第80話 イキリすぎ転校生




~ソーマside



「アリシアたん、チュリース! オレの彼女になって気持ちよくなっちゃいまショウタイム!」


 朝、Aクラスに登校したオレは、席に座っていたアリシアに向けて真っ先に声を掛けた。


「ソーマ・プロキシィ、貴様ッ! 朝から何を抜かしておるのだ!? 何故、私が貴様のような男と交際せねばならぬ! ショウタイムとは何だ!? いちいちチャライぞ!」


「ご意見きちぃ~! いいじゃん! オレ、次期勇者パラディンに選ばれる男よ~! オレら最高の組み合わせじゃね?」


「はぁ!? ふざけるな! ウィルヴァ殿が辞退した今、次期勇者パラディンは、クロウ様に決まっている! 誰が貴様などと!」


「そのクロウ様もよぉ……いつまでも劣等生のEクラスに居座っているもんだから、教頭にキレられてんじゃね? だから新しくオレっちに声がかかったんしょ?」


「そ、それは……」


「つまりだ、アリシアたん……教頭はクロック・ロウより、オレに期待しているってことじゃね? じゃなきゃ、もう奴で決まっている話だろ?」


「た、たとえそうだとしても、私がクロウ様を想う気持ち……いや忠誠は微塵も変わらぬ!」


「アリシアたんの家、もろ伯爵家じゃん……んな庶民、しかも孤児院出身の貧乏くさい奴と釣り合うわけねーじゃん」


「貴様……ついにクロウ様を侮辱したな!? 今すぐ決闘を申し込む!」


 アリシアは立ち上がり、鋭い眼光でオレを睨みつける。

 怒った顔もきゃわゆい~♪


 初めて会った時から、オレはアリシアが気になっていた。

 男勝りとは違う、凛とした気高さと強さ。

 そして綺麗な佇まい。


 黄金色の艶髪といい、藍色の瞳といい、美人顔といい……。

 スタイルも抜群で胸もある。

 何より誰にも汚されてない、初心な感じがオレのツボに入った。


 ――この女をオレ色に染めてやりたい。


 オレなしじゃ生きられない女に調教してやりてぇ。

 心からそう思ったんだ。


 そんな彼女に『主』と慕われている、クロック・ロウがどうしてこれほどの上玉に手を出さないのかわからない。


 アリシアだけじゃない。


 同じクラスのセイラやBクラスのディネルース、Cクラスのユエルも相当な美少女ばかりだ。

 おまけに妹のメルフィも超イケている美少女……。


 誰もが認める完璧なハーレム・パーティ。


 にも関わらず、何故誰一人として手を出さない、クロック・ロウは?


 一部の噂だと、寧ろクロックは彼女達からのアプローチを避けている節もあるらしい。

 まさかあの男……そっち系なのか?


 うおっ、それはそれでヤバくね!?


 だから、ウィルヴァの野郎に固執してたのか?

 なら野郎同士、イチャついてりゃいいんだ。


 ――オレがアリシアを奪う!


 テメェのパーティごと、かっさらって食べてやるわ!


 本来、竜聖女シェイマ様から、クロックだけじゃなく、そのパーティも始末するって話だけどよ。


 オレの奴隷ってことにしちまえば文句言われねぇだろ?

 全員、オレの女として調教してやるよ!



「聞いているのか、ソーマ・プロキシィ!?」


 アリシアが怒鳴っている。

 おっといけねぇ……すっかり妄想に浸っていたぜ。


「ああ、決闘ね……いいよ。その代わり、ベッドの上ならねぇ、アリシアたん♡」


「ベ、ベッドだと!? キモ……キモイぞ、貴様ァッ! セイラ、見てないでこいつを何とかしてくれ!?」


 アリシアは離れた席で座る、セイラに助けを求めている。


 白髪で褐色肌の半獣娘、背がとにかく高い拳闘士グラップラーだ。


 セイラは立ち上がり、オレに近づいてくる。


 長身なだけに威圧的だがその分、胸の大きさはAクラス一番、いやスキル・カレッジ一番と言っても過言じゃない。


 あの動く度に揺れる二つの乳、超堪らねぇ~!


 この娘に巨乳で勝てるのは、きっとEクラスの担任であるリーゼ・マイン先生くらいだろうぜ。

 おまけに、気品溢れるアリシアとは違った魅力がある。

 半獣ならではの野性的な美しさだ。


「おい、ソーマ! アンタ、調子に乗ってんじゃないよ! クロウがアンタ如きに負けるわけねーだろ!」


「セイラたんもご意見きちぃ~! けど、これだけのイケてる女子達に囲まれて何もしないクロックより、オレの方が男として有能だと思うね~! オレっちなら、二人掛かりでも相手になるよ~ん。但し、ベッドの上だけどね~ん!」


 オレは二人の向けて、片目をつぶって見せる。


「気色悪ぅ! こいつ駄目だ! アリシア、こっちにおいで! しばらくアタイから離れるんじゃないよ!」


「う、うむ、あいわかった……かたじけない」


 セイラとアリシアは寄り添いながら、オレから離れて行く。

 すっかり要注意人物扱いじゃん……。


 まぁ、いい。


 いずれ、オレの女になる二人だ。

 焦ることは何一つない。




 オレはAクラスを出て、Bクラスを覗く。


 もう一人、気になる女子、ディネルースを見るためだ。

 あの子、教室では大概一人でいることが多い。


 けど、疎外されているとかじゃなく、自分から相手にしていないって感じだ。

 だから余計に可愛い。

 特に、クロック・ロウと一緒にいる時とのギャップがいいんだ。

 小動物のように甘えているあの感じ……。


 しかもエルフ族、当然顔立ちも整ったロリ系の美少女。


 おっ? ディネルースの奴、珍しく誰かと話し込んでいる。


 よく見たら、ウィルヴァの妹であるユエルと、クロックの妹であるメルフィだ。

 二人共、Cクラスだったな。


 ユエルは顔立ちが双子なだけに兄貴に似ているが、神秘的で華奢な美少女だ。

 あのか弱そうで儚い感じが男心をくすぐるタイプだ。

 それこそ、夢に描いたような憧れの天使って感じだろう。


 一方のメルフィはクロックとは黒髪以外は何一つ似ていない……逆に良かったと思う。

 飛び級で入学しただけあり、幼さは残っているが頭の良さそうなクール系美少女だ。

 発育も良く、将来絶対に凄いことになるぜ、この子。

 おまけに、いつも兄貴にべったりのブラコンでもある。


 クソォッ……こうやって見ていると、益々クロック・ロウが許せねぇ!


 これだけの女達に囲まれて、平然としているんだからよぉ!


 ――奪う!


 何がなんでも、オレはクロックから女達を奪ってやる!



「チョリース! みんなハッピーニューイヤーン、バカーンはオレっち!」


 自慢の一発ギャグで挨拶してみる。


「また来たよ、アイツ!?」


「ディネさん、あの人嫌です!」


「何されるかわからないわ! ここは三人で団結しましょう!」


 オレの挨拶ギャグが寒かったのか?

 三人は手を握り合って警戒している。


 う~ん、怯えた感じも実にかわゆぃ♪


「そんな警戒しないでくれよ~ん。オレっち、ただキミ達と仲良くなりたいだけだから~ん」


「嫌だよ! だって、お前、クロウとアリシアに変なことしたでしょ!? ボク知ってんだからね!」


「ちげーって! ちょっと揶揄っただけだよ~ん! 今はクロックくんとは清き好敵手ライバル関係だろ?」


「クロック兄さんが貴方なんかと並ぶわけないでしょ!」


「教頭はそう思ってないみたいだね~。じゃなかったら、オレが勇者パラディン候補に選ばれるわけねーしょ?」


「とにかく、教室から出て行ってください! 貴方が来てから、ウィルお兄様が滅茶苦茶になっているのよ!」


「ユエルたん、ご意見きちぃ~! でも、負け犬兄貴と違って、オレはキミのことが大好きだよ~ん! 放課後みんなでお茶しな~い!?」


「嫌だよ、気持ち悪い! それにユエルのお兄さんのこと悪く言わないでよ!」


好敵手ライバルのクロック兄さんだって、そんなこと言いませんよ!」


「最低です! わたしは貴方を勇者パラディンとして絶対に認めません!」


 すっかり嫌われたもんだ、オレっちテンションオチオチ~。

 けど『好き避け』って言葉もあるからなぁ。


 いつかこの雌共が俺の前に裸で並び、四つん這いになっている姿を想像すると、今から興奮してくるぜ……テンションアゲアゲ~♪


 オレは近い未来の彼女達に向けて二本指を揃え、おでこからピッと離して敬礼する。


 Bクラスを後にした。






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