第257話 二人の気持ち レーナの場合

 さて、みんなに追い立てられて、今僕は自分の部屋にレーナとアナといる。


 二人は凄く真剣な顔で目の前にいるんだけど・・・なんだろう?

 この雰囲気・・・どこかで・・・誰かが出していたような・・・


 いつだ?誰とだ?


 ・・・あ!?そうだ!リディアとグレイスに告白された時だ!!

 ・・・告白?まさか!?

 いや・・・でも・・・自意識過剰なだけかな?

 この二人がそんな・・・いや、でも待てよ?


 色々思い出してくる。

 確かに僕自身も、結構過剰に触れてくるなと思った事がある。

 その時は、帝国式だと聞いたけど・・・でも、よくよく考えると、そんなわけないよね。

 特に、レーナはお姫様だったんだし、男性慣れしてないって言ってたし。

 

 僕がそんな事を考えながらお茶を出すと、二人はお茶を一口飲み、こちらを見た。

 レーナはアナに目配せをし、アナが頷く。

 どうやらレーナから話すようだ。


「・・・リョウマ様、突然お時間を頂きすみません。戸惑っていらっしゃると思いますが、お話を聞いて頂けますか?」

「うん。ちゃんと聞くよ。」

「ありがとうございます。それでは今からお話をするのは、あるお姫様のお話です。」


 僕は頷いた。


「あるところにお姫様がおりました。そのお姫様は魔法師で、その国の為に一生懸命努力して、国に尽くしてきました。その国は、各国から攻められ、孤立していました。お姫様はその国をなんとか救いたかったのです。」

「その国は、自国を救うために、他の世界から勇者を喚び出しました。その勇者は女の子で、そのお姫様はとても仲良くなりました。お姫様は、その勇者と一緒に頑張れば、国を救えると思いました。」


 これはレーナの物語だ。


「しかし、その国はお姫様に嘘をついていました。本当は、攻められているのではなく、その国が他国を攻めていたのです。お姫様は絶望しました。最初は嘘だと思い込もうとしました。しかし、時間が立てば立つほど、情報を得れば得るほど、それが本当の事だと分かりました。」

「勇者は、お姫様に一緒に逃げようと言ってくれました。最初は戸惑っていたお姫さまも、逃げることを決意しました。しかし、実行に移す直前、その国に、教会からの刺客が現れました。そして、勇者は、その刺客にボロボロにされてしまいました。」


 レーナの目に少し涙が浮かぶ。


「お姫さまは勇者を助けることはできませんでした。王にやめさせるように言ったのに、王は言いました。『これは天罰だ』と。お姫さまは思いました。何故、勝手に喚び出して、勝手に戦わせようとしているのに、拒否をした事が天罰になるのかと。お姫さまはその時に、完全に国を捨てる決意をしました。」


 あの糞王そんなこと言ってたのか。

 

「勇者の傷が癒えた頃、また戦争に行くように言われました。そして、二人は、侍女を連れ、途中で逃げ出しました。しかし、そこに、また、教会の刺客が現れ、勇者を痛めつけました。お姫さまはそれをどうにかしようと、命を捨てる覚悟で助けに入ろうとしました。そこに・・・黒衣の魔王が現れました。」


 僕は魔王か・・・でも、あの時はそう思われても仕方がないかもなぁ。


「魔王は圧倒的な強さで、周囲にいた兵と、教会の刺客を倒しました。そして、その国を・・・滅ぼしました。お姫さまは魔王が恐ろしかった・・・お姫さまが最強だと信じた勇者を倒した者を、圧倒する魔王が。でも、その時に思いました。これは天罰だと。自分勝手な都合で禁忌の勇者召喚をし、他国に攻め入り、弱者を虐げるような国は滅びればいいと。」


 そんな風に思ってたんだな・・・


「勇者とお姫様と侍女は、魔王に保護されました。最初は怖かったのですが、きちんと話すと魔王はとても良い魔王でした。ちょっと女性にだらしがないと思っていましたが、それも誤解とわかりました。すると、見方が変わりました。」


「お姫さまは、魔王と話すのが楽しくなりました。一緒にいるのが好きになりました。魔王の情けない所を見ると愛おしくなりました。」


「気づけば、魔王の事を・・・愛していました。」


 レーナは涙をポロポロこぼしていた。


「これが私です。生まれた国を滅ぼし、親友や、良くしてくれた友人の婚約者である魔王の事を愛してしまったどうしようもない女です。私はこの事を、一生外に出さずにいようと思いました。でも・・・」


 綺麗だ・・・涙を流し、自分を卑下しながら、それでも愛を訴えるレーナがとても綺麗に見えた。


「皆様が言ってくれました。気にするなと、想いを隠すなと。私は・・・私も、もう隠したくない!あなたが他の方だけに照れているのを見ると、切なくなるのです!私も・・・私も見てほしいと!・・・愛して欲しいと!こんな浅ましい女を好きになっていただけないかもしれません!それでも・・・私の想いを聞いてほしい!」


 レーナは涙を流しながら僕の手を取った。


「愛しています!どうか・・・どうか私も共に歩ませて下さい!私も皆様と一緒にいさせて下さい!・・・私も愛して下さい。」


 レーナはゆっくり、名残惜しそうに手を離す。


「これで私の話は終わりです。お返事は、アナの話を聞いてあげてからにして下さい。」


 そう言って微笑み涙を拭いた。

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