第10話 境界にて
イヌの国とネコの国の境界は、砂漠になっている。ここに来るまでは、特に障害になるものは、無かった。
魔法の国のネコたちは、みんな優しく親切で、僕たち外の世界の者を歓迎して、食べ物や、泊まる部屋を提供してくれた。
境界の砂漠は、ネコにとっては、そんなに問題にならないらしい。
かれらは、乾きに強い。
イヌは、ネコほど乾きに強いわけでは、ないらしいが、強い体力を持つ彼らには、この程度なら問題ないということだ。
しかし、僕たち人間には、困難な場所だ。
結局、砂漠で一晩過ごさなければ、境界を越えることが、出来ない事が、分かった。
毛布や防寒着、テントに、食料を大きなバッグに詰め込み、境界を渡り始めた。
砂漠の夜は、冷えるので、薪を一束背負って行った。
「王子様、ここは、魔法の国なのに、途中魔法を使っているところを見ませんでしたが」
「そうですね。この国のネコやイヌたちは、出来るだけ魔法を使わないようにしています」
王子によると、昔は、普通に使っていたそうだ。しかし、魔法に頼り過ぎた者たちは、肉体と脳が衰え、好き勝手に、変えられた自然は、本来の姿を見失ってしまった。
以来、誰からともなく、魔法は、出来るだけ使わないようにして、身体を使い、自然は、自然のままにしようと変わっていったそうだ。
「この境界も僕たちなら、たとえば、箒でひとっ飛びですし。ゲートを開けば、一瞬で移動できます」
そうだろう魔法使いなのだから。
「でも、自分の足で歩き、こうやってキャンプする事は、とても楽しい事でしょう」
女王は、歩くたびに、全身を覆う銀色の毛皮がきらめいた。
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