第293話 息抜き(2)

 僕たちは大人数でアルメスの街に出る。

 服装は完全に街服だ。


 街行く人が、僕達をすごい目で見てくる。

 ・・・正確に言うと、僕を、だ。


「あいつなんだよ!綺麗どころばっかり何人連れてんだ!!」

「お、おい!止めろよ!あいつ『黒衣の天災』だぞ!』」

「え?・・・あの貴族潰しの・・・か?」

「そうだ!にしても、噂に違わぬ女好きなんだな・・・あんなの王とかじゃないと無理なんじゃねぇか?」

「流石はSランク冒険者って事か・・・にしても」

「ああ・・・」

「「ムカつく!」」


 ・・・なんて噂だ。

 僕が女好き?

 そんなわけないのに・・・


 僕ががっくり来ていると、みんなはそれを見てクスクス笑っている。


「女好きだってさ。」


 桜花が僕の脇をグリグリしてくる。

 

「やめてよ・・・ていうか、今もだけど、みんながこうやってくっついて来るからそんな風に思われてんじゃないの?」

「なによ。嫌なの?」

「・・・嫌じゃないです。」


 それで、またみんな笑っている。

 今の状態は、僕の右隣で腕を絡めているのが桜花、左側で腕を取っているのが、じゃんけんで勝ったリディア、背中にはメイちゃんが張り付いている・・・というかしがみついている。

 そして、10分位ずつで、交代して腕を組んでいる。


 ・・・その中には、カエラさんやキリアさん達もいた。

 ・・・なんで?


 カエラさんは、「べ、別に私は・・・」と言っていたのに、シエイラとエルマが面白がって「まあまあ」と言って押し付けられ、押し切られていた。


 また交代の時間が来る。

 もうなんでも良いよ。

 次は誰?


「さて、次はセレス様が右側ですよ。」

 

 桜花がそんな事を言った。


「えっ?私もですか!?」

「勿論ですよ。恋人気分を味わって下さい。」

「い、いえ、龍馬さんに悪いですし・・・」


 何セレス様まで巻き込んでんだよ・・・

 まぁでも、セレス様良い方だし、役得ではあるかな。


「でも・・・」

「セレス様、心を読んで下さいよ。ここまで来たら、恥ずかしいとか関係ないです。セレス様綺麗だし、僕は役得としか思っていません。そりゃ僕じゃ役不足かもしれませんが・・・」

「そんなことありません!」

「いっ!?」


 セレス様が大きな声で否定する。

 ・・・ちょっとびっくりした。


「ご、ごめんなさい。永らく生きてきましたが、こんな経験初めてで・・・」


 ・・・やっぱり可愛いなこの人。

 

「っ!!///」


 僕の思考を読んで赤面しているセレス様。

 僕はつい笑ってしまった。


「でしたら、僕ではご不満かもしれませんが、是非一度経験して見て下さい。」

「はい。お言葉に甘えます。」


 セレス様はそっと僕の腕に手を絡ませる。

 ・・・やばい・・・ドキドキする・・・

 痛っ!?

 桜花がお尻を抓ってきた。


「龍馬・・・デレデレしすぎ。」

「しょうがないじゃないか!?セレス様は魅力的すぎるんだよ!!」


 痛っ!?

 増えた!?


「リョウマさん・・・私の時にはそこまでドキドキしてなかった癖に。」

「リョウマ、私達にもドキドキしろ。」

「そうだぜリョウマ!セレス様だけに照れやがって!」

「メイが背中に張り付いても変わらなかったのです!」

「リョウマさん・・・これは後でお仕置きですね。」

「そうねぇ・・・リョウマくん、覚悟しておいてね。」

「リョウマ様・・・わたくし悲しいですわ。」

「リョウマ様・・・私もです。」

「ご主人さまったらいけない人ですね。これは、罪滅ぼしをして頂かなければいけませんね。主に夜に。」

「ご主人さま、誠心誠意お相手させて頂きます。」


 全員かい!!

 痛いはずだよまったく。

 お尻だけじゃなくて、背中まで抓ってるじゃん!

 というか夜の罪滅ぼしとか、お相手とか・・・

 しません!


「本当にモテモテですね・・・」

「う〜ん、でも、お金持ってて、才能あって、私達より強くて、優しいし、あの住み良い家を持つ。わかるかも。」

「私はいずれ住む。」


 カエラさん達からそんな声が聞こえてくる。

 というかキリアさん、どさくさで何いってんの?


「師匠・・・いつの間にセレス様まで・・・」

「リョウマ・・・神様まで・・・」


 ウルトもガーベラまで何言ってんのさ!?

 僕にそんなつもりはありません!!

 ていうかみんなにもだけど、一回も自分から口説いた事ないんだけど!?


「ふふ・・・うふふふ・・・」


 ふと、笑い声が聞こえる。

 そちらを見ると、セレス様が笑っていた。

 セレス様と目が合う。


「ごめんなさい。笑ってしまって。でも、楽しいというのはこういう気分なのですね。みなさんといるのはとても楽しい・・・龍馬さんの近くにみなさんが居たいという気持ちが分かりました。なるほど・・・これが・・・」


 そんなセレス様をみんなは、優しい目で見ていた。


「答えは出たかしら?」


 桜花がセレス様にそんな事を聞く。

 何のこと?

 セレス様はにっこり笑って、


「ええ、桜花さん。全てが終わったら・・・」

「そう・・・」


 二人は笑顔で微笑みあった。

 リディア達も微笑んでいる。

 ・・・僕だけ置いていかれている・・・


 この日、みんなでとても楽しく過ごした。

 ・・・変な事はしてないぞ。

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