第315話 VSヴァリス(4)

 僕の目の前にいるヴァリスは、怒り心頭といった表情でこちらを見ている。

 よしよし、してやったりだ。


 僕もコイツに思うところはいっぱいあったからね。


 ジートを殺したのも気に入らない。

 セレス様を封印したのも許せない。

 黒瀬に好き放題させていたのも腹が立つ。

 桜花を巻き込んだのは特に立腹だ。

 

 僕は聖人君主じゃない。

 勇者でもない。

 僕は今回の戦いで、こいつを絶望に叩き落としてやる事を誓っている。

 ただの個人として、僕の怒りをぶつける!!

 何一つこいつを喜ばせるような状況にしてやるもんか!


「・・・貴様は絶対に許せん。もういい。もうどうなろうが知ったことか!今までの研究成果を見せてやる!」


 ヴァリスは注射器を取り出して、自分の首筋にナニカを打ち込んだ。

 一瞬ヴァリスの身体が痙攣する。


 何を打ったのか知らない。

 でも、弱くなる事は無いだろう。

 それでいい。

 全部手を尽くせ。


 僕はそれを全部打ち砕いてやる!!

 

 ヴァリスは項垂れている。

 だけど・・・


 ドクン・・・ドクン・・・ドクン


 ヴァリスの鼓動がこちらにまで聞こえる。

 鼓動が刷る度に、ヴァリスの身体が痙攣している。


 ドクン!!

 

 一際大きな鼓動がした。

 その瞬間、ヴァリスの身体は一気に膨れ上がった。

 着ている服も弾け飛ぶ。

 男の裸なんて見たくないのに・・・

 しかし、ヴァリスはみるみる内に、その姿を変容させていく。

 今は全身に鱗の様なものが浮き出て来ていた。


「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」


 これは・・・黒瀬の時に起きたのと同じ現象かな?

 ヴァリスの力が大きくなっていく。

 肌でわかる。


 この巨大さはジードに届くかもしれない。

 でも、知ったことか!

 僕はこの力を超えてやる!!


「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!」


 ヴァリスが咆哮を上げた。

 来る!!


 ヴァリスは飛びかかって来た。

 速っ!!

 僕は飛び退く。

 しかし、ヴァリスは空中で方向転換し、僕の方に来た。


 大きく腕を振りかぶる。

 その腕は既に膨れ上がり、ゴツゴツした鱗に覆われ、爪も伸びて鋭利になっていてた。


「GAAAAAAAAAAAAA!!」


 叫び声をあげながら腕を振り下ろす。

 ギリギリで躱して反撃を・・・まずい!!

 ヴァリスの爪と爪の間から、何か力を感じて大きく躱す。


 すると、ヴァリスが腕を振るった跡の空間に、線上跡が残っていた。

 なんだ!?

 僕はストレージから木刀を取り出し、その線に向かって投げつける。

 すると、木刀は線に当たった所から両断されていた。


 空間を切っている!?

 そして、その跡が残る・・・か。

 厄介だ。


「AAAAAAAAAAA!!」


 ヴァリスはむちゃくちゃに腕を振り回している。

 どうやら、ヴァリス自身の理性は無くなっているようだね。

 ・・・本能だけなら戦い易いけれど・・・これじゃ絶望させられないじゃん。

 取り敢えず、距離を取るか。


 僕は空を飛んで距離を取った。

 いつまでもやられっぱなしと思うなよ!!


「くらえ!!『対神砲ブリューナク』!!」


 僕の腕に魔法陣がいくつも纏わり付く。

 そして、光の砲撃が飛び出す。


「GAAAAAAAAA!!」


 ヴァリスに直撃した・・・何!?

 光の柱が収まると、ヴァリスはほぼ無傷の状態で姿を表す。

 ノーダメージって事は無いだろうけれど・・・かなり頑丈だな。

 ん?何だ!?


 ヴァリスが口を大きく開け、を溜めている。

 ブレスか!?

 範囲がどれだけかわからない。

 躱すよりも防いだ方がいい!!


「対神防御『イージス』!!」


 僕は両手を交差させ、眼前に巨大な魔法陣を生み出す。

 その瞬間、ヴァリスの口から、凄まじ良い力の本流が飛び出してきた。


 衝撃。

 押されている!? 


「ぐぅぅうぅ!!」


 耐えきれたか・・・

 ほっとしたのも束の間、ヴァリスは二撃目を放とうとしていた。

 連射出来るの!?

 させるか!!


 僕は大口を開けているヴァリスの口を目掛けて魔法を放つ。


「対神魔法『ロンギヌス』!!」


 腕をヴァリスに向ける。

 手甲に刻まれた刻印に沿って魔力が流れ、魔法が発動する。

 巨大な光の槍が現れヴァリス目掛けて放たれた。


 槍は正確にヴァリスの口に中に飛び込む。

 ヴァリスが集めた球体になっているエネルギーの塊に刺さり、大爆した。


「GYOOOOOOOOOOOOOOOOO!?」


 これにはヴァリスもダメージを受けた様で、顔を振っている。

 顔にはドス黒い血液状のものが飛び散っており、顎が無くなっていた。


 よし!!・・・ん!?


 見る見る内に顎が再生していく。

 再生持ちか・・・それも超速の。


 ヴァリスはまだ叫んでいる。


「AAAAAAAAAAああああああぁぁぁ・・・ぐっ!」


 む!?


「く・・・どうやら意識を無くしていたようだな。」


 理性が戻ったかのか?

 これで戦略も使って来るだろうけど・・・代わりに絶望もさせられるね。

 僕は再度気合を入れる。

 ここからが本番だ!!

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