第329話 創造神(2)

「今なら聞かなかった事にしてやってもいい。もう一度問おう。貴様は創造神たる我に、管理者であり作り出したセレスに謝れと言うのか?」


 創造神様の言葉そのものに力があるように感じ、すぐに撤回したくなる。

 セレスが泣きそうな顔でこちらを見ている。

 そんな顔をさせちゃ駄目だ!

 僕はセレス達の夫になるんだ!

 男の役目は妻を守ることだ!

 

「・・・はい。僕の願いは変わりません。」

「ヴァリスを殺した程度でに乗ったか?我をどうにか出来ると思っているのか?貴様はそれほど身の程知らずだという事か?」

「いえ、あなたと戦えば僕は一瞬で塵になるでしょう。そんなことはわかっています。」

「では何故だ?」


 更に圧力が強くなる。

 膝が震える。

 脳がここにいるのを拒否したのか、視界がだんだんと狭くなる。

 歯を食いしばれ!

 気合を入れろ!!


 誰が相手でも僕はみんなを守るんだ!!


「僕はセレスの夫になる!なら、セレスが傷ついたのであれば守るのは僕の役目だ!たとえ敵わなくても、だからこそ立ち向かわなくてはいけない!!間違った事を間違ったままに出来ない!それはあなたが相手であってもだ!!」


 僕は叫んだ!

 これで殺されるかもしれない。

 みんなは許してくれないだろう。

 でも、それでも、僕はセレスが傷ついたままにしておけないんだ!


 創造神様は僕をじっと見つめている。

 セレスは涙を流しながらこちらを見ていた。

 僕は創造神様から目を逸らさない。

 逸らしてやるもんか!


 殺されるなら、その瞬間まで目を逸らさずにいてやる!!


 ふっと圧力が弱まる。

 僕は一気に力が抜けて膝をついてしまった。


「龍馬さん!!」


 セレスが駆け寄って僕を抱きしめる。

 

「ふぅ・・・驚いたよ。まさかここまで強情とはね。」


 創造神様が、最初の時のように笑顔でそう言った。

 

「とはいえ、龍馬くんの言ったことは正しいだろうね。」


 そう言って、創造神様は居住まいを正した。


「セレス。辛い思いをさせて申し訳なかった。我があやまっていたのを認めよう。すまなかった。」


 創造神様は、陽気な雰囲気を消し、威厳ある姿で、セレスに頭を下げ、謝罪した。

 その姿は真摯に謝っているようにしか見えなかった。

 セレスは唖然とした後、涙をこらえながら創造神様に向き直り、


「はい・・・辛かったです。長い間封印され、力を抜かれ、苦痛も与えられました。正直に申し上げれば、創造神様を恨んだ事もあります。ですが、そのおかげで龍馬さんと会えました。ですから、もうお気になさらなくても結構です。頭をお上げ下さい。謝罪は受け取りました。」


 そう言って微笑んだ。

 創造神様は頭を上げ苦笑した。

 もう、雰囲気は最初と同じだ。


「はっきり言うね。まさかセレスにそこまで言われるとは思わなかったよ。」


 すると、セレスは少しイタズラな微笑みに変えた。


「夫になろうとした龍馬さんが、私の為に頑張ってくれたのです。妻となる私も、受け止めなくてはいけないと思いましたので、本音でお話させて頂きました。」


 セレスはそう言って僕をまた抱きしめた。

 

「やれやれ、すっかり奥さんの顔だね。なんだか羨ましくなったよ。神の座について初めて感じる感情だな!」


 創造神様は笑ってそう言った。

 良かった・・・セレスはこれでもう大丈夫かな・・・


 僕も立てるようになったので立ち上がる。

 すると、創造神様は、僕にこんな事を言った。


「さて、龍馬くん。君の願いは叶えた・・・と、言いたい所だけど、これは僕が僕の責任でやらなきゃいけない事だった。だから、それは願い言うより、それに気づかせてくれたと思っておくよ。だから今度は僕のお願いだ。どうか願いを叶えさせて欲しい。」


 創造神様・・・やっぱり善性だったか。

 さっきのは試したんだな・・・


「当たりだよ。君がどんな子か、もうちょっと知りたかったんだ。しかし、それでまさかあんなカウンター貰うとは思わなかったけどね。でも、気づかせてくれてありがとう。」


 そう言って貰えて良かった。

 さて、願いか・・・あ!じゃああれで行こう!!

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