第12話 大人の恋、子供の恋
女王様が、立ち上がり、静かに話し始めた。
「あなたたちのおじさまもお母様も大人です。大人には、大人の都合があり、必ずしも思い合ってるからといって、結ばれるとは、限りません」
「私のせいでしょうか?私がいるから、お母さんは、学生の頃から好きだった人と結ばれないのですか」
琴美ちゃんは、悲しそうに言った。
「そうかもしれません。でもそれだけでも無いでしょう」
「直人さんのおじさまは、おそらくは琴美さんの事は、気にしないでしょう。そういう優しい人です」
僕は、頷いた。
「でも、おじさまは、優しすぎて、相手の事ばかりを考えてしまうタイプの人です。おそらく、自分でいいのだろうかと思い悩む方です。若い頃の熱い恋愛なら、それさえも乗り越える事が出来たかもしれません。しかし、今は、お二人とも大人なので、難しいと思います」
確かにおじさんは、そういうタイプだ。若い時もそんな感じで、琴美ちゃんのお母さんと結ばれなかったのだろう。
「そこで、あなたたちの恋愛エネルギーを吸い取っておじさま達に移します。若くて熱いエネルギーなら、大人の都合を踏み越えていく力を持つはずです。黄金の毛皮を持つ者の
魔法力は、とても強く、おふたりは、必ず結ばれます」
僕と琴美ちゃんは、手を取り合って喜んだ。
「しかし、恋愛エネルギーを吸い取られたあなたたちは、最悪、お互いの事すら、忘れてしまうかもしれません。少なくともあなたたちの中に今ある、お互いの事を思う熱いものは、無くなるでしょう。魔法というものはそんなに都合よく出来ていません」
「それなら心配ありません。僕は、琴美ちゃんに、出会うたび、何度でも恋をします。出会いさえすれば、今の気持ちは、再び僕の中に、生まれます」
僕は、思った通りの事が、口から出てしまい、少し恥ずかしくなった。
「私たちは、もう一度出会えるのでしょうか?出会いさえ出来れば、私の胸の中も、今みたいに、直人君でいっぱいになると、思います」
何と琴美ちゃんが、僕の事を。
夢みたいだ。僕は、世界一幸せ者だ。
「僕と妹が、手伝うよ」
王子様が、言った。
金色に輝く王女は、僕のそばに、王子の黄金色の毛皮は、琴美ちゃんのそばに移動した。
「では、地上へお送りします」
女王様が、そういうと、僕たちは、意識を失った。
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