第7話 イケスミ危機一髪!


連載戯曲

『あすかのマンダラ池奮戦記⑦イケスミ危機一髪!』


時: ある年の、暖かい秋

所: マンダラ池のほとり ミズホノサト


人物: 元宮あすか  女子高生

    イケスミ   マンダラ池の神

    フチスミ   イケスミの旧友の神

    桔梗     伴部村の女子高生(フチスミと一人二役)




フチスミ: 近いわ!

イケスミ: あすかは無事に!?

フチスミ: 無事に道を見つけた。向こうはまだ安全だ!

イケスミ: それはよかった。でも、その分、こっちに集中しまくってるぞ!

フチスミ: 数が多い……

イケスミ: よく用意しといてくれた。これだけの禍つ神にいちいち手づくりの気を飛ばしていたら、体がもたんからな!

フチスミ: 封じ込めてあった鬼の気を、枝や竹の切れ端にこめておいたの!

イケスミ: それで鬼岩の気が弱くなっていたのか!

フチスミ: その奇数番号の太い竹を撃ってみて。オートの百連発だから……!

イケスミ: よっしゃああああああああ!

   

 三番のオートを撃ちまくるイケスミ、花火大会のクライマックスのように盛大に盛り上がり、急速に静寂がおとずれる。二人とも、ざんばら髪に制服姿も痛々しげに乱れている。やがて、イケスミが腰を抑えてくずおれる。


フチスミ: なんとか、やっつけたみたいね……

イケスミ: この百連発は腰にくるよ……

フチスミ: うん、だからイケスミさんにまかせたの。

イケスミ: あのなあ……(^_^;)

フチスミ: わたしの華奢な体じゃ、扱えないもの。

イケスミ: だって、依代についてんだろ。多少の無理は……

フチスミ: 桔梗に負担はかけたくないの。

イケスミ: そのために依代についてんだよ。依代につくから、このサトから出ることもできるし、サト中じゃ依代につくことで何十倍もの力を発揮できるんだぞ。

フチスミ: でも、依代にも負担がかかるんだよ。

イケスミ: そこはギブアンドテイク。だからあすかだって……

フチスミ: 桔梗は、今度の地震で天涯孤独の身。危ない目に遭わせたくない……それに桔梗って、おとなしそうに見えて、けっこう戦闘的な子なの、そんなの持たせたら、どこまでやるかわからない。奇数番号のオート持てるだけ持って自爆さえしかねない子よ。ほら……もうわたしの支配から離れて、勝手に動こうとしている……ダメよ桔梗、全てをわたしにゆだねなければ……ゆだねなければ……桔梗! き、き、桔梗……!(桔梗を封じ込めるように身もだえする)

イケスミ: あすかの半分も要領かませれば、もっと気楽に世の中渡っていけるのにな……

フチスミ: 桔梗も好きだけど。あすかって子のハッキリしたところも好きよ。

イケスミ: イケメンコーチと同じ大学うけられてルンルンだろうな。でも、頭はともかく、あの器量だから、いずれふられるだろうがな。でも、あすかはそうやって成長……(何気なく自分の手を見て愕然とする)

フチスミ: ……どうしたの?


イケスミ: 手が……体が透けてきた。結界がほころび始めているんだ。今日一日ももたないぞ……二、三時間で消えてしまうかもしれない……!


フチスミ: しっかりして! 

イケスミ: もう少し……

フチスミ: もう少し?

イケスミ: もう少し、あすかを足止めしておくべきだった、依代さえいれば……そうだ、ふんぱつして惚れ薬で彼氏の心をとりこにするぐらいのことを……

フチスミ: バカ!(イケスミをはりたおす)

イケスミ: ……なにすんだ!?

フチスミ: あなたに欠けているのは信じる心よ。必ずオオミカミさまはおもどりになる! けして、この里をトヨアシハラミズホノサトをお見すてになったりはしない!

イケスミ: だって、だってなあ……!

フチスミ: 霜月を過ぎて、まだたったの三週間あまり……きっとおもどりになる。あなたもさっきそう言ってたじゃない。だから、あの禍つ神達も恐れてる。一気に力攻めにはしてこない、ゲリラのように小攻めに……

イケスミ: 今のが小攻め?

フチスミ: ……威力偵察ね。ちょっと強めにあたって、相手の強さを知る。

イケスミ: 思い知っただろう、ほとんど全滅にしてやったから。

フチスミ: しばらくは攻めてこないわ。

イケスミ: そして今度攻めてこられたら、こっちが思い知る番だな(自分の透け始めた体を見て)わるいけど、やっぱニ三時間……それも無理かも……

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