第9話  ネコの国、イヌの国

「魔法の国を訪ねられたということは、何か叶えたい望みがあるのですか?」


 三毛猫の王様は、言った。


「魔法の国のネコのヒゲとイヌのヒゲを手に入れることが、望みです」


 僕は、正直に、言いました。


「恋の魔法ですね」


 王子様が、金属の筒を僕に手渡して、言った。


「お相手は、誰かな?私のものですが、ネコのヒゲをどうぞ。イヌのヒゲは、残念ながら、この国には、ありません」


「どこへ行けば、手に入るでしょう?」


「ここから、真っ直ぐ北へ、向かっていくと、イヌの国があります。銀色に輝く毛皮のイヌが、イヌの国の女王で、僕の母です」


「お母さん?イヌなのに?」


「この国には、イヌかネコしかいません。イヌからネコが、生まれることも、ネコからイヌが、生まれることもあります」


 びっくりした。ではなぜ、ネコとイヌは、別々の国にいるのだろうかと質問してみた。


「生活のスタイルが、違うからです。いくらイヌの母親から生まれても、僕には、彼らの様な体力がありません。母も高くて狭いところは、苦手にしてます」


 結局、器に合った場所で生活する事が、楽なので、ネコはネコで、イヌはイヌで固まってしまうらしい。


 しかし、往来は、自由で、よく観察するとイヌの姿が、あちらこちら見られる。


「僕もついていきますから、心配ないですよ」


「いや、王子様にそれは申し訳ないです」


「僕も久しぶりに、母に会えるので、楽しみです」

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