第6話 あすか賢くなる!


連載戯曲

『あすかのマンダラ池奮戦記⑥ あすか賢くなる!』


時: ある年の、暖かい秋

所: マンダラ池のほとり ミズホノサト


人物: 元宮あすか  女子高生

    イケスミ   マンダラ池の神

    フチスミ   イケスミの旧友の神

    桔梗     伴部村の女子高生(フチスミと一人二役)




 両手をつかって気をとばすイケスミ、数メートルふっとんで地面に体を打ちつけられるあすか。


あすか: ……

イカスミ:……

イケスミ: 我が名はイケスミだ、二度とまちがえるな!

フチスミ: この子は恐ろしいんだ……もう戻してやった方がいい。そんな顔してると禍つ神になってしまうわよ。

イケスミ: ……そ、そうだったな。ここまでだけの約束を、ついひっぱり過ぎた。すまん、あすか……ほら、約束の成績票。

あすか: あ、ありがとう……!?

フチスミ: どうかした?

あすか: オ、オール5だ……あたし、こんなには賢くないよ。

イケスミ: あすかの頭も、それにあわせてよくなっている。

あすか: ほんと?

イケスミ: フチスミさん、なんか問題言ってやって。

フチスミ: うーん……じゃ、微分方程式ってなーんだ?

あすか: 未知関数の導関数を含んだ方程式。未知関数が一変数のとき、常微分方程式といい、多変数のとき偏微分方程式という……え?

フチスミ: 和文英訳「日本語のおはようは、英語のグッドモーニングと同じです」くりかえそうか?

あすか: ううん「オハヨウ イズ ジャパニーズイクォリティー トウ ジイングリッシュグッドモーニング」……おお!?

フチスミ: 古文法、推量の「ら」を用いた著名な和歌は?

あすか: 春すぎて、夏きたるらし白妙の、衣干したり、天の香具山……万葉集巻一、持統天皇の御製。ちなみに持統天皇、名はタマノハラノヒメ、またはウノノサララ、天智天皇の第二皇女で天武天皇の皇后、草壁皇子没後即位、第四十一代の女帝。ちなみに神田うのの「うの」は、このウノノサララからきている……すっげえ!

イケスミ: な、賢くなったろう。

あすか: ありがとう、頭の中に百万個電気がついたみたい。

フチスミ: ちょっと甘すぎない?

イケスミ: 同じ学校受けられる水準にはしといてやらないとな、真田ってイケメンと。

あすか: ああ、それないしょ、ないしょ(;'∀')!

フチスミ: あははは……そうだったわね。

あすか: え……?

イケスミ: 神さまに内緒は通じないからな。

フチスミ: がんばってね。

あすか: もう……!

イケスミ: それから、その成績票、破いたり傷つけたりするなよ。

あすか: うん!

イケスミ: 元のバカにもどっちまうからな。

フチスミ: 元のあすかも悪くないわよ。

あすか: もう、フチスミさんたら(*ノωノ)。

フチスミ: ……南東のケモノ道がまだ無事のよう。まだ日が高いから、少し教えてあげれば一時間で轟って街につく。

あすか: トドロキ……

イケスミ: このへんにしては大きな街だからすぐに、駅が見つかる。特急に乗れば一時間ちょっとで東京。ほれ、電車賃……バカ透かすんじゃない、本物。葉っぱなんかじゃないからな。

フチスミ 南の方はまだ息をひそめているけど、北の禍つ神達が雑魚のように群れはじめている。その藪の中に武器が隠してある。間に合わないときは、それで始めといて。さ行こうあすか、こっちよ。

あすか: うん、イケスミさん無事でね! 死ぬんじゃないわよ……!


 あすか、フチスミにいざなわれ上手に退場、イケスミ一人残る。


イケスミ: 心配すんな、まかしとけ!……あいつ初めて正しくイケスミって言ったな……神さまは死なねえよ……ただ変にひねくれちまって(北の方角をにらむ)ああいう禍つ神になっちまう奴がいるけどな……(北の彼方で禍つ神達の気配。イケスミ、そこに一瞥をくれると藪を探る)なるほど、さすがフチスミ、どう見ても竹や、枝の切れ端だけど、みんな鋭い殺気がこもっている。ロケット弾、重機関銃並のものまであるじゃないか……このへんが手ごろ……(ふりむきざまに、手ごろな小枝をとり意外に近くの北の空をめがけて撃つ。機関銃のような音と手応え。奇声を発して、鳥のように禍つ神の落ちる音)けっ……意外に近くにやってきている……(続いて撃ちまくる)




フチスミ: イケスミ!


 フチスミが、上手から転がり出るように駆けもどり、たった一人の戦闘に加わる。手ごろな武器を持ち二人で撃ちまくる。

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