アフターストーリー 新学期とGW

第9話 新学年

 今日から高校三年生。

 学校に行く準備をする。


「いってきま〜す!!」


 桜花との待ち合わせ場所に向かうと、桜花は既にいた。


「おはよう、桜花。早いね。」

「おはよう。龍馬が遅い・・・ってわけでも無いわね。まだ待ち合わせ5分前だし。」

「そうそう、やっぱり桜花が早いんだよ。」

「そうかもね。でも、遅れるよりはましでしょう?」

「あはは、そうだね。」


 僕たちは通学路を進む。


「でも、クラス分けどうなるかな?」

「最終学年だからね。気にはなるわ。」

「一緒だと良いね。今まであんまりクラス一緒じゃ無かったし。」

「そうね。最後くらい一緒がいいわね。」


 学校が近づく。

 すると、いつものように、桜花に見惚れる男子生徒が、何人もいるのに気づいた。

 

「相変わらす、桜花はモテるね。」

「・・・龍馬にだけは言われたくないんだけど。」

「えっ?僕?僕はモテないじゃないか。」

「どの口が・・・!」

「うぇっ!?どうして怒ってるの?だ、だって、僕は告白されたのなんて、みんなくらいだよ?桜花なんてしょっちゅうされてるじゃないか!」

「・・・あのね、そもそもモテない人は、両手の数以上の女の子から告白されません!もうちょっと自覚しなさい!」

「・・・・・・」


 怒られた。

 そうかなぁ・・・あれは、向こうの世界の補正が効いてるだけで、こっちでは一度も告白なんかされて無いし・・・ちょっと信じられない。

 見た目も普通だし・・・うん!やっぱり僕はモテない!


 ん?なんか・・・桜花じゃなくて、僕も視線を集めてる気がするけど・・・なんだろう?

 桜花と一緒にいるから?

 でも、それならいつもそうだしなぁ・・・


 校舎まで着くと、玄関前に、クラス分けの紙が掲示されていた。 

 僕の名前は・・・


「あっ!3ーAだって!桜花は?」

「・・・っ!!私もよ!やったわね!」

「うん!これからよろしくね!」


 桜花と笑顔で話しをしていると、後ろから衝撃が来る。

 うぇ!?

 何!?

 殺気は無いけど・・・


「おはよう!三上くん!廻里さん!私も3−Aなの!よろしくね!」


 振り向くと、そこには葛城さんがいた。

 いや、いたと言うより、後ろから抱きついてきていた。


「か、葛城さん?おはよう。よろしく・・・っていうか、近いよ!?」

「葛城さん、おはよう。離れて!」


 桜花が葛城さんを引き剥がした。


「もうっ!廻里さん、ちょっとくらいいいじゃない!」

「よくありません!」

「え〜っ?」


 葛城さんが不服そうにしている。

 ・・・いや、それよりも周りの男子の目がヤバい。


「あの野郎・・・今年受験だってのに・・・」

「俺の・・・俺の葛城が・・・」

「聞いたか?三上の奴、廻里さん以外にも、女が何人もいるらしいって話。それも、廻里さんばりに可愛いかったり綺麗だったりっての。」

「ああ・・・三上と同じクラスだった奴が、泣きながら電話かけてきた。」

「あいつなんなんだ?どっかの富豪の子供なのか?」

「でも、前見た事あるけど、あいつの家普通だったぞ?」


 ・・・めっちゃ噂されてる・・・

 僕がげんなりしていると、桜花と葛城さんの話し合いは終わっていた。


「三上くん!教室に行こう!」

「・・・はぁ〜・・・龍馬、行くわよ。」


 元気な葛城さんと、苦虫を噛み潰したような桜花の表情の落差が酷い。

 いったい春休みに、何を話したのか・・・


 三人で校舎内を進む。

 僕を挟んで、左手に桜花、右手に葛城さんだ。

 ・・・男子生徒の怨嗟の目が凄い。


 教室に入る。

 一斉にこちらを見る目。

 男子は・・・ここまで来た時に貰っていた目線と変わらない。

 女子は・・・ん?逆に興味深そうに見ている?

 この差はなんだろう?


「三上くんおはよう。瞳ちゃんも桜花ちゃんもおはよう。今年も同じクラスだね。よろしく。」

「やぁ、おはよう。よろしくね。」


 この子は、去年、僕と葛城さんと同じクラスで、剣道部だった桜花と同じ部活だった子だ。


「ねぇねぇ。三上くん、打ち上げの時の女の子達は、三上くんの知り合いなの?」

「うっ!!」


 凄く興味深そうに目をキラキラさせて聞いてくる。

 その瞬間、周りも一斉に聞き耳を立てているのがわかった。

 ・・・なんて答えれば良いの?

 

 僕が言葉に詰まっていると、桜花がため息をつきながら、


「私と、龍馬の友人よ。とても仲が良い、ね。」


 と言ってくれた。

 しかし、それを聞いたその女の子は、桜花に食い下がる。


「え〜っ!?友達ってだけじゃなさそうだったんだけど〜?隠さないで教えてよ〜!!」

「内緒よ。ただ、確かに普通の友達では無いわね。親友達と言ったほうがいいのかしら。」

「もっと深い関係なんじゃないの〜?」

「そうかもしれないし、違うかもしれないわね。」

「む〜!桜花ちゃんの意地悪!」

「これ以上は内緒よ。」


 あ〜良かった!

 桜花様々だよホント!

 いつもありがとう!


 ん?

 くいくいと、葛城さんに袖を引かれる。

 内緒話をするように耳元に手を持ってきた。

 なんだろう?


「・・・三上くん、いつか私も仲間に入れてね?私、頑張るから!」

「っ!?」


 僕は驚いて葛城さんの顔を見ると、とても悪戯な微笑みをしていた。

 葛城さんはそれだけ言うと、自分の席に戻っていった。


 ・・・どういう意味だったのか・・・おそろしいけど確認したくない・・・


「?どうしたの龍馬。」

「いや・・・なんでもない。席に着こう。」


 どうやら、こっちでも、あまり気が休まらなそうです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る