第256話 残された者たち side 桜花
「良かったのかの?あの二人はもしや・・・」
ディバイド様が気遣うように言ってくれた。
「ええ、あの二人の気持ちは、私達のみんなが知っています。そして、認めていますから。」
リディア達もそれぞれ頷いている。
「難儀なものじゃのう・・・モテる男もその妻も。」
「・・・ええ。その通りだと思います。」
私は苦笑しながらそう言った。
全部龍馬が悪い!!
「でも、いいのかしらぁ?オウカさんの世界では、一夫一妻なのでしょう?」
レイチェルさんが、人差し指を頬に当て、小首を傾げながらそう言う。
・・・流石リディアのお母さんね。
凄く可愛らしい仕草・・・似合うわね。
「・・・はい。私も悩みました。けど、みんな心の底から、龍馬を想っているのがわかります。それこそ、命を掛けて。私はそれをこの目で見ました。それを、私の度量が狭い為に拒否するのは・・・女が廃ると思いました。」
私がはっきりそう言うと、レイチェルさんは微笑んだ。
「あなたもしっかりいい女なのねぇ。流石は龍馬ちゃんの正妻だわぁ。」
みなさんも納得してくれたようだ。
いや、納得してくれていない人達もいるわね。
「何よう。少しくらいわけてくれたっていいじゃない。」
「そうよそうよ。」
アネモネ様と、セルマさんの言葉に、私は額に手をあてため息をつく。
「お二方は、龍馬を気に入っているとは思います。それこそ・・・身体の関係になっても良いと思うくらいには。でも、私達と決定的に違うことがあります。それは、ガーベラ様とウルトさんにも言えることです。」
「私達もか?」
「何よ?」
ウルトさんとガーベラ様が、怪訝な顔をする。
「それは、龍馬の事を、命をかけても支えられるほどの、覚悟が無いことです。アネモネ様、セルマさん、ガーベラ様、もし、龍馬が道を間違えた時、命がけで止められますか?」
その私の言葉に対し、三人は一瞬黙った後、
「・・・無理ね。私には国がある。」
「私も、巫女頭としての立場があるわ。それがなくても、命まではかけられないわね。」
「そ、それは・・・できないかも・・・」
そう答えた。
私は、そのままウルトさんを見る。
「そしてウルトさん。あなたは武人です。私も武家に生まれているのでわかります。あなたには、止めようとすること自体は、出来るかもしれません。しかし、あなたの龍馬への想いは、尊敬が主にあり、強い者への憧れがある。心の底から恋い焦がれるような想いがありますか?」
それを聞いて、ウルトさんは考え込む。
そして口を開いた。
「むぅ・・・正直否定しきれないな。愛情よりも尊敬が先にあるかもしれない。」
私は微笑む。
「はっきり言って、あなた方には、私はとても好感を持っています。今も誤魔化さずに、しっかりと答えてくれました。アネモネ様とセルマさんは・・・まあ、ともかく、ガーベラ様とウルトさんに恋心が無いとは言いません。惹かれているのは間違いないでしょう。ですが、私達は、惹かれているだけではなく、その想いに命をかけられる。それが違いです。」
ガーベラ様とウルトさんは押し黙った。
アネモネ様とセルマさんは苦笑いしている。
アネモネ様とセルマさんには既婚歴がある。
愛情や情欲、恋心や尊敬なんかの差が、分かっているのでしょうね。
「ごめんなさい。本来は、こんな事をつきつける必要はないわね。謝ります。ですが、もし、そこまで想いが昇華したその時には・・・少なくとも、龍馬に寄り添おうというのを、私は止めるつもりはありません。」
私の言葉に、リディア達ははっきりと頷いた。
想いは一緒という事でしょうね。
「わかったわ。オウカの言う通りだと思う。もし、この先そうなったら、まず、最初に貴方に話すわ。」
「私もそうしよう。ところで、身体の関係だけなら許して貰えるのだろうか?」
私はため息を付く。
「・・・許すわけないでしょう。」
そう言うと、ウルトさんは指を咥えてもの欲しそうにしながら、
「えー」
と言った。
そして、それに便乗するように、問題児の二人が、これ幸いと騒ぎ立てる。
「そうね!ちょっとくらい・・・先っぽだけでいいから!悪いようにしないから!なんなら何倍かにして返すから!!」
「私も、エルマの前にちょっと味見を・・・」
「駄目です!!」
「何倍ってどういう事?」
「ん〜よくわからんな?」
意味が良くわかっておらず、小首を傾げるガーベラ様とウルトさん。
本当にこの女王様と巫女頭さんは下ネタが好きね。
・・・私は別に好きじゃないわよ。
それにしても・・・もう!
ガーベラ様はともかくこの三人は・・・
龍馬には隙を見せさせないようにさせないと!
・・・龍馬。
レーナとアナの想い、受け止めてあげてね。
怒らないから。
・・・嫉妬はするかもしれないけど。
それにしても・・・向こうの世界に戻ったら、お父さんとお母さんにどう説明しようかしら?
『龍馬の正妻には私が、他に8人いて、愛人が2人出来ました。』
・・・多分卒倒するわね。
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