第287話 セレスの提案
「と、言っても、私は戦う力を持ちません。私にできるのは道を示すのみ。」
「道、ですか?」
「はい。まずは、場所を変えませんか?おそらく話し合いは時間を取るでしょう。」
「ええ、構いません。」
「では、レアル?あなたが今より、教皇と成って、民衆を導いて下さい。できますね?」
「神託とあらば身命を賭しましょう。」
「みなさん。レアルを支えてあげて下さい。」
「勿論でございます。」「はい!」
民衆もみんな感激に震えながら頷いた。
僕たちは、レーナの転移魔法で、ホームまで移動する。
疲れているレーナには申しわけないけれど、頑張ってもらった。
ホームに着くと、すぐに話し合いを始めようとしたけれど、セレス様が、
「急ぐ必要はあるでしょうが、今すぐにという必要もありません。取り敢えず、本日はみなさん疲れているでしょう。明日話し合いをしませんか?」
と言うので、お言葉に甘えることにした。
せいては事をし存じるって奴だね。
セレス様には個室で休んでもらうことになった。
客間はそのままカエラさん達が使う。
色々設備の説明を受けたセレス様は、
「凄いですね!流石は異世界の技術です。」
と、うきうきしていた。
・・・こうして見ると、ただの美人な女性なんだけどな〜
「あら、ありがとうございます。美人だなんて・・・」
えっ!?
心を読まれたの!?
「まがりなりにも、神と呼ばれていましたから」
ほえ〜
痛っ!?
「龍馬・・・あなたまさかセレス様にも手を出す気かしら?」
「手を出すって何!?誰にも手を出してないよ!?」
「少しは出しなさい。私達にはね。セレス様には駄目。」
いやいやいや。
まあ、それは置いておこう。
ちなみにルーさんやアナは、最初僕たちが新しい女性を連れてきたと思ったらしく、「お盛んですね。」とか言っていたけど、正体がセレス様だと知ると、目が点になり、続けて平伏していた。
セレス様が止めていたけれど。
食事、入浴を終え、翌日、居間で話し合いが行われた。
これには、通信石で各国の王様達にも繋いである。
セレス様がここにいるって言った時には、かなり驚かれたけど。
「さて、まず、ヴァリスがどこにいるか、からお話しましょう。」
セレス様によると、ヴァリスは亜空間にいるらしい事がわかった。
元々、ヴァリスはそっちの能力が優れていたため、直接的な管理がセレス様、ヴァリスは補助担当として、亜空間から補助していたらようだ。
ここに行くためには、鍵が必要になる。
そして、セレス様は、それをなんとか出来るらしいことがわかった。
続いて、今、ヴァリスが何をしているのか。
亜空間には、創造神がこの世界を作った時の装置が置いてあるらしい。
でも、これにはセレス様しかいじる権限が無いので、ヴァリスはいじれないらしい。
しかし、黒瀬の遺体を使用した中継機を作ることで、なんとかしようとしているとの事だ。
そして、ここからが重要で、ヴァリスは技師よりの感性をしており、集中し始めると、他のことを気にしなくなるらしい。
おそらく、今は、そっちに掛かりきりで、セレス様が封印を解いた事にすら気づいていないのではないかとの事だった。
ここからが提案のキモだ。
「まず、龍馬さんは、ジードくんの封印を解きましょう。」
「ジードの封印を、ですか?」
ていうかジードくんって呼ばれてたのか・・・
「はい、なぜなら、万が一、ヴァリスが先に装置を自由に出来たとしても、ジードくんがいれば、抗うことが出来るからです。彼はそれほどに強い。」
なるほど。
「そして、ヴァリスのいる異空間には私が扉を開きます。そこに行くのは・・・龍馬さんのみ。」
「えっ!?」
桜花やリディア達が驚いている。
「その・・・ジードさん?に行っていただく訳にはいけないのですか?」
「そうだよな。だって強いんだろ?」
シエイラとアイシャがそう言った。
みんなも頷いている。
でも・・・
「それはいけません。理由は・・・龍馬さん。」
「はい。説明します。駄目な理由、それは、ヴァリスを倒して僕が神気を取り込む必要があるから。」
「神気?何故それがいるのかしら?」
桜花が首を傾げている。
ちょっと可愛い。
じゃなくて!
「そう、帰るためには必要なんだ。僕自身がね。だから、ジードじゃ駄目なんだ。いくらジードが強くても、ね。」
僕がそう言うと、みんな納得してくれた。
「という訳で、亜空間には龍馬さんに行っていただきます。そしてみなさんはその間にして頂きたいことがあります。」
?
なんだろう?
「それは、おそらくですが、龍馬さんが亜空間に入ると、それに気づいたヴァリスが、他の方が入れないように、足止めのため、人形を差し向けて来るでしょうから、です。」
「人形・・・あの聖女のような・・・ですか?」
「ええ、そうです。数はそこまでいないでしょう。しかし、最低でも100体近くはいる筈です。」
「あれが100体・・・」
桜花とレーナとエスメラルダがごくりと息を飲む。
三人は直接戦っているからね。
「私の読みでは、ヴァリスが装置の稼働に漕ぎ着けるまで、おおむね一ヶ月程かかるでしょう。その間に、みなさんには、ジードくんと龍馬さんの特訓を受けて頂きたいのです。生き残る為に。」
なるほど。
それは名案だ。
みんなが強くなればそれだけ安全だからね。
「これが私の案です。いかがでしょうか?」
「「「「「「「「「「「意義無し!!」」」」」」」」」」」
満場一致で決を取れた・・・
『待って!!』
ん?ガーベラ?
『その特訓、私も参加したい!世界が無くなるかもしれない時に、何も出来ないなんて嫌!』
う〜ん・・・それは・・・
「ガーベラ。アネモネの許可は取りましたか?」
『そ、それは・・・』
「アネモネ、そこにいますね?」
『はい。セレス様。』
「ガーベラを認めてあげて下さい。」
『・・・何故でしょうか?』
「ガーベラは今、羽ばたこうとしています。確かに、立場はあるでしょう。しかし、ここで止めたら、一生心に傷が残るでしょう。あなたは、最愛の娘にそのような傷を残すことを許せますか?」
『・・・許せません。仰るとおりです。』
「大丈夫です。ジードくんと龍馬さんがいるのですから。微力ながら私も。」
『はい。よろしくお願いいたします。』
『やった!ありがとうございます、セレス様!!』
「ガーベラ。アネモネは貴方が心配なのです。それを裏切らぬよう、一生懸命努力するのですよ?」
『はい!』
おお、流石は神と言われる方だ・・・
これ、ガーベラだけじゃなくて、アネモネさんも救ってるよね。
心に傷が残るのは、ガーベラだけじゃなくて、その傷をつけることになったっていう事で、アネモネさんも同じように心の傷になるもんね。
凄いや・・・
「もっと褒めてくれていいのですよ?」
「だから、心を読まないでくださいよ本当に。」
「うふふ。」
この人(?)意外におちゃめなんだよね・・・僕に対しては何故か。
「龍馬・・・」
「リョウマさん・・・」
なんでか、女性陣の目線が痛い。
なんで?
そして話し合いは終わり、昼食後、ジードを復活させることになった。
ジード、いよいよだね!!
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