第64話 おかしい・・・さっき増えたばっかりだよね!?(4)

 さて、いつも通り転移扉をくぐって異世界へ。

 アンジェリカちゃんが目を白黒させていたのが可愛かったよ。


 異世界の地下室から出て、地上に上がると、


「・・・太陽が2つある・・・これは確かに別の世界・・・」


 と呆然と呟くアンジェリカちゃん。

 うんうん、掴みはOKだね!


「ご主人様、お待ちしておりました。そちらの方が?」


 そんな僕達を待ち構えていた二人。

 ルーさんとアナだ。


「うん、そうだよ。」

「あっ、アンジェリカと申します。よろしくお願いします!」

「ご主人様のメイド兼肉奴隷のルーと言います。今後よろしくお願い致します。」

「に、肉奴隷!?」

「何言ってんの!?アンジェリカちゃん違う!違うから!!」

「2号のアナと申します。」

「ふ、二人も!?」

「アナまで!?誰だこんな事仕込んだのは!」

「うふふ・・・冗談です♡」

「ごめんなさいご主人様・・・ルーさんがどうしてもって・・・」


 ルーさんか!

 まったくもう!!


「アンジェリカ、この二人はメイド兼愛人よ。」

「あ、愛人!?」


 桜花まで!?


「ちがー・・・わないのか?う〜ん・・・なんというか字面が・・・」


 僕の頭にはてなマークがいっぱい浮かんで腕を組んで考え込んでしまう。

 そんな僕の様子をみんながクスクス笑っている。


「アンジェリカ様、愛人というのは本当ですが、それは私とアナが望んだ事なのです。ご主人様のせいではありませんよ。」

「はい、桜花様もご主人様も婚約者で良いとは言ってくださったのですが、メイドとしての立場を捨てきれなかった我々のせいなのです。お気になさらないで下さい。」

「・・・なるほど。わかりました。そうやって龍馬さん達を支えようとされているのですね?これからよろしくお願いします。」


 おお・・・流石は長く生きているだけはあるね。

 理解力が半端ない!!


「では、どうぞ。」


 僕達が室内に入ると、居間には既にみんながいた。


「・・・な、なんというか綺麗な人ばかり・・・流石は龍馬さんですね。」


 どういう意味!?

 別に集めてませんけど!?


「さて、アンジェリカ?ここにいるのが龍馬の婚約者全員よ。と言っても、まだまだその立場を狙っている人はいるんだけどね。じゃあ、挨拶しましょうか。」

「は、はい!はじめまして!アンジェリカと言います!こんな見た目ですが、一応500年は生きています!よろしくお願いします!」

「はい、はじめまして。アンジェリカ、と呼ばせて頂きますね?私はリディア・リヒャルト・メイビスと言います。ここでは年齢による序列はありませんし、お互いの呼び名に敬称もいりません。正妻としてオウカがいますが、基本横並びです。オウカが認めたあなたが悪い人であるわけがありませんから、私達も認めています。仲良くしましょうね?」

「は、はい!いや、うん、分かったよ。」

「では次は私だな。私はグレイス・リュース。リディアちゃんの姉のようなもので・・・」


 それぞれ挨拶を進める。

 さて、どうなるかな・・・


「じゃあ、次は最後ね。・・・こら、なんで隠れてるの?」

「う・・・」


 みんなの挨拶が終わり、最後の一人となった時、桜花がそう言った。

 罰が悪そうにみんなの後ろから出てきたのは・・・


「マリア・・・」

「・・・久しぶりね、アンジェリカ。」


 そう、マリアだった。


 この二人は本当に複雑だ。

 アンジェリカちゃんの家族を殺し、アンジェリカちゃんに不死の改造をしたのはマリアだ。

 その後も、魔女マリアを討伐するために作られた異能組織エデンのメンバーを何人も排除しているし、マリア自身もアンジェリカちゃんにとどめを刺されている。


 二人はじっと見つめあっている。

 周りも、一言も発しない。

 そんな時だった。


「アンジェリカ、ごめんさいわたくしは・・・」


 頭を下げて謝罪しようとしたマリア。

 でも、


「マリア、頭を下げるな。お前は最期に自分で責任を取ったのだろう?それは龍馬さんも私も、大和くんも見届けているんだ。それで終わり、それで良い。もう謝る必要は無いんだ。」

「アンジェ・・・リカ・・・」


 きっぱりとそう言って微笑むアンジェリカちゃん。

 ・・・うん、この子はやっぱり良い子だ。

 桜花も同じ様に微笑んでいる。


 大きく深呼吸するマリア。

 そして、目尻に浮かんだ涙を手で拭ってから、アンジェリカを見た。

 その表情は不敵に微笑んでいる。


「今はこちらでは魔法師のマリアを名乗っているわ。よろしくアンジェリカ。相変わらずおチビだこと。」


 マリアがそう言うとアンジェリカは同じ様に微笑み、


「ほ〜・・・お前こそ相変わらず真っ黒な格好に真っ黒な腹の中をしているな。腹黒を名乗った方が良いんじゃないか?」

「・・・なんですって?」

「なんだ?」


 お互い近寄って額をぶつけあってグリグリしてる。

 一見は険悪そうだ。

 でも、これって・・・


「あ、アンジェリカさん駄目だよ喧嘩は!」

「そ、そうです!やめるのです!!」

「そうですわよお二人共!おやめなさい!」


 見かねた瞳達とメイちゃんやエスメラルダ。

 でも、


「止める必要は無いわ。」

「ええ、オウカの言う通りですね。」

「・・・私もそう思うわね。」


 桜花とリディア、それに早苗さんが瞳達を止めた。

 

「え・・・?」

「でも・・・」


 それに納得行かない面々。

 そんなみんなに笑顔のセレスが教えてあげたんだ。


「あの二人は色々あったから、照れくさいのですよ。本心では、お互いに争わない関係としてまた会えたのが嬉しいのよ。特にマリアはね。」


 そう、照れ隠しなんだろうな。

 僕もそう思っていたけれど、心を読めるセレスが言うなら間違い無いね。


「表に出なさいな。こちらで力をつけたわたくしを見せてあげるわ。」

「へぇ、見せてもらお〜か!」

「ほら二人共、その辺にしておきなさい?みんながびっくりしちゃうでしょ?」


 ほらね。

 桜花が声かけたらすぐにピタッと止まったもんね。


「・・・桜花さんがそう言うなら・・・命拾いしたわねアンジェリカ。」

「それはこっちのセリフだマリアめ。今度雌雄を決してやるからな。」

「それはこちらのセリフだわ。」

「「ふんっ!」」


 そんな二人を微笑ましい目で見ているみんな。

 もう心配はいらないね。


 だってそうでしょう?

 アンジェリカちゃんは一度もマリアの事を魔女とは呼んでいないんだから。

   

 




 その後はみんなでお互いの事を話す。

 その中で、


「ず、ズルいぞマリア!私だって龍馬さんの格好いい所見たいのに!」

「うふふ。本当に格好良かったわぁ・・・わたくし、すごく頑張っている龍馬くんを見て、涙がちょちょぎれちゃったもの。」

「くそぅ・・・ズルい〜!」


 ・・・今話しているのは僕がヴァリスを倒した時の事。

 うっとりと話すマリアに、アンジェリカちゃんが歯噛みしている。


 どうもマリアもあの時、セレスやジードが作った映像投影魔法を見ていたみたいなんだよね。


「あ、でもそれは私も見てみたいかも。」

「あたしもあたしも〜」

「う、うん。見てみたいよね。」

「そうね。見られなかったのは残念だわ。」


 いや、僕にしてみれば、必死に戦っている所を見せるのはなんだか恥ずかしい気もするんだけど・・・


「じゃ、見てみましょうか。龍馬くん?持ってるわよね?アレ。」


 セレスにそう言われてビクッとする。

 うっ!?気づかれた!

 確かに、結晶に記録として残してるけど・・・


「龍馬っち見た〜い!」

「龍馬さん!見せて下さい!」

「ほら、龍馬?可愛い婚約者達のお願いでしょう?」


 ・・・ちきしょう、桜花め!

 僕が恥ずかしがっているの分かってて言ってるな?

 はぁ・・・仕方がない、か。


「『投影』」


 居間にデカデカとあの時の映像が映し出される。


「うわぁ!か、かっこいい龍馬くん!」

「す、凄いね!特撮物みたい!」

「ほえ〜・・・これ、リアルなんだよね?すっごー・・・」

「龍馬くん、あんなに血まみれになって・・・無事で良かったわ・・・それにしても、格好良いわね。」

「・・・こうやって改めて見ると、本当にわたくしが向こうで敵対していたのが馬鹿らしくなるわね。この相手ですら、ケントゥム様より上だったわけでしょう?無知って怖いわねぇ・・・」


 う〜ん恥ずかしい。

 それにマリアはなんだか達観して見てるね。


「凄い!龍馬さん凄い!カッコいい!きゃ〜!!あ!?すごっ!?どうなってるの!?今のセリフ素敵!!・・・きゃ〜〜〜♡」


 そしてアンジェリカちゃんは子供のようにキャーキャー言ってる。

 まぁ、喜んでくれて良かったよ。








 映像鑑賞会も終わり、みんなで食事とお風呂。

 流石に、アンジェリカちゃんは照れていたけど、それでもマリアに煽られてちゃんと隠さずにいた。


 そして夜。


「こ、この人数で一度に・・・?嘘でしょう・・・?」

「あら?怖いのアンジェリカ?ビビちゃった?」

「だ、誰がビビっただって!?どっちが龍馬さんをいっぱい果てさせるか勝負だマリア!『グローアップ』!」  

「望む所よ!アンジェリカ!」

「お〜お〜そんな事聞いたら黙ってられね〜な〜?マリア!アンジェリカ!先輩の意地、見せてやっからな?」

「アイシャだけじゃないぞ!不肖、グレイスも参戦する!」

「メイも!メイも!」

「わたくしだって竜種として負けられませんわ!リョウマ様!お覚悟!!」

「ちょっと?エルフだって負けてないんだけど?」

「魔法の天才が魔法だけでは無い所を見せてあげます。」

「わたしだってリディアには負けないわよ!」

「ふふふ、帝国出身者である私だって負けてない所を見せるわね!」

「メイドの意地を見せましょうアナ。」

「はい、ルーさん!」

「何言ってるのよ。勇者の勇者足る所以を思い知らせてあげるわ!」

「あら?それを言ったら、元管理者として情けないところを見せられませんね。」

「か、肩書は特に無いけど、龍馬くんを思う気持ちは負けない!」

「そうやね!向こうの世界の意地を見せなきゃ!」

「う、うん!負けないよ!」

「そうね。私も、教育者として格好悪いところを見せられないわ!龍馬くん!性教育の時間よ!」


 望まないで下さい、ていうかそんな事で張り合うな〜!!

 これ、大変なの僕じゃないか〜〜〜!!


 ぎゃあああああああああああ〜〜〜〜〜〜!!



***************

というわけで、今回のアフターは終わりです。

次はどうしようかな・・・


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