第269話 リヴァレス聖国へ

 僕たちは、桜花達を追う形でリヴァレス聖国へ向かっている。

 正直、道中の魔物なんかは、あちらにいるグレイスやウルト、桜花やレーナがいるので、心配はしていない。


 僕たちについては言わずもがなって奴だ。

 一応、野営セットを、桜花達に渡してあるから、道中もある程度快適な筈だ。


 グレイスには、僕の作ったマジックバックを渡してあるから、ある程度の容量を持てるけど、桜花はスキルのストレージがあるからね。

 かなりの物資を渡してあるんだ。


 僕たちは僕たちで、教会からの斥候なんかの目をかいくぐる必要があるので、どちらかというとそちらを意識しながら移動している。


 今は半分くらい移動して来ているけど、そこそこの数の斥候が確認できてるしね。

 

 問題はリヴァレス聖国に入国してからだ。

 カエラさんの話では、入国したらすぐに聖都に向かい、教会本部へ入るらしい。

 僕たちは入国審査をうまく誤魔化して入る必要があるので、時間がかかる。


 この際、忍び込むのはどうかと提案してみたけど、どうもリヴァレス聖国には、微弱だけど結界が張られていて、無断入国はバレるそうだ。

 

 流石はヴァリスのお膝元だな。

 

 教皇に謁見するかどうかは、今の段階ではわからないらしい。

 教皇・・・おそらくは転移者か転生者。


 今の桜花であれば、よほどの戦力・・・それこそ、ペインクラスでも無い限り遅れをとらないだろう。

 でも、絡め手であればわからない。

 毒や状態異常・・・あげれば切りが無い。


 勇者である桜花は高い耐性を持って入るけれど・・・何せ、相手は管理者・・・

 100%安全とは言えない。


 それに、教皇がどれだけの強さを持っているのかもわからない。

 桜花から聞く限り、ペインというのは改造されていると言っていた。 


 もし、教皇が異世界人だとして、強化された上で色々スキルを貰い、その上で黒水晶を2つ使ったとしたら・・・僕でもちょっとわからないかもしれない。


 少なくともペインよりも強いのは間違いない。

 しまったなぁ・・・こんな事なら対神兵装を使わずに戦って、目安にするべきだったかな・・・


 今更後悔しても仕方がないか。

 やれることをしよう。

 予想以上の強敵だったとしても、僕がなんとかするしかない。


 どれだけ教皇が強かったとしても、ヴァリスほどじゃないと思うし。

 頑張るしかないな。



side 桜花


 今日で、行程は半分位らしい。

 今は野営中で、食事をみんなで取っている所よ。


「それにしても、野営でこれだけの食事が出来るとは・・・皆様には驚きしかありません。」

「そうだよね〜。これもあのリョウマって人の道具とかのおかげなんだよね?」

「ああ、これらの魔道具はリョウマの作り出したものだ。」

「流石は師匠だ!やっぱり素晴らしい!」

「本当ですね。リョウマ様は多才です。素敵です。」


 カエラさんとオリビアさんの言葉に、グレイスとウルトさんとレーナが答えている。

 私も帝国に居る時に、何度か野営をしたけど、これほど快適には過ごせなかった。

 それに・・・私はちらりと後ろを見る。

 そこには、天幕が張ってあり、大きめの浴槽が設置されている。

 

「お風呂も入れるものね。本当にあいつやりたい放題ね。」

「まぁいいじゃないかオウカ。そのおかげで我々もいい思いが出来ているのだからな。」

「それもそうね。」

「お風呂・・・リョウマ様のホームで入った時の感動は忘れませんね。」


 野外でお風呂・・・寝る用のテントで入り口を見えないようにしてあるし、上は捲れるようにしてあるから、星空もよく見える。

 風情があって良いわね。

 レーナも一発で気に入ったみたいだし。


「あ〜それにしてもグレイスとウルトは良いなぁ!強くしてもらったし、あんないい暮らしをしているなんて!羨ましいよ。」

「本当に。私も住みたい。」


 オリビアさんとキリアさんがそんな事を言った。


「まあな。幸運だとは思っているよ。夢も叶うしな。」

「むぅ。その辺りは私はまだだな。認めてもらってないし。」


 グレイスは自分よりも強くて、優しくて、ムキムキではない男が理想だったらしい。

 確かに、龍馬を除けばそんな人はそうそういない気がする。

 ウルトさんは・・・ノーコメントで。


「私達のような立場では中々難しいものね。その点、グレイスは運が良かったわね。」

「カエラの言うとおりだな。私とリョウマが出会ったのは、人生で一番の窮地に陥った時だった。本当に運が良かったよ。」

「どんな時だったの?」

「それはな・・・」


 グレイス達が仲良く話をしている。


 私はふと、空を見上げる。

 龍馬達も今頃、こんな風に空を眺めて食事を取っているんだろうか・・・


「オウカさん?どうしたのかしら?」


 私の様子を見て、カエラさんがそう話しかけてきた。


「なんでもないわ。ただ、次にこうやって出かける時には、龍馬達と旅が出来たら良いなって思っただけ。」

「・・・本当に、グレイスもオウカさんもレーナ様も、リョウマさんの事が好きなのね。羨ましいわ。」

「あ、そうだ!ねぇねぇ!オウカはどうやってあのリョウマって人と出会ったの!?」

「私も知りたい。」

「そうだな。私も知っておきたい。師匠攻略に役立つかもしれん。」


 カエラさんに続くように、オリビアさんとキリアさん、ウルトさんが続く。

 そうね・・・これも一種の女子会だし、別にいっか。


「そうね。グレイスとレーナにはもう話したし、別に良いわよ。それじゃあ、話すわね。あれは私がまだ中学校に通っていた頃の話なんだけど・・・ああ、中学校というのは・・・」


 向こうの世界の話は中々面白かったようで、全員に興味と笑顔が見える。

 まあ、この話は、私の失敗談だから、あんまり話したくは無いんだけど、龍馬の事を自慢したいし惚気けたい気持ちもある。

 

 あっちでは、そんなに惚気けた事は無いから、中々に新鮮だわ。


 ああ・・・早く面倒事を終わらせて、みんなで出かけられたらもっと楽しいかもしれないわね。

 そして、龍馬をいじってみんなで楽しむ。

 あのパーティなら、ルーさんやアナも一緒に出かけられると思うし。


 嫌なことは早めに終わらせて、楽しいことをしよう!

 龍馬!がんばろうね!

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