第8話 ネコの案内
満月が、登っている。滝つぼが、落ちて来る水に誘われて波立っていた。月は、映し出しているが、千の数があるか、分からない。
その夜の、日付が、変わる頃、キラキラ光る、黄金の毛皮を持つネコが、現れた。
「魔法の国に、ご用とか?招待出来るのは、ふたりだけですが…」
ネコは、僕と琴美ちゃんに爪を向けた。
「行っておいで」
おじさんも行きたかったはずなのに、僕の背中を押した。
「琴美、当たって砕けろよ」
よく分からない励まし方をされた、琴美ちゃんも前へ、進んだ。
「では、おふたりは、手をつないで、はぐれないよう。僕の尻尾も見失わないよう」
そう言うと、ネコは、ドンドン滝の中へ入っていった。
目に前の滝の水に、身体が触れる。何故か水に濡れた感じがしない。もう一歩踏み出すと、そこは、魔法の国だった。
「では、お客様には、お茶を」
そう言って案内されたのは、とても立派な建物だった。ただその建物には、階段があまりなく、中で生活するネコたちは、上の階へ行くには、飛び上がったり、下へは、飛び降りたりしていた。
建物の中の立派な廊下を歩く姿は、ほとんどなく、窓の外のバルコニーの手すりを歩いているものが、ほとんどだった。
僕たちを案内してくれた金色のネコは、この国の王子様だった。つまり僕たちは、王宮に招待されている。
「どうぞ召し上がれ」
王子様に比べてしまうと、みすぼらしく感じてしまうが、三毛猫が、お茶を勧めてくれた。
お茶のお供には、卵焼きが添えられていた。口にするとほんのり甘くてとても美味しい。
「この味は、おじさんの卵焼きだ!」
「お母さんの味!」
二人同時に、言った。
「先ほど、持って来られていた卵焼きが、あまりにも美味しくて、作ってみました。お口にあいましたら、幸いです」
行方不明の卵焼きは、三毛猫のせいだった。
「すみません。父が、無作法をしました」
「え!あなたが、王様だったのですか!これは、失礼しました。魔法の国にお招きいただき、ありがとうございます」
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