第3話  入り口を探して

 とにかく、山の中へ行ってみようと、その週末二人で出かけることになった。


 山といっても、片田舎のことだから、歩いて30分もかからない裏山みたいなものだった。千の月が、映りそうな所を探すため、昼間に出かける。


 おじさんと二人で、テクテク歩いていると、親子で買い物に来ていた琴美ちゃんに

出会った。


「あら、岸君。何処に行くの?」


「おじさんと山にね。ちょっとした探検かな」


「いいわね。楽しそう。私も行きたいな。ねえ母さん。岸君と一緒なら良いでしょう」


 琴美ちゃんのお母さんに、お願いし始めた。


「夕ご飯までには、帰って来るのよ」


 こんな軽い感じで、琴美ちゃんと一緒に、僕の初恋を成就させるため、魔法アイテムを探す冒険が始まる事になった。


(ああ、おじさんも一緒だ。忘れていた)


 おじさんを見ると、何故か固まっていた。


 実際には、冒険をするための入り口を見つけに行くだけなのだが、それでも琴美ちゃんと一緒は、テンションが上がる。


「ねえ、岸君。探検って、何?」


 僕たちは、山に向かう道を歩いている。おじさんは、少し前を歩いて、僕に気を使っているようだ。


「魔法の国への入り口を探しにね」


 嘘を言ってもしかたなかったので、正直に言った。もちろん、琴美ちゃんの気持ちを僕のものにするためとは、言わなかった。

 


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