第6話  おじさんの先輩

 土曜日の夕方。


 奇妙な4人連れが、低い山を目指している。見ようによっては、親子連れにも見えるが、女性二人が積極的に話している。

 

 少年の方。つまり、僕は、少女の方に、積極的に話しかけられている。

 大人二人も女性の方が、積極的に話している。


「知ってた?私の母さんは、直人君のおじさんの大学の先輩だったらしいわ」


 僕は、驚いた。


「だから、あの時、おじさんは、凍りついていたんだ。」


 僕は、琴美ちゃんたちの買い物帰りに出会った時、おじさんが、何故か凍りついたように、固まっていた事を思い出した。


「母さんは、あれから、懐かしそうに何度も直人君のおじさんの事を話していたわ」


「そうなんだ。僕の方は、聞かなかったな。おじさんは、会話が苦手な人だから、分からないところがあるけどね」


 いつのまにか、僕の事を直人君と呼んでくれる事にドキドキした。岸君から直人君は、すごい進歩なのでは?


 おじさんの方を見ると、ポツリ、ポツリと話しているのが、見える。夕日のせいか、おじさんの顔が、朱に染まっている。


「大学の時、どういう先輩、後輩だったのか、お母さんに聞いている?」


「サークルの先輩、後輩だと聞いているわ」


 サークル?


 以前、おじさんは、大学では、熱心に魔法研究をしていたと言っていた。入ったのは、理学部だから、授業で魔法数学なんて取れるはずもなく、サークルで、はまったのだろうと、僕の母さんが言っていた。


「ということは、琴美ちゃんのお母さんも魔法研究家?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る