第268話 カエラの選択

 入浴後のカエラさんは、とても穏やかな顔をしていた。

 どうやら、お風呂でいい感じにリラックスできたんじゃないかな。


 翌日、朝食前に居間でくつろいでいると、カエラさん達三人が入ってきた。

 

「おはようございます。」

「ふぁぁぁ!おはよう〜・・・」

「おはよう。」

「おはようございます。よく寝られましたか?」

「ええ。とてもよく眠れました。」

「そうだよね〜!こんなにぐっすり眠れたのは初めてかも!」

「私もここに住みたい。」


 どうやらよく寝れたようだ。 

 よかったよかった。


 まだ来ていなかった人も集まり、朝食が始まる。


「それで、どうするか決めたのか?」


 グレイスがカエラさんに聞いた。

 カエラさんはナイフとフォークを置き、こちらを見た。


「ひとまず、リョウマさんを信じることにしました。ですが、もし間違っていたら、武人の矜持を持って、敵わないにも一矢報いたいと思っています。」


 そっか。

 僕はにっこり笑う。


「うん。それで良いと思うよ。簡単に信じられることじゃないだろうしね。」

「それで、どう予定しているのですか?」

「それはね・・・」


 僕たちは、今後の計画について話す。

 カエラさん達は、それにいくつか聞き返しながら話を進めた。


「わかりました。で、あれば協力しましょう。」

「ありがとうございます。」


 これで、計画は進められそうだ。

 食事を終え、予定通り行動するため、僕たちは旅支度をする。


「いってらっしゃいませ。」

「どうぞご無事で。」


 ルーさんアナに見送られて、僕たちは家を後にした。

 ここからは、桜花とレーナ、グレイスとウルトとは別行動だ。


「みんな。頼むね。怪我の無いように。」

「わかっているわ。龍馬もね。」

「うん。時間さえ稼いでくれれば大丈夫だからね。」

「ええ。」


 僕たちは、五剣姫のみんなと桜花やレーナと別れて、教会がよく見える位置に移動する。

 

 桜花達は教会に入っていき、僕たちはそれを遠くから見ている形だ。

 

 おおむね一時間位たって、桜花達は教会から出てきた。

 リヴァレス聖国の方角へ移動を始める。


 僕たちもそれを追う。

 絶対に桜花達を傷つけさせはしない。



 side 教皇


『無事、勇者の同行を得られました。これよりリヴァレス聖国に向かいます。』

「おお、流石は五剣姫筆頭であるな!教皇様もお喜びなられているぞ!」


 俺の目の前で爺が喜んでいる。

 これで一旦は計画通りだな。

 

 どの段階で俺が馬鹿女の前に出るかが問題だな。

 あいつが覚えているかどうか知らねぇが、多分気づくだろう。

 あいつ見た目と勘だけは良いからな。


『それでは。10日後に到着致しますので。』

「うむ!所で、人数は足りておるか?騎士30人程おれば、道中大丈夫だとうとは思うが・・・」

『騎士はいません。』

「はっ?」

『騎士は、勇者に同行を求めた時に暴走し、全員勇者に切られています。』

「なんだと!?あやつらは祝福を使わなかったのか!?」

『いえ、使用した上で、です。私達も使用していなければ切られていたでしょう。』

「くっ!?それで、勇者はどんな状態なんだ?戦えるのか?四肢のどこを欠損している?」

『いえ、特に傷はついていません。私達は引き分けた結果、説得に応じてくれたのです。』

「何!?・・・お前たちはそれで勇者の蛮行を許したのか!!」

『先程言った通り、元は騎士の暴走が原因です。何故それでこちらが敵を討たねばならぬのです?私の任務は、勇者を教会本部に連れて行く事だったはずです。』

「ぐ・・・む・・・」

『もうよろしいですか?とにかくそちらに向かいますので。向かうのは、協力を得られた五剣姫全員と、勇者オウカ、後は、その友人のレーナ姫です。』

「部外者を連れてくる気か!任務を何だと思っている!!」

『私は教会の騎士団に所属した覚えはありませんが?』

「くっ!!」


 ほう。

 あの馬鹿女の連れも来るのか。

 たしか、帝国の王女だったな。

 中々綺麗な女だったっけか・・・面白い。

 ついでに食っちまうか。


「騎士長。良いのではないですか?勇者も、友人がいる方が気も休まるでしょう。」

「・・・教皇様がそう仰るのであれば・・・おい!教皇様の温情をありがたく思うのだな!」

『・・・では、失礼します。』



 苦虫を噛み潰した顔で騎士長が吐き捨てる。

 にしても、五剣姫ってのも中々綺麗どころが揃ってるって話だったな。

 うまくすればそっちも食えるかも知れねぇな。


 楽しみが増えて行くぜ。

 全員ペットにしてやるのも良いかもなぁ。

 

 どうせあいつは、馬鹿女くらいしか女っ気のねぇ奴だからな。

 あいつを攫って来て、ボコボコにしてから見せびらかしてやるのも一興か。


 ああ、楽しみだぜ・・・

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