第1話 白日
竹が生い茂る竹林に少女の声が響いた。
「金烏、又いなくなっているわ。」
玉兎の言葉に後ろを振り向くと、先程までいたはずの宦官が一人もいなくなっていた。
「またですか……。」
朝の散歩の途中で宦官がいなくなるのはこれが初めてではない。
その瞬間、後ろで人の倒れる音がした。
「姉上、やりすぎないでください。誰かが見ているかもしれませんよ。」
「だから、腹に一発ぶち込んだだけよ。」
そう言って私達を襲ってきた宦官をお姫様抱っこする。
いや、正直言って姉上の一発は最悪人を殺せるのだが……。
「それより、ほんとにあのクソババア懲りないわね。」
玉兎がクソババアと呼ぶのは嫡母の王太皇后である
父亡き後、母の地位の低い私達は彼女に実質の政権を奪い取られた。
この一年お飾り皇帝という立場にはまってしまっている。
何か嫌な予感がして宦官のポケットを漁ると短刀が転がり出てくる。
「マジか……。」
別に大した執着も無いし、傀儡のように操られるくらいなら別に良いのだが、流石に殺されたり傷つけられるのは流石に看過できない。
死んでしまったら、お飾りだとしても帝位につき続ける意味がなくなってしまう。
「さすがにこれ以上は看過できませんね……。」
玉兎はニヤッと笑った。
公主に、いや皇帝にふさわしくない悪巧みを思いついたような笑いだった。
双子として11年間一緒に生きてきた。
だからこそお互いに思いが伝わる。
——―やられた分はやり返しましょう。あちらが後悔するまで……。
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