第288話 ジードの復活

 ジードを復活させるために、昼食後に庭に集まる。

 念の為、みんなには少し離れて貰って、僕は庭の中心に。

 

 セレス様には、結界を張って貰っていた。

 万が一、失敗して爆発、なんて事になったら大変だからね。


 目の前には黒水晶が6個ある。

 さて、やるか。


 まず、僕は自らにかけた封印を解き、100%力をふるえる状態にした。

 そして、ストレージから取り出した、ジードの細胞から作り出した依代に、黒水晶を埋め込む。


 この依代・・・作るのに本当に苦労したんだよね。

 

 まだ、ジードと一緒にいる時に、細胞の概念をジードに伝え、「もし、ジードを蘇らせる事が出来るとすれば」という前提に話を進め、合作で作ったんだけど・・・そもそもジードの細胞が無い!

 

 どうしたものかと思っていたんだけど、ジードが取り出した、自分を殺した聖剣に、ジードの細胞が付着していたんだ。

 あの空間に、時間の流れが無くて本当に良かった。

 

 次は、細胞の採取なんだけど、そんな道具はどこにも無い。

 だから、細胞を見るため、視力を強化する魔法、採取するための精細なコントロールを擁するサイコキネシスの様な魔法、それを保管し、ある程度の大きさになるまで培養する為の、回復魔法を改良した成長促進の魔法を作り出した。

 

 そして、採取して増やした細胞を触媒に、ゴーレムを作る要領で、色々とファンタジー素材を練り込み、ジードの似姿にしたんだけど・・・やれ、足がもっと長いだの、鼻がもっと高いだの、茶々をいれる某魔神がうるさいのなんのって・・・

 おかげで、かなり時間を取られたんだ。


 一応、理論上、これにジードの魂と、肉体情報を持つ黒水晶を混ぜ合わせれば、後はその魂と肉体情報に合わせて、依代の中身は変質していく・・・筈だ。

 外見は依代ベースだけど。


 依代の準備を終え、後は魂を移すだけ。

 僕は、補助するため、魔法陣を書く。

 この魔法陣には、万が一を考えて、魂の拡散を防ぐ術式にしてあるんだけど・・・それでも、100%防げるかはなんとも言えない。


 だから、絶対に失敗できないので慎重に・・・


 僕は、集中で汗まみれになりながら、残さずに僕の中にあるジードの魂を、依代に移し替えた。

 魂を移されたジードの依代は、生命活動こそしていないものの、明らかに存在感が増している。

 さあ、最後の作業だ!

 

 ここからは力技だ。


 膨大な魔力をジードの魂に注ぎ、それを利用してジードが自ら目覚めるだけだ。


 今度は全力で魔力を注ぐ。


 注ぐ、注ぐ、どんどん注ぐ。

 流石はジードの魂というべきか、まったく底がわからない。

 僕はとにかく注ぎ続ける。


 時間がどれだけたったかわからない。 

 ・・・どれだけ魔力を注いだかもわからない。

 若干意識が朦朧としてきた。

 ちらりと目に入るのは、フラフラの僕を心配そうに見るみんなの姿だ。

 みんなを心配させたくない。

 頑張らなきゃ!

 僕は気合を入れ直す。


 ふと思い出すのはジードの事。

 ジードには、本当にお世話になった。

 彼がいなきゃ、僕はここまで来れなかった。

 だから、フラフラで苦しいくらいで中断することはできない!

 僕は無理やり笑顔を作ってみんなを見る。

 少しホッとしたのが見えた。


 更に魔力を注ぎ続ける。

 ・・・もう、目の前が見えていない。

 魔力の急激な損耗で、視界はグチャグチャで、依代に触れているのに感触がわからない。

 でも、みんなが止めないって事は、ちゃんと出来ているって事だ。

 なら、続けるだけ。


 更に時間がたった。

 あ・・・やばい・・・身体が・・・

 自分の身体が倒れていく感覚がする。

 まだ終わってないのに・・・


 その時、倒れていくのが途中で止まった。

 

「まったく・・・お前は本当に強情な奴だな。龍馬よ。だが、礼を言おう。あの場所から連れ出してくれてありがとう。お前は大した奴だ。流石は我の弟子であり友人だ。誇りに思うぞ!」


 その声は僕の知っている声だった。

 僕は安心して、意識を飛ばした。

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