第50話 BUNKASAI!!(2)
「はぁ・・・嫌だなぁ・・・気が重いよ・・・」
「良いじゃないの。案外似合うかもよ?あなた童顔だし。」
「そうそう。龍馬くんなら似合うと思うなぁ。」
「あ、あたしもそう思うよ!龍馬っちのメイド!」
「う、うん。可愛いと思う!」
今は放課後、みんなで文化祭の内装を作っている。
受験勉強もあるけれど、それでもみんな楽しそうにしている。
・・・まぁ、僕は受験に余裕もあるし、いつまでも文句も言ってられないかぁ・・・
気分を切り替え、僕は内装の準備をする。
まぁ、そうは言っても、そんなに大きなモノは必要ないんだけどね。
何せ、喫茶店だから、内装をイジる程度出し。
「接客に付く人集まってくださーい。」
あ、呼ばれた。
僕達は、揃ってそちらに向かう。
簡単に説明を受ける。
僕は普段は執事、そして・・・1時間だけメイド。
くそっ!僕のメイドなんて絶対需要無いのに!!
晒し者にして楽しむつもりだね!!
執事・・・イメージとしては、リディアの卒業式の時のグレイスみたいな感じかな?
後は・・・食器の上げ下げや言葉使いなんかは、ルーさんやアナをイメージすれば良いか。
「じゃあ、三上くんやってみて?」
さて、接客役の人相手へのロールプレイング。
まずは、挨拶から。
「お帰りなさいませ。お嬢様。お席にご案内いたします。よろしければ、お手をどうぞ。」
「・・・は、はい!」
「「「「・・・」」」」
僕は、背筋を伸ばし、一礼しながら挨拶をしてから、お客さん役の人の手を引いて席に向かう。
・・・なんだろう?
なんか殺気が・・・
「どうぞ、おかけ下さい。」
「あ、ありがとうございます。」
椅子を引いて、座って貰う。
「よろしければ、お飲み物をお持ち致しますが、いかが致しましょう?そちらに記載されてあるものであれば、なんでもご用意致します。」
「じゃ、じゃあ・・・紅茶でお願いします!」
「かしこまりました。少々お待ち下さい。」
一度離れて、カウンター代わりの机に行き、そして、カップを皿に乗せ、お盆に乗せて戻る。
「おまたせ致しました。」
お皿を机に置き、一礼。
「どうぞ、ごゆっくりとお楽しみ下さい。何かございましたら、お申し付け下さいませ。」
そう言って離れる。
ふう〜・・・緊張するなぁ。
「凄い三上くん!完璧じゃないの!!」
指導役の子が褒めてくれた。
よかったぁ・・・
「・・・ねぇ龍馬。」
「ん?何、桜花?」
「なんであなたそんなに完璧に出来たのかしら?」
「え?だって見本、居るじゃないか。」
「・・・執事は居ないわよね?」
「ああ、それはラノベなんかを参考にしてね。立ち振舞いは・・・男装をした時のグレイスかな。」
「ふーん・・・なるほど。じゃあ、手を取ったのは?」
「え?・・・雰囲気?」
「・・・」
あれ?
なんか間違ったのかな?
僕は険しい顔をした桜花に冷や汗を流す。
そして、ちらりと瞳や宏美、梨花を見ると・・・
「「「・・・」」」
あ!
なんかやっちゃったっぽい!!
ヤバい!
「あ、僕、執事役やっぱり降り・・・」
「三上くん!当日もそれでお願いね!特に、最初に手を引いてあげたのなんか評判良さそう!三上くんはそれでお願い!!」
「・・・はい。」
指導役の子が目を輝かせてまくし立てて来た。
「・・・馬鹿龍馬。」
「龍馬くんのアホ。」
「龍馬っち・・・」
「龍馬くん・・・」
桜花達の呆れた様な呟きを僕の耳が拾う。
ううう・・・だって仕方がないじゃないか・・・
「じゃあ、次はメイドの方ね?」
こうして、練習は過ぎて行く。
一週間後
「衣装出来たよ!!」
「「「「「「「「「「「「「お〜!!」」」」」」」」」」」」
衣装担当の子がメイド服と執事の服を持ってきた。
それぞれ着用する事となる。
まずは、執事役の人からお披露目。
僕は執事服に袖を通した。
「どうかな?」
「・・・似合ってるわ。」
「良いね!龍馬っち!」
「カッコいいよ龍馬くん!」
「・・・ごくりっ。龍馬くん・・・美味しそう。」
どうやら、そこそこ似合ってるみたいだ。
・・・梨花の呟きは・・・やっぱこの子むっつりだなぁ・・・
「ヒソヒソ(ね、ねぇ。三上くんの執事、想像以上に・・・)」
「ヒソヒソ(う、うん・・・アリだね・・・)」
「ヒソヒソ(・・・良いなぁ。あの4人・・・執事プレイとかするのかなぁ・・・)」
「ヒソヒソ(羨ましい・・・)」
・・・なんか他の女子がちらちらこちらを見ながら、ヒソヒソ話してる。
やっぱり似合ってないのかなぁ・・・
傷つく・・・
「はい、じゃあ、次はメイドの人、こっちで着替えて下さい。」
次は桜花達だ。
少し待っていると、桜花達が着替えて来た。
「お〜!廻里さんのメイド服!!」
「・・・美しい・・・」
「葛城も可愛い・・・」
「大寺もだ・・・」
「河瀬も・・・良い・・・」
男子達がざわつく。
メイド服は、ロングスカートの清楚な感じ。
クラシックスタイルとでも言うのかな?
「どうかしら?」
桜花が僕の前まで来て、くるりと回った。
「うん。可愛いよ。似合ってると思う。」
「・・・ありがと。」
嬉しそうに笑う桜花。
くいくいと袖が引っ張られる。
「龍馬くん。私は?」
瞳だ。
「瞳も似合ってるよ?良いと思う。」
「本当!?」
「龍馬っち!あたしは!?」
「龍馬くん!私も!」
宏美と梨花も詰め寄って来た。
「二人も勿論可愛いよ?」
「「えへへ♡」」
うん、本当にそう思う。
「でも・・・みんなこんなに可愛いと、複雑だなぁ・・・」
・・・みんなこれで接客するんだよね。
はぁ・・・ちょっと凹む。
「安心しなさい。これは業務よ。」
「そうそう、あくまでも仕事だよ?」
「龍馬っち〜。可愛いこと言うじゃん!心配しなくても、個人的にやってあげるからさ?」
「う、うん。宏美ちゃんの言う通りだよ?それに・・・そっちの方が・・・はぁ、はぁ。」
微笑んで僕を見ている桜花と、笑顔の瞳。
それに、ニヤニヤしている宏美に・・・若干興奮気味の梨花。
まぁ、梨花はあれとしても・・・でも、ありがとうみんな。
「・・・三上くん、凄くさらっと褒めたわね。」
「・・・そうね。凄いわ・・・何が凄いって、自然な所よね・・・」
「なんか、なれてる感じがする・・・」
「・・・くそっ!三上の野郎!!」
「あいつの青春と俺たちの青春に格差が!・・・これが格差社会の弊害か・・・!国は何をやってるんだ!!」
「何がそんなに違うんだ!俺たちとあいつの差はなんなんだ!?」
・・・ぼそぼそと囁かれる色々な人の声。
そして、敵意むき出しの男子達。
・・・しまった。
ここ、教室だった。
・・・また嫌われちゃったかな。
うう・・・これじゃ、学校で男友達を作るのは夢のまた夢だ・・・くすん。
こうして、文化祭当日を迎える事になった。
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