第五章 時間軸年代記
第62話 飛竜との戦い
あれから一ヶ月ほど経過した。
俺こと、クロック・ロウはスキル・カレッジに在籍しつつ、冒険者ギルドのクエストを積極的に請け負っている。
全ては、ライバルである『ウィルヴァ・ウェスト』と
そして今現在――。
村の山に住み着く『竜』を討伐するため、俺達はクエストに参加していた。
「クロウ様! そっちに『飛竜』が向かいましたぞ!」
凛とした張りのある女性の声。
仲間である女騎士、アリシア・フェアテールだ。
岩場で待機していた俺は晴々とした上空を見据える。
グォォォォォ――!
巨大な翼を広げ、咆哮を上げる竜の姿があった。
――飛竜こと、スカイドラゴン。
低級竜でありなが空を飛ぶことに長けた『竜』である。
はっきり言えば、
しかし、そこは『竜』だ。
巨大で強靭な体躯と、口から炎を吐く厄介な奴である。
おまけに『飛竜』が吠える声は、魔力が込められており、その咆哮を聞いた者は心が凍りつく程の恐怖を味わうという。
だが五年後の記憶と経験を持つ、俺には
あの糞未来で、囮役として何度もエルダードラゴンに食われそうになっていたからな。
低級竜の咆哮くらいじゃ、今更ビビることはない。
「――
俺の指示に、身を隠している女子達は「はい!」っと、素直で元気のいい返事が聞かれる。
うん、みんな良い子達ばかりだ。
遥か上空を旋回するスカイドラゴン。
俺達を『敵』として認識し、攻撃を仕掛けようとしている。
上級竜から離れ野生化されているが、『竜』の持つ「知的種族達を食い殺す」っという意志までは失ってないようだ。
スカイドラゴンはああして旋回しながら、口から吐く『炎』が届く距離まで少しずつ下降しようとしているのがわかる。
それでも人族にとっては遥か高い位置であり、
しかも、たった6人しかいない状況――。
だが全員、レアリティSR持つメンバーばかりだ。
それに加え、俺の五年後の経験と知識があれば決して戦えない相手じゃない。
特に、未来の彼女達は何体もの『エルダードラゴン』を葬ってきた勇者パーティなのだから。
「――準備はいいか、ディネ!」
「オッケー、行くよ! 《
ディネルースは上空に向けて矢を射る。
バシュ!
真っすぐ飛んで行く軌道上で、1本だった『スキルの矢』が100本に分裂し、スカイドラゴンの腹部と翼に命中する。
グゥゴオォォォォォォォ!
スカイドラゴンは悲鳴のような咆哮を上げた。
「よし! 次は私だ――《
アリシアは
すると、スカイドラゴンは強力な何かに引き寄せられるように上空から落ちてきた。
ドォゴォォォォーン!
地面に叩きつけられ、スカイドラゴンは身動きが取れなくなる。
腹部と翼が一帯の地面と同化したよう、くっついた状態となった。
「うむ。ディネが《
アリシアは既に剣を鞘に収めた状態で、ディネと一緒にその場から離れていた。
ここでも俺の未来の記憶が役に立っている。
それは相性が良ければ『潜在スキル』同士の組み合わせが可能だということ。
今のような連携攻撃が可能である。
特に触れた者に『磁力』を与えられる、アリシアの《
最も未来の勇者パーティにおいて、彼女達は互いにスキル能力を明かさず隠していたので、実際にやったことはないのだが。
しかし冒険者ギルドの受付嬢の『レジーナ姉さん』から、他のSSSランクのパーティでは互いにスキル能力を連携させながら、少数でも『竜』を斃していたと、聞いたことがあったのを『未来の記憶』を辿り提案してみた。
んで、やってみたら案の定、上手くいったってわけだ。
「――よし、セイラ! ここからは俺達の出番だ!」
「いいね、クロウ! アンタとのアタイの名コンビ、見せつけてやろうよ!」
セイラは何故か勝ち誇った顔を浮かべ、俺と共に身動きが取れないスカイドラゴンの下へ駆け出した。
ところで見せつけるのは『竜』でいいんだよな?
「行くよぉ! 《
セイラは地面の砂利に向けて
その一面が粘土状と化した。
地面が30箇所ほど盛り上がり、のっぺりとした人型へと形成される。
「突撃せよ――
セイラが創り出した30体の粘土人形達は手足を大振りしながら俺を抜き去り、『竜』にむかって突入する。
スカイドラゴンは、アリシアのスキル効果で身動きが取れなくても、長い首を上げて『炎』を吐き出すことは可能のようだ。
双眸に怒りを燃やし、喉の奥にも燃え滾る『炎』を溜め込み放とうと大口を開けた瞬間だった。
30体の粘土人形達が一斉に飛び跳ね、スカイドラゴンの口と鼻孔に入り形を変えて、隙間なく塞いだ。
その状態で、セイラがスキルを解除する。
スカイドラゴンは『炎攻撃』だけでなく、完全に呼吸すら出来なくなった。
相当苦しいようで頭部を左右上下と大きく揺らしている。
「相変わらずスゲェな、セイラ……後は俺が見せてやる!」
俺は
スカイドラゴンの長く太い首を持ち上げるのを見計らい、そこに二本の剣を同時に叩きつける。
金属を思わせる強固な鱗を砕き、二本の剣は深々と突き刺さった。
俺は特殊スキルを発動させる。
「――《
瞬間、スカイドラゴンは微動だしない。
スキル効果で身体の動きを奪い停止させたのだ。
「これで1分は動けない――アリシア、今のうちに仕留めてくれ!」
「はい、クロウ様!」
アリシアは疾風のような速さで駆け出し、再び
《
ついにスカイドラゴンは絶命し沈黙する――。
「お見事。やっぱ、アリシアは凄いな……」
俺は二本の剣を抜き、飛ばされ遠くで落ちていく『竜』の首を眺めた。
「いえ、クロウ様が狙いやすく、奴の動きを封じてくれたからです」
アリシアは黄金色の髪を靡かせ近づいてくる。
少し切れ長で大きな藍色の瞳に、色白で綺麗な顔立ちの美少女剣士だ。
「クロウ~!」
ディネが大きな声で叫び、手を振って走ってくる。
その後ろに、義理の妹であるメルフィと清楚系の聖女ことユエルが駆けつけてきた。
「兄さん、無事ですか?」
「クロウさん、お怪我はありません?」
「ああ、ありがとう。俺は何ともないよ。ディネも見事な攻撃だったぞ」
「えへへへ~、やっぱクロウは優しいなぁ」
エルフ族のディネは長い両耳と垂れ下げながら、俺の腕に抱きついた。
「こら、ディネ! 貴様、また抜け駆け……いや、クロウ様に気安く抱きつくのをやめろ!」
「ったく長生きしている分、抜け目ないねぇ。そのさりげなさ、アタイも学ばせてもらうよ」
「セイラさん! 呑気に言ってないで、一緒にディネさんを私の兄さんから引き離すのを手伝ってください!」
「うふふ。皆さん、クロウさんのことが本当に好きなんですね……わたしも素直にならないと」
あれから、さらに親交が深まったというか……。
女子達みんな、以前より俺に寄り添ってくれるようになった。
これはこれで凄く嬉しいんだけど……。
あの悲惨だった『未来での記憶』がある分、相変わらず馴染めない自分もいる――。
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