第4話 五番目の棟
「おにいちゃん、はいったらだめだよ」
後ろを振り向くと黄色の帽子を被った子供が立っていた。須永が話していた話を思い出し一瞬硬直してしまう。この子がもしかして…。そう警戒した時、子供は顔を上げた。すると普通に可愛らしい顔の男の子ではないか。警戒していたのが馬鹿らしくなり、声をかけた。
「どうして、ここに入っちゃダメなんだい?」
「ここは危ない場所だってパパとママが言ってた」
「そうなんだ、なんで危ないんだい?」
「なんかねー、前から誰もいなくて電気も付かないから危ないんだって」
なるほど、誰も住んでいない建物であれば中が放置されていて確かに怪我の可能性がある。
「おーい、先輩!!こっち聞き込み終わりましたよ~」
声がした方へ振り向くと遠くから須永と羽原が手を振りながらこちらへ向かってきていた。
「おー、ここが子供たちが話していた五番目の棟ですね」
「五番目の棟?」
「子供達にこの団地でお化けの噂って聞いたことある?って聞いたんですけど、誰も住んでいない建物があって呪いの五番目の棟って呼ばれてるって、まさにここの事でしょうね」
「なるほど、いや俺もこの子からその話を聞いたんだよ」紹介しようと思って後ろを振り向くと先程までいた黄色帽子の子供の姿はなかった。
「あれ?今まで子供と話してたんだけどな」
「子供ですか?さっき見てましたけど先輩ずっと一人で下の方見てましたよ」
「えっ!?」
そんなはずは無い。今の今まで子供からこの建物の話を聞いていたはずだ。
「…先輩、もしかしてそれって黄色帽子被ってませんでした?」
「確かに黄色帽子を被ってたけど顔は普通の男の子だったぞ、沢山の目なんて無かった」
「…そうですか、まぁそれは取り敢えず置いといて」
俺にとっては幽霊かもしれないのと話したかもしれないのであまり良くはないのだが話の続きがありそうなのでスルーした。
「誰も住んでない建物なんて何かあったことは確かでしょうし、どうします先輩、ここ入りますか?」
俺は振り返り五番目の棟を見た。先程よりも濃く嫌な邪気というのだろうか、雰囲気を感じとっている。
「せんぱーい、ここの近くに図書館があるみたいなんですよ、そこに何か情報があるかもしれないですよ」
俺が立ち尽くしていると羽原が提案をしてきた。
「図書館か…、この建物の事、地域の事とか調べられるかもしれないな、須永はどう思う?」
「私からしたら直ぐにでもこの建物に入ってもいいと思うのですが事前に情報集めてもいいかもしれませんね。先輩にお任せします」
俺は少し考えた後、この建物に恐怖を覚えており、正直入りたくないと感じている。ただこの建物に入るのを後回しにするだけだと分かっていても図書館へ向かう事になんの躊躇いもなかった。
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