ドーナツと夢
最近、悠馬君が忙しそう。
元々友達が多くて、いつも僕のそばにいるけどたまにいなくなる時もあった。でも、最近はいない方が多いような気がする。そっちの方がいいんだけど。
そう言えばこの前、御崎ちゃんとこっそり出掛けているのをみた。もしかしたら浮気してるのかな。浮気とかじゃないけど。
いつもは時間をずらしているけど、少し気になって御崎ちゃんと帰りの時間を合わせてみた。
「御崎ちゃん。悠馬君とらないでよ」
「悠馬?ってあぁ松宮のこと?別にとってなんかないわよ。あんな男」
「仲悪いの?」
「そうよ。全く、あんたもあんまり下手なこと言っちゃダメじゃない。疫病神の話したんでしょ」
「でも悠馬君悪意ないから、僕が興味を持たなきゃ大丈夫」
「そういう問題じゃないの。私はあなたにこれ以上傷ついて欲しくないのよ」
「そんなのいいんだよ別に。それより二人で何してたの?」
「世間話よ。あの男パフェにラテ飲んで。甘党すぎるわよ」
「いーなーパフェ。僕も食べたい」
「あなたってホントいつまでも子供よね。外じゃちょっと大人しくできてるだけで」
また御崎ちゃんのお小言タイムだ。いつも僕と話す時御崎ちゃんはお小言ばっかり言う。高校生らしくしなさいとか、甘えてないで一人で生きていけるようになりなさいとか。そんなのばっかりだ。
やっとの思いで自宅に着くと、御崎ちゃんのお父さん。僕の叔父さんが優しく出迎えてくれた。
「おかえりなさい。二人とも今日は一緒に帰ってくるなんて。思ったより仲がいいんだね」
「そんなことないわよ。ただ忠告してただけ」
御崎ちゃんはきっと僕のために仲良くしないようにしてくれているのかな。僕の大切な人にならないように頑張ってくれてるのかな。
手を洗って部屋に戻るとおやつのドーナツが置いてあった。御崎ちゃんのお母さんの手紙も添えてあった。
『学校ちゃんと通えて偉いですね。何か嫌なことが起こったらいつでも伝えてくださいね。叔父さんも叔母さんも味方ですから』
叔母さんの顔は一度しか見た事がない。叔父さんも滅多に顔を見せてくれない。今日は御崎ちゃんのお出迎えのために玄関に居ただけだ。
ドーナツを久しぶりに食べた。真ん中の丸を覗いて、小学校の時に国語の授業で読んだお話を思い出した。指で作った窓の中に見たいものが見れるお話。あのお話の中のこぎつねと同じものをみれないかな。僕にも。指を染めてもらわなきゃダメか。
ドーナツの奥には寂しい僕の部屋が広がっているだけだった。
『御崎さんちの、そう、あの子。またあの子の周りで起こったんですって』
『いやねぇ、うちの子には注意させないと』
『ほんとよね、学校になんて通わせないで欲しいわ』
『疫病神なんだから』
この夢見るの何回目だろ。いつも汗だくで起きる。誰かの名前を呼びながら、何かに手を伸ばしながら起きる。
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