第322話 セレスの今後

 は?

 今なんて言ったの?


「・・・桜花さん、そこからは私から話します。」


 セレス様が真っ赤な顔で僕を見た。


「その・・・皆さんにはすでにお話していたのですが、私は龍馬さんに惹かれていました。そのきれいな心持ち・・・言わば、魂の輝きに、です。しかし、私は管理者です。今までそんな経験はありません。初めて感じる感情に、はじめは結論が出せませんでした。」


 セレス様が僕をじっと見る。


「でも、みなさんと過ごす内に、この惹かれているのは恋心だと気づきました。最初は秘めていようと思ったのです。ですが、最後の戦いを前に、この気持ちはもっと深い・・・男女としての愛情だと気づいたのです。私は戸惑いましたが、それでも、桜花さん達は、私を見守ってくれました。そして、最後、覚えていますか?私があなたに口づけをしたのを。」


 勿論覚えている。

 忘れられないよ。


「・・・あれは、私なりに覚悟を決めたものでした。戦いを終えた後、あなたに想いを告げようと。」


 セレス様が僕に微笑んだ。


「龍馬さん。私はあなたを愛しています。その為であれば存在理由がかけられるほどに。」


 セレス様が・・・僕を・・・


「戦いを終えた後、あなたを迎えに行きました。そして、戦いきって倒れ伏したあなたを見て、つい、言葉として出てしまったのです。映像を世界に写しているのを忘れてしまう位に思わず・・・」


 な・・・なるほど?


「そのせいで世界は少し混乱してしまいました。何せその直前に、女神セレスとして、各国の王達と共に呼びかけた後でしたので。」


 セレス様は恥ずかしそうにしている。

 そりゃ、女神様が一人の人間を好きだといえば混乱するよね・・・


「龍馬さん。私は先程言った通り、自分の存在理由をかけられます。どうか、私を受け入れていただけませんか?」


 そう言って、セレス様は頭を下げた。


 そっか・・・あのキスにはそんな想いがあったのか。

 僕は考える。

 僕の気持ちがどこにあるのかを。

 セレス様・・・この世界の管理者。

 そして、桜花の恩人であり、僕の恩人でもある。

 最初はジードから話を聞いただけだったから、可哀想だと思ってた。

 そして、桜花の恩人だと知って、絶対に助けたいに変わった。

 実際にセレス様を知ってみると、とても優しくて、魅力的な人だった。

 みんなで遊びに行った時には楽しかった。

 また行きたいと思った。

 その中には、セレス様も居て欲しい。

 笑顔が輝いていたから。

 

 セレス様は初めての感情だと言った。

 今まで一生懸命世界の管理をして来たし、ヴァリスに封印されていたから、そういった事には無縁だったのかな?

 だとしたら、もっと楽しんで欲しい。

 笑って欲しい。

 生きる事、存在する事の面白さを知って欲しい。

 幸せになって欲しい。

 

 そうか。

 僕はとっくにセレス様のことが好きだったんだな。

 なら、答えは決まっている。


 僕は桜花達を見る。

 みんなも僕を笑顔で見ていた。


 セレス様はずっと頭を下げている。


「セレス様。頭を上げて下さい。」


 セレス様は頭を上げて僕を見た。

 その瞳には不安そうな色が浮かんでいる。

 怖くて心を読めなかったのかな。

 だったら安心させてあげないと!


「考えました。僕の答えは一つです。あなたも楽しんで下さい。共に生きることを。それが条件です。僕もあなたが好きです。どうか一緒に居て下さい。」


 僕はそうセレス様に告げた。

 セレス様は最初、ほうけるように目を丸くしたけれど、すぐに涙を溢れさえた。


「ありがとう・・・ございます。」

「うわーん!セレス様!良かったのです!!」

「そうですわ!これでもっと仲良くできますわね!!」


 メイちゃんがセレス様に飛びついて、エスメラルダが笑顔でそう言った。

 みんなも笑顔でセレス様に寄り添っている。


「お礼は入りませんよ。だって僕も好きなんだから。・・・みんなにはちょっと悪いかもしれないけど・・・」

「悪くないわよ。私達だってセレス様と一緒にいられて嬉しいもの。みんなで仲良くしましょう?」


 桜花が僕の頭をくしゃくしゃに撫でながらそう言った。

 そして、セレス様の方を見た。


「セレス様。であれば・・・」


 セレス様は涙を拭いて、


「ええ。わかっています。創造神様に決定した事を伝えてきます。」


 ん?

 何を?


 僕が疑問で思っていると、桜花が、


「セレス様さ。さっき存在理由をかけるって言ってたでしょう?あれね、本当にかけていたのよ?」


 どういう事?


「龍馬が寝ている間に、セレス様は創造神様に会いに行ってね、事の顛末を話して来たのよ。そして、管理者でありながら、龍馬個人の事を愛してしまったから、管理者から外して欲しいって直訴したの。」

「ええ!?」


 そんな事をしていたの?


「でも、セレス様は管理者として生み出されたでしょう?だから、もしかしたら、訴えは届かないかもしれなかった。幸い、ヴァリスを任命した創造神様が、セレス様への謝罪代わりに、お願いを受け入れてくれたんだけど、それには条件があったの。」

「条件?」

「そう。一つは、代わりの管理者を推薦すること。これにはジードさんとシルヴァさん達が名乗り出てくれたから良かったの。創造神様との顔合わせももう終わっているわ。」

「そうか・・・ジードが・・・」


 適任かもしれないね。

 実力者だし、優しいし。

 サポートも奥さん達がばっちりしてくれるだろうし。


「もう一つは、龍馬に気持ちを受け入れて貰うことよ。そして、3つ目の条件をクリアした時、それが叶ったら、管理者を外れ、定命の者として生きる権利を貰える事になったの。」


 そっか・・・

 ん?

 最後の条件は?


「最後の条件、それは、2つ目の条件をクリアした時、創造神様の所に、龍馬と共に報告に来ること。これが3つ目よ。だからあってないようなものよ。あなたの事だから行くでしょ?」

「決まってるじゃないか。」


 当然行くよ。

 ようは、親への挨拶みたいなものでしょう?

 そりゃ責任は果たさないとね。


「と、言うことで、動けるようになったら、創造神様の所に行ってらっしゃい。」

「龍馬さん。お願いしますね。」

「勿論いいよ!!」

「それと、これを機に、私の事はみなさんセレスと呼んで下さい。」

「も、勿論いい・・・よ?」


 こうして、僕の婚約者にセレス様・・・セレスが加わる事になった。

 ・・・ぜひ、これで最後にしたい。

 最後になるよね?

 最後になるかなぁ・・・

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