第七章 障壁なる強襲者達

第87話 護衛クエストの依頼




 夏休み中。


 俺はパーティ達とギルドのクエストをメインで活動していた。


 その間、ウィルヴァの姿は見かけなかった。


 双子の妹であるユエルの話だと、夏休み中はずっと義理父であるランバーグ公爵に連れられ、隣国の『ネイミア王国』に行っており滞在しているとか。


 ウィルヴァの奴、夏休み中が勝負って言ってたのに……大丈夫なのか?


 あれだけ自信満々に言っていた『新しいパーティ』もどうなっているのやら。


 まぁ、そう好敵手ライバルばかり気にしていられない。


 俺達のクエスト活動は至って順調にこなしており、アリシア達も気づけばAランクに昇格していた。

 年内にはSランクになるのも可能じゃないかと思われる。


 スキル・カレッジの一年生でSランク入りは『竜狩り』ができる冒険者として極めて優秀な証だ。

 より、次期勇者パラディン推薦候補として有利に運ぶだろう



 そう思っていた矢先、受付嬢のレジーナが声を掛けてきた。


「クロウくん達、緊急のクエストなんだけど受けてくれる?」


「緊急のクエストだって?」


「そう、スキル・カレッジの『エドアール様』からの依頼なのよ……クロウくん達にお願いしたいんだって」


 ギルド内でまさかの意外すぎる人物の名前が出て、俺は驚愕し目を見開いてしまう。


「エドアール教頭から!? 一体どんな依頼なんだ?」


「うん、依頼主から『直接会って話がしたいから、いつもの場所で待っている』って……私はクエストを聞かされているけど、ギルドでは言えない内容なのよ。ただね……」


「ただ?」


「――クエストの難易度は、SSSランク級と言っても過言じゃないわ」


「SSSランク!? なんで、また俺達に?」


 俺達、まだAランクなんですけど……。

 エドアール教頭は一体何を企んでいるんだ?


「それも含めて、エドアール様から話があるそうよ。クエスト内容が内容なだけに、私やギルドマスターも流石に思う所はあるけど、何せ王家の方だから口が出せないのよ……ごめんなさい」


「いや、レジーナ姉さんが謝ることはないよ。そういう所がある教頭先生だからね……わかった、早速行ってみるよ」


 俺は微笑み了承する。

 併設されている食堂で待機していたアリシア達と合流しギルドを出た。



 移動しながら内容を説明し、エドアール教頭に会いに行くため、スキル・カレッジへと向かう。




 地下室『教頭室』にて。


 俺達は普段の制服姿ではなく、あくまで冒険者としての装いで入室した。

 

 以前のソーマとの戦闘で荒れ果てた室内は、見事なくらい綺麗になっている。


 今まで、あんまり深く考えないようにしていたが、この『教頭室』……いつも何か可笑しくないか?


 先を進むと、エドアール教頭は書斎机の席に座っている。

 俺達が近づくと、真後ろ側から不意にソファーが現れた。


「やぁ、クロウ君にパーティ諸君、夏休み中なのに呼び出してすまない。冒険者として積極的に活動しているようだね? 実によい心掛けだ、感心感心」


 相変わらず飄々とした口調。

 どこまで把握しているのか不明である、食えない吸血鬼ヴァンパイア先生だ。


「それで教頭先生……俺達にクエスト依頼ってなんです?」


「うむ。実はキミ達に、ある人物の護衛をお願いしたいんだ」


「ある人物?」


「国王の一人娘、ソフィレナ王女の護衛だ」


「「「「「「王女の護衛!?」」」」」」


 俺を含むパーティ全員が大声を上げ驚愕した。


「どういうことですか、教頭先生!?」


「ソフィレナ王女は隣国である『ネイミア王国』の王太子の下へ嫁ぐのだ。道中危険だから、その間だけ一緒について守ってあげてほしい」


 ネイミア王国? 確かウィルヴァが義理父と一緒に向かった国だ。

 偶然なのか?

 いや今はそんなことより――。


「どうして俺達を指名するんですか? しかもエドアール教頭先生が?」


「頼まれたんだよ、父であるゾディガー国王からね」


「国王から?」


「ああ、なんでもソフィレナ王女は今年で16歳になる子だが人見知りが激しいらしくてね……特に『幻獣車両内』は同年代くらいの冒険者に身を守ってもらいたいというご所望なのだよ。私の知る限り実践経験が豊富な同年代くらいの冒険者はスキル・カレッジにおいて、クロウ君パーティしか思い浮かばなくてね。それで、ギルドに無理言って呼び寄せてもらったんだ」


 それだけの理由で、わざわざ俺達が呼び出されたってのか?

 冒険者として評価を貰っているのは嬉しいけど……。


 別に引き受けても構わないが、いくつか腑に落ちない点もある。


 まずは、そこの確認からだな――。


「俺達の他に護衛する方はいるんですか?」


「外の護衛に『大隊規模』の騎馬隊が配置されるだろう」


 大隊規模か。

 ざっと300名の騎士団の護衛か……流石は王女様だ。


「幻獣車内の護衛は?」


王宮騎士テンプルナイト5名と専属侍女が10名だ。他は乗組員の兵士が20名くらいかな? その中に、キミ達がプラスされる予定だ」


「俺達、まだAランクですけど、一国の王女様の護衛なら普通SSSランクでも良くないですか?」


「さっき言ったろ。ソフィレナ王女は人見知りが激しく同年代が望ましいと……その条件を満たした上で一番有能なのが、クロック君達だってことさ」


「そんな……買い被り過ぎですよ」


 一応、謙虚に振舞ってみる。

 でもなんか面倒くさそうな王女様だな。


「キミ達の半数以上はギルドに登録して、まだ2ヶ月ちょっとくらいにも関わらず、みんなAランクだろ? しかも全員がレアリティの高い特殊スキル持ちだ。これ以上の適任者はいないと、私は思っている」


 エドアール教頭からの評価は素直嬉しいけど、かなり重要なクエストだと理解する。

 何せ、一国の王女の護衛だからな。


 隣国の『ネイミア王国』までの護衛任務か……幻獣車での移動なら、大まかで3日間程は掛かる筈だ。


 重要度から無事に成功すれば間違いなく、Sランクに昇格できる。

 依頼料金も相当なものだろう。


 しかし危険なクエストには変わりない。


 国外にはもろ魔物を従えている高位の『竜』がいるだろうし、反国王派も狙っているかもしれない。


 五年後の記憶を持つ俺は領地外のクエストは何度も経験し記憶もあるが、パーティの女子達は領地内でのクエストしかやったことはない。


 まぁ未来でも、ここまでハードな展開はなかったけどな……。

 やはり俺が身の回りの歴史を変えてしまったことが影響したのだろうか?


 どちらにせよだ。


「聞いての通り、相当重要なクエストなので、俺としてはみんなの意見を聞いて引き受けるか判断したいんだけど?」


 俺はパーティ女子達からの意向を求めてみる。


「私はクロウ様と共に歩めれば何も問題ございません」


「アタイもだね。面白そうじゃないか」


「ボクもいいよ~。国外なんて初めてだし」


「私も兄さんと一緒なら、どこまでもついて行きます」


「勿論、わたしも同行いたします、クロウさん」


 以上がアリシア、セイラ、ディネ、メルフィ、ユエルの考えである。


 みんな案外乗り気だな。

 このクエストを達成することで、また俺が『勇者』として近づけると期待してくれているのだろう。


 これなら断る理由もないか――。


「満場一致ってやつだな。エドアール教頭先生、俺達でよければ引き受けます」


「ありがとう、クロック君。またキミ達に借りができたね……成功の暁は、報酬金は勿論、勇者パラディンの推薦候補枠にも算定するから頑張ってくれたまえ――」


 こうして、俺達は『ソフィレナ王女の護衛』クエストに参加することになった。






──────────────────


お読み頂きありがとうございます!


もし「面白い」「続きが気になる」と思ってもらえましたら、

どうか『★★★』と『フォロー』のご評価をお願いいたします。



【お知らせ】


こちらも更新中です! どうかよろしくお願いします!


『今から俺が魔王なのです~クズ勇者に追放され命を奪われるも無敵の死霊王に転生したので、美少女魔族を従え復讐と世界征服を目指します~けど本心では引き裂かれた幼馴染達の聖女とよりを戻したいんです!』

 ↓

https://kakuyomu.jp/works/16816452218452605311



【☆こちらも更新中です!】


『陰キャぼっち、終末世界で救世主となる』

https://kakuyomu.jp/works/16816452220201065984

陰キャぼっちが突然バイオハザードとなった世界で目覚め、救世主として美少女達と共に人生逆転するお話です(#^^#)



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る