第327話 打ち上げ(5)

 人妻裁判も終わり、僕は開放され・・・無かった。

 正確に言えば、人妻達からは開放されたんだけど・・・桜花達とガーベラ達の話し合いに参加させられたんだ。

 てゆーかね?これ今やらなきゃ駄目なの?

 別に打ち上げの時にやらなくても・・・


「何不服そうにしてるのよ?あなたの事でしょう?」

「・・・ハイ。ソウデスネ。」


 桜花の睨みつけで黙り込む僕。


「…弱い。」

「とても神殺しと思えないわね。」


 はい、そこの悪い元人妻二人は黙ってて下さい。

 あっち行ってて!!


「で、ガーベラさん達はどうするのかしら?」

「今すぐにでも婚約者になりたい!・・・けれど前に言われた事もあるしなぁ。」

「そうだな。あれが解決しない事には名乗りを上げられん。」


 ガーベラとウルトは難しそうにそう言った。

 前に言われた事?


「龍馬はあの時居なかったわね。要は、ガーベラさん達の気持ちは、自らを犠牲にできる程の深い愛ではなく、憧れや尊敬が先に来るものだってのを話したのよ。」


 へー。

 

「別にそれが悪いってことじゃ無いですが、少なくとも、今、リョウマさんの婚約者となっている者はそうではありませんから。」


 リディアの言葉に頷く。

 確かにね。

 僕が暴走した時、みんな止めてくれたもんね。

 

「・・・悔しいですけれど、確かにオウカさんの言うとおりです。私はまだ、命をかけてまで、リョウマさんとは向き合えないですね。」


 カエラさんが考え込みながらそう言った。

 ん?

 なんでカエラさんが混じっているんだ?


「・・・リョウマ気づいてねぇだろうけど、カエラもガーベラ側だぞ?」

「ええ!?」


 アイシャの言葉に驚きつつ、カエラさんを見ると恥ずかしそうにしている。


「はいは〜い!私も私も!!」

「勿論私もです。」


 続いてオリビアさんとキリアさんも手を上げた。

 ええ!?

 二人共なの!?


「・・・気づいてなかったのですね。」

「これだからリョウマくんは・・・」


 シエイラとエルマがため息をついている。

 いや、ため息をつきたいの僕なんですど!?


「え〜と・・・気持ちは嬉しいんだけど・・・なんでかな?」

「あなたのホームは素晴らしい。生活面、食事面、衛生面、どれも最高。」

「そうそう!それになんといっても私達よりも強い!!」


 僕がそう聞くと、キリアさんとオリビアさんがそう言った。

 強い?


「リョウマ。これは私もそうだったが、五剣姫はみんな自分よりも強い者を夫にしたいと思っていたんだ。」

「そうです師匠。その点、師匠はその上で優しいので、相手としては最高なんですよ。」


 グレイスとウルトがしみじみと頷きながらそう言った。

 なるほどねぇ・・・


「私は少し違います。」 


 カエラさんがそんな事を言うので、気になってカエラさんを見る。


「確かに今、グレイスやウルトが言った事もそうですし、オリビアやキリアの言う事も納得が出来ます。しかし、それ以上に、私はリョウマ殿の心根に心を打たれました。」


 心根・・・


「あなたは、自らの身を顧みず、この世界を救ってくれました。自分の目的の為だと口にはしていますが、それでも、ヴァリスを倒した時の言葉に嘘は感じられません。あなたは自身が勇者である事を認めませんが、やはり、私にとっては勇者です。」


 ・・・なんだか照れくさいな・・・


「私は今まで、自身を王国最強だと思っていました。しかし、自らの目で確かめること無く、教会の手先となってしまった。ですが、あなたはその全てを跳ね除けて、まっすぐ突き進んでいった。そこがどうしようも無く胸に刺さってしまいました。」


 カエラさんは胸を抑えて目を閉じた。


「今は恋心の方が比重が多いと自分でも思います。でも、もし、これが愛情へと変化したら・・・その時はあなたを見習って、まっすぐに思いを伝えさせていただこうと思います。」


 僕の目をまっすぐに見て、そう告げた。


「・・・カエラさん。ありがとう。その時は、真正面から受け止めるよ。受け入れるかどうかはまたその時に。」

「はい!」


 カエラさんが笑顔で頷いた。


「・・・う〜ん・・・」

「オウカ、どうしたんですの?」

「いえ・・・龍馬はカエラさんみたいに真っ直ぐなタイプが、多分好きなのよね。」

「なるほど・・・確かにそうかもしれませんね。シエイラの時もそうでしたし。」

「たしかにそうでしたね。となると・・・」

「覚悟はした方がいいのかもしれないわね。」


 桜花と、エスメラルダ、リディア、シエイラ、エルマがそんな事を呟いていた。

 ・・・いや、実際そうなんだよね。

 僕は多分、正面からぶつかって来てくれる人が好きなんだと思う。

 どうしても、悪印象を持てない。


「なんにせよ、まずは行き来できるような術式の構築が必要かな。」

「そうね。私達が帰って、戻ってこれないじゃ話にならないわ。」

「そこは頑張ってもらわないとね。」

「龍馬さん、そこは創造神様に相談してみるのはどうでしょう?」


 桜花と話し合っていると、セレスがそう言った。

 相談か・・・ありかもしれないね。


「うん。そうしてみるよ。」

「はい。そうして下さい。何かいい手があるかもしれませんし。」


 そうして、打ち上げは夜更けまで続いた。

 とても楽しかった。

 またやれるよう頑張らないとね。

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