第3話 団地の中
須永が話していた通り、川鳴駅から徒歩十分の場所にその団地はあった。
「おおー、ここが呪いの団地なんすね〜」
羽原はそう言うとスマホで団地を撮り始めた。普通に住人もいるんだから大声出さないで欲しい…。
「こら、しーちゃんはしゃぎ過ぎないの」
「えへへ、ごめんごめん」
「でもまぁ心霊サークルとしてテンション上がるのも分かるな」
そう言って辺りを見回すと、人が住んでいるというのに何処か重い雰囲気を漂わせている。
「で、どうするんだ?今住んでいる人に怪奇現象があるか?なんて失礼すぎるだろ」
「うっ、確かにそうなんですよね。」
「まぁ、取り敢えず歩きながら考えれば良いんじゃないすか?」
まぁ確かに、このまま立ち尽くしても仕方ないし羽原の提案通り歩いて様子を見てみる事にした。眺めていると普通に洗濯物をほしている人がいたり学生達が自転車で通り過ぎたり重い雰囲気を除けば何のことは無い普通の団地である。
そのまま少し歩いていると団地の棟と棟の間には小さい広場のようなものがあった。団地の住人であろう子供達が遊んでいる。
「みーちゃん、みーちゃんあの子達に聞いてみるっていうのはどう?」
「うーん、まあ確かに大人に聞くよりよっぽどいい返事が聞けそうね。それに子供の方がそういうお化けとか好きそうだし」
なるほど、確かに大人に聞いても怪訝そうな顔されるだけだろうし、妙案に思えた。
「あっ、先輩は来ない方がいいかもしれないっす。不審者だと思われるので」
「うっ…」
と羽原は突如として俺の心を折りに来た。
「ま、まぁ、先輩顔暗…じゃなくて男性ですし怖がられちゃうかもしれないじゃないですか!!」
須永はフォローというより更に壊しに来た。
「え、じ、じゃあ俺その辺り見てるから…」
仕方なしに一人で団地を歩いてみる事になり、考えてみたが一人だとどうすればいいかよく分からないので隅まで歩いてみよう。歩いていると最後の四棟目まで来た。ここが一番奥かと思ったら四棟目の後ろにも道がある。途轍もなく嫌な予感がしたが道なりにどんどん進んでいくと他の四棟よりだいぶ小さい建物があった。
「なんだ、これ…」
建物のデザインは他の四棟と同じだし、何より同じ敷地内にあるのだから間違いなく団地の一部であるはずなのだが今までとは桁違いにどんよりとした重い空気が漂っている。
建物を見ると全く光がなく建物の通路を見ても一寸先も見えない闇となっている。
間違いなくこの建物こそ呪いの団地なのだろうと直感が働いている。
自分の好奇心が勝り、一人で建物内に入ろうとした時、後ろから子供の声がした。
「おにいちゃん、はいったらだめだよ」
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