第279話 騎士長ゴンゾsideアイシャ

「ふん!ここまで来たら、貴様らを捕らえ、教皇様と共に再起するのみだ!」


 この騎士長・・・強えな・・・

 こいつ、更に薬を飲みやがった。

 さっきまでの魔力の比じゃねぇ。

 見た目も、目の色が完全に真っ赤になり、身体からは黒い瘴気のようなものが上がっている。


 あたしは、相対するこいつのプレッシャーに押されている。


 でも、さっきまで、こいつをオウカが圧倒していた筈だ。

 

 更に強くなったからって、あいつに出来て、あたしができねぇなんて認められるかってんだ!


 オウカは強くなった。

 聖剣の力の増幅は、あたしと戦った時の薬の増幅なんかより、よっぽど強え。

 今、あいつに負け越してる状態だ。

 これ以上情けねぇ所は見せられねぇ!


「貴様は粗暴だが、気の強い良い顔をしているな。身体も申し分ない。貴様のような気の強い女を屈服させるのは堪らん。早々に捕らえて、楽しませて貰おうか。」

「はっ!言ってろ!てめぇなんかに誰が抱かれてやるか!一人で抜いてろってんだ!」

「口の悪い雌犬め!存分に調教してやる!」


 クソ野郎が盾を前にして突っ込んできやがった。

 あたしは横っ飛びで躱す。


「ちっ!すばしっこい犬め!」

「あたしは狼だっつーん、だ!」



 あたしはすぐに飛び込んで盾を思いっきり蹴飛ばす。

 クソ野郎は微動だにしやがらねぇ。


「中々良い蹴りをする。だが、吾輩には通じん!」

「やってみなきゃわかんねぇだろーが!薬に頼る奴が偉そうにしてるんじゃねぇ!」

「やかましいわ!!正義の為には全てが許されるのだ!」

「馬鹿言え!てめぇらに正義なんか最初からねぇ!」


 あたしとクソ野郎は攻防を繰り広げながら、言い合いをしている。

 しかし、中々崩せねぇ・・・

 どうすっかな。


「シェアアアアアァァァ!」


 クソ野郎の剣戟は、周囲に風圧を起こすほどに鋭い。

 一発喰らえば、あたしの防御力ではお陀仏だ。


 あたしの売りはスピード!

 撹乱してタコ殴りにしてやるぜ!


 あたしは、『空歩』と、高速移動の『瞬脚』を利用し、身体強化全開にして、フェイント混じりに高速移動する。


「むぅ!?なんというスピードだ!」


 空中を含めたあたしの動きを、追いきれなくなったクソ野郎。

 いくぜ!


 あたしは全周囲から、飛び込む度に蹴って殴る。

 『餓狼』と名付けたあたしの技だ。

 あたしのスピードとスタミナがあって可能になる技。

 そして、この技はまだ終わりじゃねぇ!


「ぐぉっ!?しまっ・・・」


 防御を固めて耐えていたクソ野郎の手が緩み、懐にスペースが出来た瞬間に、そこに入り込み、蹴り上げ浮かす。


「くらいやがれ!『餓狼』」


 そこからは上下左右全ての方向からの連撃だ。

 踏ん張ることも出来ず、空中から逃れられないクソ野郎。

 あまりのスピードに悲鳴を上げることすら出来てねぇ。


「おっらぁぁぁぁぁぁぁ!」


 あたしはスタミナに限界を感じ、最後に思いっきり地面に蹴り落とし、叩きつけた。


「がぁっ!?」


 ドゴンッ!!


と、でけぇ音が鳴って叩きつけられ、血を吐いて倒れているクソ野郎。


「はぁ・・・はぁ・・・」


 着地したあたしは、切れ切れの息を整える。

 とどめを刺さなきゃな・・・

 ゆっくりと近づくあたし。


 しかし、クソ野郎は気絶しておらず、ヨロヨロと立ち上がる。


「がっ・・・は。貴様・・・愛玩の雌犬の分際で、吾輩にこのような暴挙・・・許せん!!」


 んだよ!

 まだ戦えんのかコイツ!!


「おおおおおおおおおおおおぉぉ!!」


 すげぇ勢いで突っ込んで来やがった。

 だけど、あたしの方がずっと速えぇ。

 いくら疲れてても十分躱せる。


 それが駄目だった。

 クソ野郎がいきなり盾を投げつけて来やがった!


「くっ!?」


 盾を躱した所に、一瞬死角が出来て、クソ野郎を見失った!

 気づいた時には剣を振り下ろしていた。


「うぉ!?」


 更に躱したけど、体勢が崩れちまった!


「うごっ・・・!!」


 そこに、肩から体当たりをもろに受けて吹っ飛んだ。

 ぐぅ・・・馬鹿力め・・・めっちゃ効いた。


 でも、そんな事考えている暇はねぇ!

 クソ野郎は、ふっとばされたあたしにそのまま走りより、剣を振り下ろそうとしている。


「まずは、うっとうしいその足を切り落としてくれる!!」


 ちぃっ!!

 負けられねぇんだよ!


 あたしは力を振り絞り、全力で身体を捻りこみながら回転し、回る力を乗せてクソ野郎の足を刈る。


「うぉ!?」


 あたしが予想外の動きを見せたのか、もろに決まり、横倒しに宙に浮くクソ野郎。

 あたしはそのまま腕を支点に身体を回転させながら、宙にいるクソ野郎を連続に蹴っていく。


「うっ!?ごっ!がぁ!?」


 最後は腕の力で身体を持ち上げ、全身のバネを使って思い切りクソ野郎を蹴り上げ、その反動で足で地面に立つ。


「じゃあなクソ野郎!!『真・狼牙爆影脚』!!」


 落ちてきたクソ野郎に向かって、今のあたしが使える最強の技を放つ。


 これは、魔力を練り込んで貫通力のある蹴りを放つ狼牙爆影脚を、更に改良し、それにリョウマが使う頸?とかいう力を乗せた、真・狼牙爆影脚だ。


 中々難しく、力の制御がうまく行かなくて、全力でしか使えねぇから、使った後は少し動けなくなるんだが、とどめとしては最高だ。


 ベキ!ベキ!ゴキ!!


「ガッ!!・・・ゴポッ」


 クソ野郎に直撃し、目や耳、鼻、口なんかの穴から血を吹き出しながら、クソ野郎は絶命した。


「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ。疲れたぜ・・・」

 

 周りを見ても、騎士はほとんどいねぇ。

 これでまた一つ強くなれたな。

 オウカに次は勝ってやるぜ!

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