第74話 転校生と好敵手
次の日。
俺達は移動用の『
朝はメイドさんが起こしてくれるし、朝食もやたら豪華だし、学生寮から通うより早く学院に着くことができる。
こうして引っ越してみると、案外いいこと尽くめだ。
そんな中、珍しくAクラスがざわついていたらしい。
「――転校生だって?」
昼休み、食堂にて。
俺は、アリシアとセイラから聞くことになる。
「はい、本日から我がAクラスに編入されております。何でも他国から来た難民らしく、ミルロード王国に辿り着き保護されている中で、特殊スキルに目覚めたとか」
自国が『竜』に襲われてしまい、逃げ出した民達が運良く他国まで逃げ切れることは良くある話だ。
ここミルロード王国での難民はしばらく専用の施設に入り、身辺調査を行いながら職業訓練を受けて、問題なければ国民として暮らすことになる。
その中で『特殊スキル』を持っていたり素質があれば、年齢に応じて相応の場所に行くことになるだろう。
しかし、未来の記憶を辿る限り一学年で転校生なんていたっけか?
丁度、自分に自信が持てずに塞ぎ込んでいた次期だから記憶にねーや。
それにアリシアの言葉にも、一つ引っ掛かることがある。
「つい最近、特殊スキルに覚醒したとだと? そいつは俺達と同じ歳なのか? メルフィのように特殊スキルに覚醒した『飛び級』扱いじゃなく?」
「はい、私達と同じ年齢だと言ってましたね」
「それ可笑しくね? 他国じゃ中等部に入る前の『適正検査』とかしなかったのか? 普通、それから鑑定を受けて特殊スキルとレアリティが判明して高等部に行くもんだろ?」
メルフィのように年齢に達する前に、特殊スキル自体が目覚めてしまったのならともかく、『適正検査』をスルーされて一般人として暮らしていたってことか?
ちなみに『適正検査』で特殊スキルの適正が認められた者は、中等部在学中のスキル使用が禁止されているため
そして高等部へ行く前の『鑑定検査』で解除され、自身の特殊スキル能力を認識することで、初めて『スキル覚醒』という流れとなる。
メルフィはそれすら飛び越えてしまったため
「まぁ、クロウ様が不思議に思われるのも仕方ありませんね……おかげ身辺調査も難航したようですよ。他国とはいえ、特殊スキルを持っている者であれば、それを証明する『証』くらいは持っていますからね。学生証しかりギルドカードしかりです」
「けど、その転校生は一般人だから所有してなかった。んで、ミルロード王国で保護された際に、特殊スキルに目覚めたってか?」
なんだか出来過ぎのような気もしなくもない。
けど、俺だって『鑑定検査』でスルーされて、その後で《
「クロウ、アンタは何か引っかかっているのかい?」
「いや、セイラ……なんとなくな。似たような話ってあるんだなって……じゃ、そいつがAクラスってことは騎士や戦士、あるいは
「アタイは詳しくはわからないけど、多分そうじゃないのかい? そいつもクラスに来た早々、『将来は
「
「笑っちまうだろ? 今更、クロウやウィルに勝てるわけないっつーの」
「まぁ、誰にも『夢』を見る権利はありますからな……しかし流石に私もセイラと目を合わせて苦笑してしまいましたが」
ふ~ん、特殊スキルに目覚めたばかりで勇者になりたいってか?
――はっきり言って甘めぇな、そいつ。
ウィルヴァなんて中等部から好成績を収めて頑張っていたからな。
俺だって五年後の記憶や知識、技能スキルがあって、ようやくウィルヴァと並んでいるようなもんだ。
あと、パーティの仲間達が一緒に戦ってくれるから、最近ちょっと評価が高いってところだろう
アリシアとセイラが笑ってしまうのも当然ってやつだ。
色々な意味で面白そうな奴だ。
少し興味が湧いてきたぞ。
「そいつ男なの? 名前は?」
「ええ、男子生徒ですよ。名前は……ああ、今来ましたね――」
アリシアが入口付近に視線を向ける。
俺も釣られてチラ見した。
一人の男子生徒が複数の女子達に囲まれて歩いて来る。
細身の男だった。
長めの金髪に、両耳にピアスをつけている。
優男風で割と整った顔立ち、目尻が垂れ気味だ。
女子達に囲まれ、おどけた表情を見せる如何にもお調子者。
「ねぇ、女子ぃーっ。授業終わったら遊びにいかないー?」
チャれ―――っ!!!?
チャれぇよ、あいつ! 一体、何者だ!?
「クロウ様、あの者です。名は、ソーマ・プロキシィとか」
アリシアが教えてくれる。
なるほど、あいつが転校生か……色々な意味で只者じゃねぇ。
にしても、転校初日からあんなに女子達に囲まれて随分とモテモテな奴だな。
誰が見ても正当な美男子であるウィルヴァがモテるのはまだ理解できるが、ああいう軽そうな奴だと何か腑に落ちない。
あっ、いや……俺も学院トップクラスの美少女達5人に囲まれて昼飯を食べているので、人のことはいえないか。
ソーマ・プロキシィは俺達が座る席に近づき、何気に目を合わせてきた。
「おっ、アリッチとセイッチじゃん! 何してんの?」
「アリッチ? セイッチ?」
妙な呼び名で、俺は両目を細める。
「ソーマ、貴様ァ……この私をバカにしているのか!? はっきりと名前で呼べ!」
「慣れ慣れしんだよ! 喧嘩売ってんのか、コラァ!」
アリシアとセイラはブチギレて席から立ち上がる。
「ご意見きちぃ~! オレら同じクラスメイトじゃん……おっ、黒髪ちゃんにエルフちゃん、それに銀髪ちゃん、めちゃきゃわゆいねー! 一緒に遊ばな~い!?」
挙句の果てには一緒にいるメルフィとディネとユエルにまで気安く声を掛けて来る。
所謂ナンパってやつだな。
見境のない野郎のようだ。
「兄さん、この人嫌……」
「キモイよ~」
「嫌です」
三人から当然の反応。
全員、この手の野郎は嫌いだからな。
五年後の未来でも同じだった。
「スイマメーン! オレッち、フラれちったみたいっす!」
ソーマは肩を竦めておどける。
周囲の女子達はそれを見てクスクス笑ってた。
なるほど。今までスキル・カレッジの学生にいないタイプのキャラだな。
きっと奴について来ている女子達も異性とかじゃなく、面白い奴だな的な興味本位で一緒にいるって感じか。
そういや昔過ごした孤児院でも必ず一人くらい、ああいうムードメーカーっぽい奴っていたよな。
そんなソーマは俺とも目を合わせてくる。
大方、男になんぞ興味ないんだろうなっと思って、特に挨拶もせず目を逸らす。
「彼氏ぃ~、クロック・ロウくんしょ~?」
「ああ……そうだけど……何か?」
「センセーから聞いてるよ~ん。Eクラスなのに、次期
「まぁね……でも、俺だけじゃないし」
「知ってるよ~、ウィルヴァ・ウェストだろ? けど見たところオレッち的には、奴よりキミの方が手強そうだと思ってるしぃ~!」
ソーマはニンマリと笑い、俺に白い前歯を見せてくる。
「買い被りすぎだよ……パーティのみんなが傍にいてくれるから、少し優位に見えるだけさ。個人じゃ、ウィルヴァの方が余程優秀さ」
「確かに、みんなきゃわゆくてマブいの揃ってるね~!」
おい、そういう意味で言ってんじゃねーぞ、俺は!
みんな優秀な仲間達だって言ってんだよ!
バカだな、こいつ……。
「けど、オレッち的には、やっぱクロックくん推しかな……ギャル達を別にしても」
「ん? そ、そうか……まぁ、褒め言葉として受けとめておくよ。そういや、ソーマ君だっけ? キミも『
「モチっす! まぁ、担任のイザヨイ先生からは、同じAクラスでウィルヴァって奴が次期『
何だって?
ウィルヴァより、俺に脅威を覚えたって言っているのか、このソーマってチャラ男は?
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