第37話 新たな冒険者達の誕生




 ギルド、Dランクの依頼はっと……。



〇結界柱の見張り番


 依頼主:東地区代表、マイッセル町長

 任務期間:次の日の明朝まで

 報酬:10.000G


【依頼内容】

 魔物モンスターから村や町を防衛するため各所に設置されている『結界柱』の見回りを一晩お願いしたい。

 理由は本日の当番する村民ケントが妻と喧嘩して不貞腐れてしまったからだ。

 町内会員の誰もが今日だけは都合が悪いようで代わりになる者がいない。

 なので是非、冒険者の力を借りたい。




〇ファンキィ爺さんの話し相手


 依頼主:アキ(嫁)

 任務期間:3時間程度

 成功報酬:1.000G


【依頼内容】

 最近、記憶がまだらになった義父の話し相手をお願いします。

 何度も同じ話を繰り返しますが優しく傾聴していただけると嬉しいです。

 義父の要望で若い女性冒険者なら尚更可だそうです。

 



〇スライム集団の討伐


 依頼主:べネス承認

 任務期間:24時間以内

 成功報酬:一匹×3.000G


【依頼内容】

 明日、他国へ輸入目的で使用する貨物馬車の中に気がつけばスライムが繁殖していた。

 その数は10匹ほど確認されている。何とか退治してもらえないだろうか?

 尚、どのスライムも生意気そうで調子に乗ったイキった連中ばかりだ。

 この際、徹底的に始末してほしい。




〇護衛任務・貴族息子の初めての御使い


 依頼主:リシュー侯爵

 任務期間:無事にお使いが終わるまで。

 成功報酬:50.000G


【依頼内容】

 我が息子のヘミエルも17歳になり、そろそろ独り立ちをさせようと考えておる。

 そこで一つ御使いをさせようと命じておる。

 なぁに辺境村でポーションを買わせるだけだ。国内であり安全だろう。

 だが大切な息子であるに違いない。すまんが警護にあたってもらえないだろうか?

 ※くれぐれも息子にはバレないよう頼むぞ。




「…………」


 何これ?


 ろくな依頼がねぇぇぇぇぇ!!!?


 特に、しれっとある「ファンキィ爺さんの話し相手」って何よ!?

 もろランクEにもならないクエストじゃねぇか!


 地味に「護衛任務・貴族息子の初めての御使い」も可笑しいよね!?

 ヘミエル17歳って俺より2つも年上じゃねぇか!?

 なんだこりゃ!? あっ、でも報酬50.000Gって魅力だな……。



「レジーナさん、ツッコミどころ満載だよ。特に爺さんの話し相手なんて、ランクEのクエストにも該当しないじゃん」


「あっ、その依頼者、ギルドマスターの奥さんですね。多少の忖度はあるのは仕方ありません」


 つーことはファンキィ爺さんってギルドマスターのお父さんってわけか?

 だったら、もう少しくらい成功報酬上げてくれねぇと割に合わないだろ。

 どこでケチってんだよ……。


「う~ん。唯一まともそうなのは『結界柱の見張り番』と『スライム集団の討伐』か……成功報酬が低いよな……」


 特に戦闘系は装備とか道具とかで必要経費がかさむからな……。

 それに加えて、パーティ内で取り分が発生してしまう。


 俺とメルフィで半分となると、下手な爺さんの話し相手よりも割に合わないかもしれない。


 となると、貴族息子の護衛か……これはこれでイラッとしてしまう。


「あのぅ、クロックくんはどんなクエストが受けたいの?」


 俺が項垂れている中、レジーナ姉さんが優しく声を掛けてくれる。

 口調も事務的でなく、五年後のように親身になってくれた時の口調だ。


「え? そりゃ、やっぱ成功報酬が高い戦闘ありきの冒険系でしょ。でもランクDだと、そういう系が少ないのもわかってます」


「そうね。たまにあっても低級魔物モンスターの討伐くらいで報酬も低いわ……ランクC辺りから、それっぽいクエストが沢山あるの」


「でも俺達まだ学生だし……ランク上げを目指すほど、冒険する暇もないですね」


「今のクロックくんでも、ランクCのクエストが受ける方法はあるわ」


「本当ですか?」


「そう、パーティを組めばいいのよ」


「パーティ? ランクの高い人と組むとか?」


「それも一つだけど、頭数が揃っていれば高ランクのクエストを受ける内容もあるのよ。みんなそうやって短期間で自分のランクを上げる冒険者もいるの」


 そうなのか?

 所謂、裏技ってやつか……。

 俺は勇者パーティに入ってたから、そういう仕組みはさっぱりわからない。


「じゃあ、ランクEの連中でも頭数が揃っていれば、ランクCのクエストも受けられるかもしれないってことですね?」


「ええ、但しEランクの冒険者だけじゃ駄目よ。クロックくんとメルフィちゃんのランクDの冒険者がいて初めて成立するからね。あと条件が揃っても危険なクエストは、お姉さんが受けさせないからね」


 レジーナさんの口調が段々と五年後に近づいている。

 思いっきり年下の子供扱いだが、俺としては懐かしく少し嬉しい。

 また「姉さん」と呼びたくなる。


「わかりました。じゃあ、頭数揃えて出直してきますね」


 俺と手を振って、メルフィを連れてギルドを出た。




「兄さん、数を揃えるって、何か当てがあるの?」


「ああ、メルフィ。いるじゃないか、最適なメンバーが……」


 言いながら、俺達は学生寮に戻る。




 女子寮の前で待っていると、メルフィが三人の女子を連れてくる。


 アリシアとディネ、それにセイラだ。


「みんな悪い。せっかくの休みなのに呼び出してしまって……」


「何を仰います、クロウ様! 水臭いですぞ!」


「そうそう、ボク休みでもクロウに会えて嬉しいよ~」


「ところで、どうしてアタイ達を呼び出したんだい?」


「ああ、実はみんなに冒険者になってもらって、俺と一緒にパーティを組んでもらいたいんだよ」


 俺の説明に、彼女達は全員「ええ!?」と驚く。


「冒険者ですか、いいですね! 私も前々から興味があったので……それにクロウ様と同じパーティであれば尚のこと、このアリシア・フェアテール是非に引き受けさせていただきます!」


 うん、アリシアならそういうと思ったぜ。

 花々亭でも興味深そうに聞いていたからな。


「ボクもいいよ~。えへへ、冒険者としてもクロウと一緒だね~」


 ディネは快諾してくれる。

 何気に照れ臭いことも言っているが……。


「……アタイもいいのかい? パーティに入れてもらって?」


「何か問題あるのか、セイラ?」


「いや、そんなことは……林間実習じゃ別々だったし」


「それはスキル・カレッジの授業内での話だろ? 外で冒険者することとは関係ない筈だ。あくまでセイラのプライベートであり、お前の意志で決めてほしい」


「なら断る理由なんてないよ! アタイは冒険者になる! クロウ、アンタと同パーティとしてね!」


 セイラも力強く引き受けてくれた。


 よし! これで、ほぼベストメンバーが揃ったぞ!


 下手な連中と組むより、彼女達と組んだ方が頼れるし信用できるからな。


 何せレアリティSRの特殊スキルは持っているわ、三年後は勇者パーティに選ばれるほどの才女達だ。

 将来有望パーティの完成ってやつだな。

 

 欲を言えば回復系ヒーラーがいないのは不安であるが仕方ない。


 まぁ怪我ぐらいなら、俺の特殊スキルで前の状態に戻せるし、なんとかなるだろう。



 こうして俺達五人は、再びギルドへと向う。




「――騎士ナイトのアリシア・フェアテールさん、弓使いアーチャーのディネルース・エルベレスさん、拳闘士グラップラーのセイラ・シュレインさん。以上の三名が本日付けでギルド登録されました」


 受付嬢のレジーナさんが丁寧な口調で説明し、三人にギルドカードを渡した。


「ランクEか……些か腑に落ちないが致し方ない」


 アリシアは不満げにギルドカードを見つめる。


「俺が今後ギルドランクを上げれば、同じパーティであるみんなも高ランクのクエストが受けられる。そうなれば自動的にランクもあがるから、しばらく我慢してくれ」


「はい。わかりました、クロウ様。我が主と共に歩めれば、たとえどのような険しい道程も必ずや超えて見せましょう!」


 嬉しく恥ずかしいことを力説してくれる忠誠心の厚い女騎士。

 俺も思わず表情が緩んでしまいそうだ。


 そんな中――。


「あのぅ、クエストの依頼に来たのですが……こちらでよろしいでしょうか?」


 か弱く透き通るような少女の声。


 俺は振り向き、その見られた姿に驚いた。


「――ユエル・ウェスト……?」






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【うんちくメモ】


■通貨について


貨幣でありお金である。

日本の『円』に対して、ガイアティアの世界では『Gゴールド』と呼ばれている。

各大陸や国々、知的他種族間で共通されている。


■硬貨 一覧


 木貨、鉛貨、銅貨、銀貨、金銀貨、金貨、白金貨、ミスリル貨、ドラグ貨


 木貨モクカ…1円単位

 鉛貨エンカ…10円単位

 銅貨…100円単位

 銀貨…1000円単位

 金銀貨…1万円単位(金と銀の混合の硬貨)

 金貨…10万円単位

 白金貨…100万円単位

 ミスリル貨…1000万円単位

 ドラグ貨…1億円(ドラグジュエルが素材となっている)



木貨モクカ…木をコイン型に加工し各国の焼き印を押されたお金だが、通常の店では使えない。各交換所にて木貨10枚で鉛貨1枚と交換して使用するものである。

(子供のお小遣いとして重宝され、クロウは幼い頃に集めてはよく交換していた)






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