第212話 謝罪と空飛ぶ魔道具

 お祝いパーティを終え、僕たちは火の元の国へ行く準備をする。

 僕は庭の倉庫内で魔道具作り。

 みんなはそれぞれ僕の指定する素材集めに回って貰っている。


 僕の魔道具作りの補佐はレイチェルさんと、なんとアインくん。

 レイチェルさんは魔道具作りの才能もあり、宮廷魔法師だった頃、よく魔道具を作っていたらしい。


 そしてその才能を受け継いでいるのがアインくん。

 趣味で色々作ってるんだって。


 僕が作ろうとしているのは飛空艇。

 デザインをしてレイチェルさん達に見せてみると、画期的だってお墨付きを貰えた。

 まあ、そりゃそうだよね。

 僕の世界のゲームなんかに出てくる飛空艇を元にしているんだから。

 実際にはありえない形状だろうけど、そこはファンタジー世界!

 魔法や魔道具、結界なんかで万事解決!


 二人にはアドバイザー兼技師になってもらっている。

 異世界能力補正もあって、組み上げはとても楽。

 だって機械使わなくても筋力で事足りるんだからさ。

 人手がいる時はみんなにも手伝って貰っている。


 素材も鉄じゃなくて、ファンタジー素材がメインだから元の世界の飛行機なんかより丈夫で軽いものが出来そうな予感。


 いいねいいね!

 こういうの異世界ファンタジーの醍醐味だと思います!

 若干溢れるオタ臭はご勘弁を。

 だって前に言ったとおりファンタジーもの好きなんだもん!


 一週間くらいたったある日、ディバイドじいちゃんから僕あてに通信が来た。

 なんだろう?

 明日王城まで来てほしいって事だったから、翌日王城に向かう。

 謁見の間に通されると、謁見の間の端っこに、貴族っぽい人達がずらりと整列している。

 その後ろには・・・あれ次男達じゃない!?

 まさか僕に謝罪させる気?・・・て感じじゃないね。

 明らかに次男達は憔悴しているし。

 

 王様への公的な挨拶をすると、40代後半くらいの一際身なりのよさそうなおじさんが前に出て来る。

 なんだろうと思っていると。


「私はセプテス公爵家の現当主、ルート・レイザー・セプテムと申します。この度は貴殿達シャノワールの方々に、息子とその仲間がご迷惑をおかけしました。今回の件、ご立腹だとは思いますが、この者共は勘当と致しますので、どうかそれぞれの「家」にはご容赦願いたい。」


 そう言って頭を下げてくる。

 ・・・ふむ。

 ようは息子たちが勝手にやったので、処罰するから許してほしいってことか。


「なるほど。ならば一つお聞きしても良いでしょうか?」

「なんなりと。」

「ご子息は、貴族は立場を傘に来て、平民は見下すものだと考えているようでした。あなたの家ではそのような教育をされているのでしょうか?」

「っ!?滅相もない。」

「ならば貴族の責務について教えて下さい。」

「・・・貴族とは、領地に住まう者を守り、安定した生活を与える代わりに、税を修めてもらう共存関係にあります。なので、責務としては領民を守り、国に尽くす、このようになると思います。」


 ・・・この人は建前上でも一応そう言えるって事だね。

 ならば・・・


「なるほど。わかりました。なら、こちらが要求することは一つ。彼らが真に貴族であると言えるようになるまで教育し、今後、道を誤ることが無いようにして下さい。ですので、勘当はしなくても良いです。ただし!」

「・・・ただし?」

「その意向を無視して勘当したり、存在の抹消をしたりするのは認めません。必ずあなたの言う貴族の責務が履行出来る者にして下さい。もし、直っていなかったら、僕が直々にその家を訪れ実力行使をさせて頂きます。」


 僕がそう言って威圧すると、セプテス公爵は、冷や汗を流しながら頭をたれ、


「必ず。」


と一言言った。


 他の人にも同様です、というと、他の人も一斉に頭を下げた。

 これでよし!っと。


「ふむ。ならばこの儂、セレスティア王国国王として今の誓いの見届人となろう。各々、ゆめゆめ忘れるでないぞ!」

「「「「「「「「「「「「「「「はっ」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 よし!一件落着っと!


 公爵達が退席して、この場に残るのは僕とじいちゃん、宰相さん・・・いい加減名前で呼ぶよう言われたので、プラムさんと呼ぶようになったプラムさん、ウルトだけ になった。


「やれやれ、これでちっとはまともな貴族が増えると良いの。」

「そうですな。正直今の貴族は腐敗している者が多く、極一握りしかまともな貴族はおりませぬ。ある意味良いきっかけだったかもしれませぬな。」


 じいちゃんとプラムさんがそんなことを話していると、ウルトが、


「そう言えば師匠。今、何か面白そうな乗り物を作っていると聞きました。どのような乗り物なのでしょうか?」


 目を輝かせてそう言った。

 僕はニヤリと笑って


「空を飛ぶ乗り物だよ。」

「空を飛ぶじゃと!?」

「物語の中の乗り物のようですな・・・」


と言うと、これにじいちゃんとプラムさんが食いついた。


 色々聞かれて答えていく。

 どうも量産出来るか知りたいようだ。

 今の所まだテスト的だし、危険性の確認も出来ていないから、量産については未定だと説明するとちょっとがっかりしていた。


 でもそこは破天荒王様!

 しっかりと完成したら乗せる約束をさせられたよ。

 てっきり危ないからってプラムさんが止めるかと思ってたら、どうやらプラムさんも興味深々だったようで、一緒に同乗することになった。


 いつもじいちゃんの面倒で大変そうだから労ってあげないとね。

 

 要件を終え、僕はまたホームに戻り作業に入る。

 そして一週間後、機体は完成したんだ。

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