第328話 創造神(1)

 楽しかった打ち上げから3日。

 僕は今、帰還の術式の構築に努めている。


 セレスとジードからアドバイスをされながらやってるんだけど・・・中々上手く行かない。

 というより、帰るだけなら問題ないと思う。

 戻ってくる事ができるようにするのが難しいんだ。


 向こうに魔力があれば問題ないんだけど・・・わからないんだよね。

 セレスも流石にそれはわからないらしい。

 

 そして、昼食をみんなで取っていると、セレスが急に立ち上がった。

 どうしたんだろう?


「・・・龍馬さん!創造神様がお会いできるようです。準備が出来次第行こうと思いますが、大丈夫ですか?」


 おお、いきなりだね。


「うん。大丈夫だよ。行こう。」


 昼食を終え、身だしなみを整える。


「龍馬、失礼の無いようにね。」


 桜花に送り出されて、セレスの術で移動した。


「ここは・・・?」


 何も無い世界。

 真っ白だ。

 距離があるのか、時間があるのかもわからない。


「ここは神の世界・・・の手前ですよ。流石に人を神の世界には入れられませんので。」


 セレスがそう言った。

 そんなもんなんだね。


「うん、そうだよ。そんなもんだ。」


 !?

 どこから!?

 気配は無いけど・・・


「無理だよ。そんなに簡単に僕に気づけたらそれこそ神側だよ。」


 後ろ!?

 僕が振り向くと、そこには少年が立っていた。

 小学生位の体躯で、髪はきれいな金髪、小柄だ・・・


「創造神様、本日は三上龍馬を連れて参上致しました。」

「やあ、セレス。元気そうだね。」


 創造神!?

 この少年が!?


「三上くん・・・いや、龍馬くんと呼ばせて貰おうかな。神を見た目で判断しちゃ駄目だよ?僕はこう見えて、セレスの倍以上生きているんだからね。」


 そっか・・・そりゃそうか。

 それに・・・創造神様は僕の心を読んでいるようだし。

 流石は神様だね。


「いや〜照れるなぁ!そんなに褒めないでよ!!でも、そろそろ自分の口で話してもいいんじゃない?」

「あ・・・失礼しました。僕は・・・いえ、私は三上龍馬と申します。創造神様にあっては・・・」

「あ〜いい、いい!止めてよ!普通でいいよ普通で!いつもの通りでいいからさ!」

「は・・・はい!じゃなくてうん、わかった。僕は三上龍馬と言います。はじめまして。」

「はい、はじめまして。君が龍馬くんか。セレスからは聞いているよ?・・・うん!確かに綺麗な魂をしているね。」

「あ、ありがとうございます?」


 綺麗な魂・・・自分じゃわからないや。


「それで、セレス。報告をお願いするよ。」

「はい。私は、三上龍馬を夫として、定命の者として生きようと思います。」

「受け入れて貰えたって事?」

「はい。」


 創造神様が僕を見た。


「ふむ。いいだろう。龍馬くん。セレスは僕が作り出した娘のような存在だ。幸せにしてくれるかい?」

「勿論です。受け入れたからには全力を尽くします。」

「結構だ。なら、龍馬くんにはあの世界を救ってくれた事も含めてご褒美をだそうじゃないか。」

「ご褒美ですか?」

「そうだよ。なんでも一つ願いを叶えようじゃないか。」

「なんでも、ですか?」

「なんでもだよ。富も、名声も、なんでもいいさ!言ってごらん?」


 僕は覚悟を決めた。

 なら、ご褒美はあれにしよう。


「龍馬くん・・・何かを思いついたみたいだね。言ってごらん?」

「はい・・・僕はセレスを受け入れました。そして、僕は一つ心に決めている事があります。」

「なんだい?」

「僕の婚約者達は、僕のような取り柄のない普通の男を好きになってくれました。そして、結婚したいと言ってくれました。その時に覚悟した事です。」

「うんうん。」

「それは、奥さんたちの心も身体も僕が守ると言うことです。セレスの事に関して、創造神様にお願いしたいことがあります。」

「何かな?」

「あなたは、ヴァリスをセレスの補佐として決めた。しかし、ヴァリスのあの性格を、創造神様であるあなたがわかっていない筈がない。結果、ヴァリスはセレスを裏切り封印した。その時にセレスは傷ついた筈だ。それは仕方がない。でも、それを知ったあなたが、謝罪の代わりにセレスの今後の許可を出したと聞きました。セレスに謝ったとは聞いていません。」

「そうだね。」

「で、あれば、僕の願いは一つです。セレスに謝って下さい。」

「龍馬さん!?私は・・・」


 セレスが驚いて僕を止めようとする。

 しかし、そんなセレスを創造神様が手で制した。


「ふむ。君は創造神たる僕に、たかだか管理者であるセレスに謝れと言うのかい?」

「はい。僕の願いを聞いてくれるのでしょう?」

「代わりにセレスの願いを聞いたと思うけど?」

「それは、造物主であるあなたの義務でしょう?でも、謝罪は違う。嫌な思いをしたセレスに謝らない事は正しくない。セレスの傷ついた心に対する対価はあなたの謝罪だと僕は思います。」


 僕がそこまで言った時、創造神様は目を閉じた。

 そして、どれくらい時がたったのかわからなくなった時、突然目を見開いた。


「調子に乗るなよニンゲン。」

「!?」


 圧倒的な力の本流が僕を襲う。

 その力は、ヴァリスなんかよりも遥かに強大で、ジードですらまったく届いていない。

 後ずさりしたくなる程の圧力・・・正直逃げ出したい位だ!

 身体が小刻みに震えて来る。

 怖い・・・


「今なら聞かなかった事にしてやってもいい。もう一度問おう。貴様は創造神たる我に、管理者であり、我が作り出したセレスに謝れと言うのか?」

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