亜鬼戦区

里乃慎也

第1話 それは、突然の出会い

 今までの私の毎日は、辛いことも悲しいこともあったけど、その分幸せな事もいっぱいある何不自由ない平和な毎日だった。だけど、気づかない内に、 何か に巻き込まれているのを、この時の私は知る由もなかった。


 今日は、近々行われる小学校の文化祭実行委員会に参加した。今は放課後、委員数人で集まって出し物の話し合いをしている。

 気が付くと、夕方の遅い時間までかかってしまった。さすがに、「続きはまた明日」と切り上げて解散し、みんなで帰ろうとした所だった。


「え………?」


 ふと外を覗くと、窓から……怪物が見えた。正確に言うと、校庭に角が生えた大きな巨体の化け物がいた…。 ソイツ は、校舎に向かってゆっくり歩いていた。私はとても怖くて仕方なかった。


「どうしたの?早く帰ろうよ」


 外を眺めながら、動かない私を不思議に思い、友だちが声をかける。

 私は、その声でハッと我に帰った。


 …早くみんなに伝えて逃げないと!

 

 そう思ったのも束の間、その怪物は次の瞬間、さっきまで校庭を歩いていたはずなのに、私達がいる三階教室の窓のすぐ向こうにいた。


 パリパリバキ!!!


 怪物は窓を突き破り、教室に入ってきた。


「!!?」


 衝撃音と共にクラスメイトは、悲鳴をあげながら、一心不乱に教室を出ていった。


「キャャャャっっ!!」

「うわぁぁぁぁぁあ!」


「………みんな、待って」


 逃げなきゃいけない。そんなこと頭では分かってる、でも私の足は震えて動かない。


「……あ……あ。」


 怪物はじ…っと私を見つめている。まるで何かを確かめているように。

 …お願い、今のうちに動いて、動いて!!!


 シオリは数秒後、思いっきり走り出した。

 

 ーズサッーー

 

 その時、鈍い音が聞こえてきた。


 置いていかれた、急いでみんなの後を追って逃げなきゃと怪物から背を向けた時に、

 

 気が付いたら、私のお腹に、怪物の腕が貫通していた。


 私はその場でゆっくり倒れた。お腹がとても痛い、たくさん血が出ている。このまま死ぬか、怪物に食べらるかのどっちかなんだろうなと思った。


 苦しみながらも、周りを見渡すと教室にはもう他に誰もいない事が確認出来た。よかった…。皆んな逃げられれたのなら……まぁ、いいや。


 私は、ほっとした。


 そして、目の前が真っ暗になった。


 ーーーーー

 ーーーー

 ーーー


 ズシャ!!


【ビギャャャャャャャャ!!】


 ズドン……


 今度は何だろう?天国ってこんな騒がしいのかな?暴れているような音がする。

 体が苦しいよ。だけど頑張れ、頑張って目を開けるんだ。


 最後の力を振り絞り、目を開けると、ぼやけているが、さっきまでの怪物が倒れていて、一人、誰かいるのが見えた。そうか、助けが来てくれたんだ。


「……たす…けぇて」


「………おいっ!まだ生きてるのか?生きてるんだなっ!もうちょっとだけ頑張れよ」


 私が助けてと声を出すと、その人は驚いた様子でこちらを見た。

 …お願い、助けて。痛いよ!苦しいよ!


「君の傷は致命傷だ。今から病院に行っても助からない。」

「だけど助かる方法が一つだけある。賭けだし違法だけどなあ、君の体もどうなるか分からねぇ、」


「それでも構わないなら、俺の手を取ってくれ。」


 助けに来てくれた人は、倒れている私を抱え色々説明してくれた。でも、どういう事だろう…?助ける方法があるって言ってたな…。

 私の答えは決まっていた。まだやりたい事がいっぱいある。まだ死にたくない。


 私は、必死に手を伸ばし、手を取った


 目の前がまた、真っ暗になった。

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