第313話 VS神の人形(7)side桜花

 今相対しているのは、人形共の親玉らしい。

 他の4体よりも強い力を感じるわね。


 正直、まだ私よりもシルヴァさんや先輩の方が強いと思う。

 でも、あのジードさんの奥さんたちは、みな口を揃えて、


「今代の勇者はお前だ。そして中核であるリョウマの正妻でもある。なら、お前がアタシ達の代表であるべきだ。」


と言うので、私が敵のリーダー格と戦うことにしたの。


「己が分を弁えず我々に挑むとは・・・やはり地上の生物は堕落したようだ。一掃しようとおっしゃられる主様は正しい。私に課せられた任務はお前達を一人残らず殺すことだ。神の命に従ってく死ね。」


 こいつらはどこまで傲慢なのかしら。

 

「やっぱり作った人に似たのかしら、傲慢な性格もそっくりね。あなたのご主人さまに。」

「ふん!傲慢と言うのは不遜な物言いではあるが、主様に似ているのは当然だ。至高の存在から作られた至高の従者なのだからな。」

 

 人形は満更でもなさそうにそう言う。

 私は大げさにため息をつく。


「馬鹿ね。私は傲慢な性格、と言ったのよ。他にも似ているわよ。短絡的、妄信的、自信過剰、我儘・・・上げればキリが無いわね。」


 私の言葉に人形は憤怒の表情に変えた。

 随分と表情豊かな人形だこと。


「・・・私のみならず主様をも愚弄するとは・・・簡単には殺しはせんぞ。必ず後悔させてやる。死を願うまでな!」

「ほら、まだあったわね。残虐。なんでも良いけどさっさと終わらせましょう?他はもう始めているのだから。」

「言われずとも!!」


 人形の武器は・・・槍か。

 そしてあの槍・・・ちょっと危険な気がするわね。


「起きなさい。雪」

『はい、桜花。』


 私は聖剣雪月花を顕現させる。

 敵は最強の人形。

 敵の武器は得体のしれない力を持つ槍。

 相手にとって不足は無い。


「廻里流剣術師範代 廻里桜花。参る!!」


 私は身体強化を全開にさせて駆け出す。

 相手は槍、その間合いは私の数倍。

 でも、近づいてしまえば・・・


 私は人形の槍の間合いに踏み込む。


「シィ!!」


 人形は凄まじい勢いの突きを放ってきた。

 でも、ただ速いだけなら私には通じない!


 私は半身になって刀で逸らし、その場で回転、遠心力を乗せて横薙ぎする。


「廻里流『流転』!!」


 人形はすぐに槍を引き戻し、そのまま防ぐ。

 そして槍を跳ね上げて石突で私の顎を狙って来た。

 私は顔を傾けて躱す。

 隙あり!


 更に一歩踏み込み剣の間合いへ・・・!?


 人形は石突を跳ね上げた勢いのまま槍を回転させ、すぐさま突きが放てる体勢になっていた。

 そして、そのまま突きを打つ。

 隙きの少ない良い突きだ。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 


 そのまま連続で突いてくる人形。

 速い!!

 それに反撃できない!

 それなら!!


 私は大きくサイドステップし、槍を持つ手を狙う。

 しかし、人形は槍を回転させ上手く手が狙えない。

 仕切り直そうと一歩下がった瞬間、人形は槍を横薙ぎしてきた。

 くっ!?間合いが広い!!


 私は大きくバックステップして距離を取る。

 

「馬鹿め!はぁぁぁぁぁ!!」


 人形は槍を頭上に掲げ、回転させる。

 槍に魔力と気が籠もっていくのがわかる。


「ふん!!!『旋刃』!!」


 槍による魔力が籠もった斬撃刃が、多数高速で飛んでくる。

 速いわね!!


 私は避けようとして・・・まずいわ!当たる!!

 横っ飛びで避けたが躱しきれずいくつか切創を負う。


 まずいわね。

 止めなきゃ!!


 回転を止める為、前に出て槍と刀を打ち合わせた。

 いくつか切創を負ったけど、槍を上手く弾けた!

 私は前に突っ込み突きを放とうとした。


 しかし、人形はまたしても、弾かれた勢いのまま槍を縦に回転させ、刃先で私の顔を切り裂こうとする。

 ちぃっ!!


 私はまた距離をとった。

 こいつ・・・だてにリーダーやってないわね。


「くくく。どうした?防戦一方ではないか。」

「・・・」


 予想以上に強いわ。

 でも、負けていられないのよ!!

 私は聖剣による力の増幅をする。

 人形は私を見てピクリと眉を動かし、そのままニヤリと笑った。


「ほう。同じ様な力を使うか。」


 人形の圧力が増してる!?

 ・・・あの槍から力が流れ込んでいるのがわかった。

 これは・・・苦戦しそうね。

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