第321話 目が覚めて

 ここは・・・

 室内を見渡す。

 どうやらホームまで戻って来れたようだ。


 身体を起こそうとすると・・・動かない。

 あーまたか〜

 でも、今回は仕方がないか。

 限界まで力を使ったからなぁ。


 そういえば、みんなは無事だったんだろうか。

 その辺りは確認する前に気絶しちゃったからな。

 

「・・・誰かいる〜?」


 少し大きな声を出してみる。

 誰か来るかな?


 ・・・来ない?

 出かけているのかな。


 仕方が無い。

 もう少し寝ようとして目を閉じる。

 ドタドタドタ!!


 ん?

 足音が・・・


「龍馬!!」

「リョウマさん!!」

「目が覚めたのか!?」

「身体は大丈夫ですか!?」


 みんながなだれ込んで来た。

 

「大丈夫か?ボロぞーきんみたいだったから心配してたんだぜ?」

「お兄ちゃん痛いところはありますか?」

「無理しちゃ駄目よリョウマくん。ちゃんと言って。」

「そうですわ!」

「リョウマさん!どうなんですか?」


 うん、みんな無事だったようだね。


「ほらほら、皆様、御主人様はまだ病み上がりですよ。」

「お静かにしましょう。でも、無事で良かったです。」


 ルーさんとアナも元気そうだ。


「龍馬、ヴァリスを見事倒したな。そしてお前が無事で良かった。」

「そうだぜ?こうみえてジードは心配していたからな!」

「そうだな。いつもそわそわとしていた。」

「ジード様にしては珍しい姿でしたね。

「うふふ。ちょっと可愛かったわ。」


 ジードやシルヴァさん達も大丈夫そうだな。


「龍馬さん・・・大変お疲れさまでした。よく頑張りましたね。」


 奥からセレス様が出てきた。

 そうだ・・・お礼言わなきゃ。


「セレス様、ありがとうございました。あなたの言葉が無ければ、ヴァリスを倒した後に気絶していました。危ないところでした。」


 僕がそうお礼を言うと、セレス様はにっこり笑って、


「お礼を言うのはこちらの方ですよ。ヴァリスを倒してくれてありがとうございました。この世界の管理者としてお礼を申し上げます。」


 お辞儀をしたんだ。


「頭を上げて下さい。僕は僕の目的もあってヴァリスを討伐したんです。この世界のためではないです。」


 僕がそう言うと、みんながにやにやと笑っている。

 何だろう?

 リディアが一歩前に出た。

 そして、片手を胸にあて、もう片方の手を伸ばして、劇をするかのようなポーズを取る。


「この世界はお前の遊び場なんかじゃない!!この世界はこの世界に生きる人達のものだ!!みんな必死に生きているんだ!お前のような奴のおもちゃじゃない!!お前のような簒奪者さんだつしゃは居ちゃいけないんだ!!みんなの・・・僕の大好きな人達の為にも、この世界から消えて無くなれ!!!!」


 ・・・それって僕がヴァリスに言ったセリフ!?

 え!?まさかみんな見てたの!?

 ううう・・・恥ずかしい。


「照れなくてもいいじゃない。それだけみんなの事を考えてたって事でしょう?そんな風に、気にしないようにさせるために誤魔化す必要は無いわよ。」


 桜花がそう言って僕の背中をポンッと叩く。

 そりゃそうだけど・・・恥ずかしいものは恥ずかしい。

 きっちりバレてるし。

 ん?

 ちょっと待てよ?


「ね、ねぇ。ちょっと気になったんだけど、それって見てたのは桜花達だけなんだよね?」


 みんな一斉に目を逸らした。

 え・・・まさか・・・


「あーそのな。言いにくいのだが、お前たちの闘いは、我とセレスが協力して映し出してだな。・・・全世界に・・・」

「いや〜〜〜〜〜!!!」


 僕は絶叫する。

 

「聞きたくない。聞きたくない。聞きたくない!!」


 僕は目を閉じ耳を塞ぐ。

 あ・・・身体動いた。

 

「まあまあ・・・その・・・良かったじゃない。みんなに、あなたがどれだけこの世界の事・・・私達の事を想っているか分かってもらえたんだから。」


 苦笑しながら桜花が言う。

 ・・・まぁ、恥ずかしいだけだから良いけど・・・でもやっぱり恥ずかしいなぁ。


「それよりも、その事でちょっと困った事になっちゃってね。」


 困った事?

 なんだろう。

 

「それは・・・セレス様がね、あなたを迎えに行ったじゃない?」

「うん。そうなんだね。」


 そう言えば、最後抱き起こされたような・・・


「その時にさ・・・言っちゃったんだよ。覚えてる?」

「いや・・・意識が朦朧としてたから・・・」


 セレス様を見ると、顔を真っ赤にしている。

 え・・・なんて言ったの?


「その・・・さ。『それでこそ私が好きになった初めての人です。』って。」


 はっ?

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