第2話 目が覚めて
…あれ?自分の部屋じゃない。
目が覚めて周辺を見渡すと、周りをカーテンで仕切られた、病室のようなベットで私は寝ていた。でも、どうして私はこんな所にいるのだろう?
その時、私の脳内に怪物の記憶がフラッシュバックした。
…私、そうだっ!!そういえば……。
ズキ…ズキ!!!腹部に強烈な痛みが走る。
「……いったぁ!!」
私は、悲鳴を上げた。
思い出したと同時に、起き上がろうとしたら、お腹の辺りがとても痛かった。急いで布団と洋服を捲り上げて確認したら、自分のお腹が包帯でグルグル巻きになっていた。
「うわ…なんだか、とんでもない事に」
さすがに、びっくりした。
「おや?目が覚めたみたいだね。」
男性の声が聞こえた。私以外に人がいたみたい。声の主は、カーテンを開けて、こちらに顔を覗かせる。その姿は白衣を着たひょろっとした背格好の人だった。
「……おじさん、誰ですか?」
「おや、主治医に対して初っ端に誰ですか?とは、最近の子どもは感謝も出来ないんですかね…」
白衣を着たおじさんがムッと、不機嫌そうに私に向かって言った。
「あ!…助けて頂いてありがとうございます」
「はい、よろしい。」
私が慌てて感謝を伝えると、その人は不機嫌から途端に、にっこりと機嫌よくなった。
意外と礼儀に厳しい人だ。主治医と言っていたという事は、この人は私を治してくれた人なのかな?そう考えるとお礼も言わないのは、確かに失礼だった。
「
「君のお名前、年齢を教えて貰ってもいいな?」
ソウイチロウと名乗ったお医者さんは、自己紹介をすると、よいしょっと言いながら、私が寝ているベットの近くに置いてあった椅子に座った。
「……しおり。
シオリは自分の名前、年齢を答えた。
「そうか、まだ10歳か…。とっても怖かっただろう、大変だったな。」
ソウイチロウが悲痛な顔でシオリに言う。その後彼は二、三回シオリの頭を撫でてから、また話に戻った。
「本当なら、シオリさんの状況をすぐ説明したい所なんだけど、アイツを呼ばなきゃいけないから待って欲しいんだ」
……アイツ?誰のことなんだろう…?と考えていると、ソウイチロウは椅子から立ち上がり、病室のベットのカーテンに手をかけようとした。
いけない。一刻も早く現状を知りたいのに、お医者さんはこのままだと、どこかに行ってしまう。
「……あのっ!待って下さい!私どれくらい寝てました?それに、家族に連絡は?お父さんとお母さん心配してると思うんですっ!」
シオリは慌てて、ソウイチロウの足を止め、気にしている事を早口で言った。不安だった。きっと私は、かなりの時間寝ていたはずだ。何も言わずに長い間いなくなったら、今頃、両親はとても悲しんで泣いているに違いない。早く連絡しないと!
「うーん、3日間ぐらいだよー。」
…3日っ!!嘘ですよね?
「後、親御さんの事に関しては大丈夫。おじさんそこらへん上手くやっとくから心配しないで」
ーー本当に大丈夫なのかな……。
シオリは、ソウイチロウの気の抜けたような軽い返事に、この人に対して不安を感じた。
足止めを試みたが、ソウイチロウはそれでも立ち去ろうとすると、
「良かった、目が覚めたんだな」
さらに人がやって来た。カーテンから新しい顔が、また覗いてくる。今度来たのは、若いお兄さんだ。そして、その声はどこかげ聞き覚えがあった。それは…、
意識を失う前、シオリに呼びかけてくれた声と同じだった。
亜鬼戦区 里乃慎也 @yukieto
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