第278話 聖女の打倒 sideリディア

「グレイス!時間を稼いで!エスメラルダ!こちらへ!!」

「了解!あまり長くは持ちそうに無い!短めにお願いします!」


 私は、近寄って来たエスメラルダにお願いをします。

 それは、エスメラルダが持つ、竜語魔法による超超高温の攻撃を放って欲しいということ。

 

「わかりましたわ。魔力を練りますので、合図をして下さい。わたくしのチャージは2分程で完了いたします。」

「わかったわ。『エスメラルダ、グレイス、足を踏み鳴らす音が合図よ!』」


 私は、合図をエスメラルダとグレイスに念話で伝えます。


 エスメラルダの了承を得たので、私も魔力を練ります。

 リョウマさんに師事して教わった、強力なオリジナル魔法・・・以前は出来ませんでしたが今の私なら!!


「凍えよ、凍てつけ、死の冬嵐を身に宿せ、その名は氷華、その身は停滞、地獄の円に基づき、裏切りの運命と共に、死を司る乙女の名をもって命ずる、そのの命を停止せよ。」


 長い長い詠唱をします。

 魔力も相応に高めていきます。

 魔力の制御はダブルキャストの比ではありません。

 そう、この魔法はトリプルキャスト。

 なにげに実戦で放つのは初めてですが、絶対に成功させなければなりません。

 

 詠唱を終えました。

 グレイスはもう限界に見えます。

 今!

 私は思い切り足を踏み鳴らします。

 その合図でグレイスは、飛び退きながら、魔力剣を伸ばし、その場に聖女を足止めしながら、距離を取ります、


『GROOOOOOOOOOOOOOOOO!!』


 私がエスメラルダに合図を出した瞬間、エスメラルダは凄まじい咆哮を放ちました。

 その咆哮はまさに竜種と言えます。


『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaa!!!!!』


 再度咆哮をあげた瞬間、エスメラルダの眼前に、黒光りする巨大な炎の塊が現れます。

 炎の塊は凄い勢いで聖女に飛んでいきました。

 グレイスは既に退避済みです。


 炎の球体が聖女を飲み込みます。

 聖女は障壁で防ごうとしましたが、熱が遮断しきれず、衣服は燃えつき、裸身をさらしています。

 しかし、時折見える聖女の表情に、苦しげな様子はありません。

 やはり・・・


 炎が消えると、ドロドロに溶けた床の上に、裸身の聖女が立っていました。

 その身体に火傷らしい痕はありませんでしたが、高温の残滓のように、その周囲が揺らいでいます。

 

 これでとどめ!

 

「地獄の凍土で凍えよ。『トロメア』」


 私は魔法を完了させ、発動させます。

 水、風、土のトリプルキャストで構成された、氷魔法の第2位の魔法トロメア。

 私が放った魔法を、聖女は障壁で防ごうとしましたが、障壁は一瞬で凍りつき、砕けました。

 聖女が目を見開いた状態で直撃を受けます。


 バシッ!バキッ!ビキビキッ!!

  

 聖女は一瞬で身体の芯まで氷つきました。

 その様子は、『真実の眼』で確認済みです。

 普通であればこれで終わりです。

 普通であれば。


 ビキッ!ビシッ!ギギギギッ!


 聖女は、身体をひび割れさせながら少しづつ動いています。

 やはり予想通りだった。

 先程、『真実の眼』で見極めたところ、聖女は生命活動をしていない事がわかりました。

 要は、聖女はかなり高度な、意思を持つゴーレムだったのです。

 もっとも、その意思は、操り人形のように、淡々と指示に従い、話すことが出来るというだけのものでしょうけれど。


 超硬のゴーレム。

 ならば、その存在を核から砕くのみ!

 リョウマさんから教わった、高温の物を急激に低温にすると、壊れやすくなるという概念。

 いくら聖女が頑丈であれ、逃れられません。


 徐々に砕けながらも動こうとする聖女。

 ですが、させません!


 私とエスメラルダは超高位の魔法を使用した為、すぐには動けません。

 ですが、声をあげる事は出来ます!

 そして、満身創痍とはいえ、動ける人がいる!


「グレイス!!」

「リュース流剣術奥義!『スラッシュ オブ ソード』!!」


 グレイスが最後の力を振り絞り、高々に掲げた剣を振り下ろします。

 剣は聖女を一刀両断にしました。


「・・・馬鹿な・・・私は・・・神に造られた・・・」


 聖女は、驚愕の表情のまま真っ二つになり、そのまま砕け散りました。


 勝てた・・・

 良かった・・・


 私達はその場にへたり込んでしまいました。


 限界まで力を振り絞ってようやく掴めた勝利です。

 リョウマさん!やりましたよ!

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