第270話 リヴァレス聖国

 リヴァレス聖国に到着した。

 僕たちは、ネメ共和国から来た事になっている。


 証明証の類は、事前にセルヴァンさんから貰っていた。

 冒険者としての依頼で、リヴァレス聖国に来た事になっている。

 名目上は、ネメ共和国から、リヴァレスにある支店に物資の納品という形でね。


 取り敢えず入国審査は、少し確認で時間がかかったけれど、パス出来た。

 オウカ達はその間にも、聖都に向かって進んでいるはずだ。

 

 道のりは厳しくはないけれど、ここからは、聖都に移動する信者も多数いるから、道中あまり早くは進めない。

 明らかに早すぎる馬車に乗って移動すれば、目を引いちゃう可能性があるからね。


 僕たちは、人目が少ないときは速度を上げ、人目が多いときは周りに合わせて移動している。

 正直もどかしいけれど、今焦ったら全てが元の木阿弥だ。

 

 我慢しないとね。


 そこからも聖都まで、何日かかけて進む。

 途中見かけた信者は、凄く多くて驚いた。


 セレス様はやっぱり凄く信仰されているんだね。

 そんな、信者の気持ちを利用しているヴァリスと教皇・・・やっぱり許せないや。


 そんな時、通信石で、桜花から連絡が来た。


『聖都に着いたわ。』

「了解。こっちはあと2時間位で着くと思う。」

『わかったわ。気をつけてね。』

「そっちもね。何かあったら、絶対に時間稼ぎに徹すること。いいね?」

『ええ。それじゃあね。』


 桜花との通信が切れる。


「・・・リョウマさん。焦ってはいけませんよ?」

「うん。分かってる。分かっているんだけど・・・やっぱり心配だよ。」

「大丈夫よリョウマくん。グレイスやレーナもいるもの。」

「そうですわ。みんな強くなりましたもの。」

「リョウマ。オウカもレーナもつえぇ女だぜ。グレイスだっている。焦んなくても大丈夫さ!」


 焦る気持ちが顔に出ていたのか、みんなが僕を落ち着かせてくれる。

 そうだね。

 みんながいるから大丈夫。

 信じよう。


 僕たちは更に進む。

 すると、大きな建物を擁する街が見えてきた。

 

「あれが、話に聞いた聖都ですね。」

「メイも初めて来たのです。本当はちゃんとした礼拝で来たかったのです・・・」


 シエイラとメイちゃんがそんな事を呟いた。

 ようやく着いたか。

 メイちゃんは、敬虔な信徒だし、そう思うのも仕方がないね。

 無事終わったら、きちんとした礼拝に協力しよう。

 僕もセレス様にお礼を言いたいしさ。

 桜花を助けてくれてありがとうってね。


 そうこうしていたら、街の入口で検問にあった。

 ずらりと並んでいるけど、結構スムーズに流れている。


 僕たちの順番が来て、衛兵に街を訪れた目的を聞かれる。

 

「依頼で、納品に来たのですが、折角なので聖都で、セレス様にお祈りを捧げてから、リヴァレス聖国を離れようと思いまして。」

「そうか。それは敬虔な事だな。通ってよし!」

「ありがとうございます。所で、大聖堂はあの大きな建物で良いのですか?何せ初めて来たものですから。」

「そうだ。だが、あそこに一般の者は入ることは出来ない。祈りを捧げるのであれば、その近くの教会がお勧めだ。」

「そうなんですね!ありがとうございます!」

「別に良いさ。女神セレス様のご加護を。」

「女神セレス様のご加護を!」


 さて、街に入れたぞ。

 すぐに大聖堂に向かおう。


 桜花達、無事でいてくれよ!


side桜花


 リョウマとの通信を終え、私達は大聖堂に向かう。

 大聖堂の入り口には、何人も騎士がいて、目を光らせていたの。


「セレスティア王国の五剣姫筆頭カエラ・セリンです。教皇様の命により、勇者を連れて来ました。お目通り願いたい。」

「今から確認を取ってくる。しばし待たれよ。」


 騎士の一人が、大聖堂に入っていく。

 少しすると、同じ騎士が戻ってきた。


「確認が取れた。大聖堂の中で、騎士長と大司教さまがお待ちだ。入ってよし。」

「ありがとう。それでは。」


 いよいよだ。

 どうも、教皇との謁見は無いようだ。

 ・・・でも、油断出来ないわね。

 龍馬の予想では、教皇も異世界人の可能性があるって言っていた。


 警戒した方が良さそうだわ。

 龍馬も後から来る。

 何があっても時間さえ稼げば助けてくれる。


 今の私には、帝国でペインとやりあった時のような絶望感は無いわ。

 私達は堂々と大聖堂の中に入っていく。

 龍馬。

 頼んだわよ。

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