第294話 各国の王との顔合わせ

 みんなで遊びに行った翌日からは、また、修行に励む。

 みんなもどんどん実力を伸ばしている。

 カエラさん達や、ガーベラもとても強くなった。


 特に、桜花の伸びは凄い。

 流石は勇者ってことかな。


 そして、ついに・・・


「こうしてお会いするのは初めてですね。桜花の聖剣の雪月花・・・雪と呼んで下さい。」


 可愛らしい女の子がお辞儀をしている。

 そう、ついに擬人化したんだ。


 真っ白い髪をツンテール、小柄な体躯。

 年齢は人間で言えば、中学生位だろうか。

 最初、桜花もみんなも、勿論僕も戸惑っていたけれど、今は打ち解けている。

 

 みんな、雪の可愛さにやられている感じだ。

 ただし、この子は結構イタズラっ子だ。

 この間も、僕の入浴中に突撃してきた歴がある。


「雪は、聖剣なので、セーフです。」


 アウトォ!!

 雪は僕の叫び声で気づいた桜花が連れていき説教された。


 

 そんなこんなで、また10日が経過した。

 今日は、ジードとセレス様と、ディバイドさん達が顔を合わせる事になっている。


 黒猫会を開く事になったんだ。

 

「お初にお目にかかる。セレスティア王国国王ディバイド・クレスト・ベン・ハー・セレスティアと申す。」

「お顔を拝見させて頂くのは初めてでございますね。セモス小国女王アネモネ・クレイ・ディア・ネモスでございます。」

「失礼致します。ネメ共和国大統領セルヴァン・アンタレスです。」

「では、儂もご挨拶させていただこう。火の元の国の王ツカサ・カドタニと申す。以後、よしなに願いまする。」


 王の四人が片膝をついてセレス様とジードに挨拶している。


「どうぞ楽になさって下さい。私は管理者のセレスです。どうか気を使われずに。」

「同じく、魔族のジードだ。我にもそこまで気を使う必要は無い。王が簡単に頭を垂れてはいかぬぞ。」


 こんな感じで始まった。

 少し硬いかな〜と思っていると、


「ジード殿!お久しぶりだ!エルフ族のエヴァンテスだ。わかりますかな?」

「おお、あのエルフ族の小僧か!老けたな!」

「ジード殿が変わらなすぎなのだ。壮健そうで良かった。あの時は、助けられずに申しわけなかった。」 

「それは我も同じであるな。ジード殿、エルフ族の長老と同じく詫びよう。申しわけない。」

「おお、グレイガルムか!久しいな!二人共気にするな!見ての通り龍馬達に助けて貰ったからな!セレスも同じくだ!」

「二人共お久しぶりですね。元気そうで何よりです。」


 おお・・・なんか同窓会みたい?

 その空気に当てられてか、ようやく空気が弛緩した感じがする。


 お偉いさん同士で歓談していた。


 アルザードさんとジラートさんが隅で固まっているので、話しかけてみよう。


「アルザードさん、ジラートさん、どうしたの?」

「どうしたもこうしたもあるか!各国の王と懇意にしているだけでもいっぱいいっぱいだったのに、次は伝説の魔神に、女神様だと!?リョウマ・・・私はもう限界だ・・・」

「まったくだ・・・シエイラも大変な奴に惚れたもんだ・・・」


 そんなに気にすることないのに。


「お前みたいにクソ度胸なら良かったんだが・・・はぁ〜・・・つくづく規格外な奴だお前は。」


 呆れたようにそんな事を言われた。


「アルザード殿、その意見には賛成ですね。」

「おお!マサオミ殿!分かって頂けるか!」

「はい、リョウマはおかしい!」

「ちょっと!?いきなりディスるのやめてよ!?」


 そんな感じで居ると、カエラさん達もまた固まっているのが見えた。

 こっちは何?


「カエラさん、どうしたの?」

「・・・いえ、自分の中の常識が崩れ去って行く音が聞こえまして・・・」

「大げさな。」

「大げさではありません!我が国の王に、隣国の王と女王、大統領、それに王竜ですって!?意味がわかりません!」

「まあまあ落ち着いて。」

「誰のせいですか!!誰の!!」


 少なくとも、僕のせいではありません。


「まぁ、カエラさん達もすぐに慣れるよ。リディア達もそうだったから。」


 そう僕が言うと、カエラさんはちょっと頬を赤く染めて、


「そ、そうですね。いずれは・・・慣れるでしょうね・・・それまで、一緒に居てくださいます?」


と言った。

 カエラさん達はもう、黒猫会のメンバーだしね。


「ん?別にいいよ。」

「あー!カエラ様抜け駆け!!」

「ん。ズルい。」


 オリビアさんとキリアさんがそんな事を言っている。

 抜け駆け?


「ち、違います!そんなつもりでは・・・」

「え〜?じゃあ、どんなつもり?」

「きりきりと吐く。」


 ん〜なんか危険な気がするから立ち去ろう。

 僕は他の人の所に行く。


 その時、後ろから肩を掴まれた。

 僕が振り向くと、そこにはセルマさんが居た。

 いつにも増して、真面目な表情をいている。


「リョウマくん。もうすぐヴァリスとの決戦なのよね?ぶっちゃけどうなの?」

「そうですね・・・勝率はそんなに悪くはないと思います。あいつは多分、追って来れないと思っているはず。奇襲で一気に決めようと思います。」

「そう・・・ねぇ、リョウマくん。本当に全部終わるまで、エルマ達に手を出さないつもりかしら?」

「え?そのつもりですけど・・・」

「・・・ねぇリョウマくん。これは下世話な話じゃなくて、老婆心からだから聞いておいて。男も女もね、抱くことによってお互いに本当に気持ちが通じ合う、と私は思うの。」

「な、なんですかいきなり!」

「真面目に聞いて。抱け、とは言わない。決めるのはリョウマくんだから。でもね、ちょっと考えて見て。今でさえ好きなのに、抱いたらもっと気持ちが高まるのよ?それはあなたの力に、みんなの力になると思わないかしら?」

「それは・・・」

「あなたは、とても真面目、そして誠実だと思う。でもね、今度の戦いは世界を救えるかどうかまでかかっているの。少しでも折れない為にも、絆をもっと育んでも良いと、私は思う。」

「・・・」

「まだ、時間があるから考えてみて。」


 そう言ってセルマさんは離れて行った。

 絆を育む・・・か・・・


「みんなちょっと良いかのう?」


 僕が考えこんでいると、ディバイドさんがみんなを集めた。

 なんだろう?

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