子のような骸骨兵が飛び出して行った。
それは、スパルという
スパルは駆け出しながら、漆黒の気をまとい姿を変えていく。
通常の成人男性の二倍ほどの体躯を誇る、重装甲の
両腕の
「ガァルゥァァァァァァッ!」
スパルは野獣のような雄叫びを上げ、ロックドラゴンに向かって疾走する。
「スパルちゃん、
メルフィの指示でスパルの形態が変化する。
背部から二本の太い腕がギミックとして出現した。
スパルは、停止したロックドラゴンの頭部へと飛びつく。
「くらわせなさい――《
メルフィの指示で、スパルは四つの拳を掲げる。
「グゥシャヴァァァァァァァ!!!」
獰猛な絶叫と共に、ロックドラゴンの頭部を目掛けて拳を突き放った。
ロックドラゴンの顔面は削られ、直径30cmにかけて消滅する。
破損部分から『紫光の渦』が溢れ出し、『渦』同士が重なり増殖していった。
さらに『紫光の渦』は広がり、ロックドラゴンの巨体な全身を蝕むように削っている。
それは、ロックドラゴンに密着していた
この『紫光の渦』は、スパルが創り出した
続いては、ユエルの番だ。
「――《
ユエルの背後に白と黒の金属のような光沢を発した両翼が出現する。
羽ばたいた翼は風に乗り、もう1頭のロックドラゴンの頭上へと飛び立った。
「
両翼が大きな『拳』のように変化し、ロックドラゴンの頭頂部に同時攻撃を与える。
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ――――!!!
ロックドラゴンの頭部から煙を出し頑丈な鱗は蒸発していく。
その勢いは肉から骨にまで達し、やがて頭部全体にまで及び溶解していった。
顔面はドロドロに溶け、ロックドラゴンは首なしの状態となる。
断面部分から灰色の煙りだけが無惨に立ち上っていた。
《
「――タイム・アップだ!」
俺が状況を確認し宣言すると、奪った『時』が動き出す。
スパルに消滅させられたロックドラゴンと
一方のユエルに頭部全体を破壊されたロックドラゴンは、首なし状態のまま地面に倒れ込む。
首のない状態では、いくら『竜』とて生きている筈はない。
そして騎兵隊が生き残った、コボルトとオークとトロール達を斃していく。
これで最悪の事態は回避された。
もう囲まれることはないだろう。
「やりましたね、クロウ様! お見事です!」
「クロウ、やったね! やっぱり無敵じゃないの!?」
アリシアとディネが駆け付けてくる。
「いや、俺はあくまで『竜』の動きを止めただけだ……みんなの協力がなければ、ここまで上手くいかないさ」
「でも、アタイらがこうして戦えるのは、アンタのおかげだよ! そこは間違いないからね!」
セイラも激励するかのように言ってくれる。
俺はフッと微笑を浮かべ、すぐさま正面を向いた。
「まだ油断するな! 最後の大仕事があるぞ! イエロードラゴンは健在なんだからな!」
激しい地響きを鳴らしながら、こちらへと迫ってくる『竜』を見据えた。
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